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2020.07.29

F.I.N.的新語辞典

第66回| ダーニング

隔週でひとつ、F.I.N.編集部が未来の定番になると予想する言葉を取り上げて、その言葉に精通するプロの見解と合わせながら、新しい未来の考え方を紐解いていきます。今回は「ダーニング」をご紹介します。

写真提供:安田由美子さん

ダーニング【だーにんぐ/darning

ヨーロッパで伝統的に行われている、衣類の穴あきやすりきれた箇所を修繕する針仕事のこと。修繕箇所をわざと目立たせ、自分だけのデザインを施すという繕い物のひとつで、縫うときにほつれてしまわないよう丸いきのこのような形をした「ダーニングマッシュルーム」などを用いて行います。

 

「お家で着るようなカジュアルな衣類を直すにはダーニングの技法がぴったり。お金も時間もかけずに、オリジナリティあふれるセーターや靴下ができますよ」と語るのは、『はじめてでもきれいに刺せる 刺しゅうの基礎』の著者・安田由美子さん。安田さんが「ダーニング」に出会ったのは、とある編み物雑誌がきっかけ。「手間暇かけて元のように直すのと、別の色の糸を使って直すのでは、同じ『繕う』でもまったく違って面白いと思いました」と話します。

 

ダーニングには、ダーニングマッシュルーム、糸、そして先の丸い針を使用します。靴下などの穴が開いた箇所にダーニングマッシュルームを当てがい、まずは糸を縦に平行に渡していきます。穴の箇所をすべて覆うように渡し終えたら、向きを90度変え、最初の糸を一本置きにすくうように渡します。これを「平織り」と言い、初心者でもできる簡単なダーニングのひとつです。また、初めての方におすすめなのが、靴下やセーターなど、ニット地のアイテムへのダーニング。上手にかがれなくても、生地自体が伸び縮みするので、うまく誤魔化せるのだそう。「糸は、元の衣類と似た色を選ぶと、逆に目立ってしまうことも。思い切ってまったく違う色の糸を使い、デザインとしてかがるのが初心者の方にはおすすめです」。

 

「ダーニングマッシュルームがない昭和の日本でも、同じようなことがされていたようです」、と安田さん。「電球などに衣類をかぶせて繕っていたというのはよく聞きます。母に話を聞くと、母が学生の頃は、足袋から靴下に替わった頃だったそうです。編み地の靴下は当時の高級品でしたので、穴が開いたら靴の形をした型に靴下をはめて、ちくちく縫って補修していたそうです」。

 

さらに安田さんはこう続けます。「昔はなんでも修繕しながら使い続けることが当たり前でした。物質的に豊かになった現代だからこそ、またその良さが見直されているのかもしれません。直しながら着ることで、服への愛情もわいてきます。ダーニングは、少ない道具でできますし、多少ずれてもそれが味となって、気軽に進められる。先が丸い針を使うので、指を刺したりすることもありません。針を扱うのが苦手な人や初心者の人におすすめの針仕事です」。

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