地元の見る目を変えた47人。
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2021.01.08
あの人が選ぶ、未来のキーパーソン。<全4回>
私たちの暮らしには、あらゆる分野の作り手たちによるさまざまなモノやコト、サービスが溢れています。それらを手掛けてきた各界の第一線で活躍する方々は今、5年先の未来を、どのように見据えているのでしょうか。この企画では、彼らに「未来の芽」とも言える次世代のキーパーソンを一人挙げてもらうことで、来たる社会について一緒に考えていきます。
今回お招きしたのは建築家の中山英之さん。これまで「2004」「O邸」「Yビル」「mitosaya蒸草園蒸留所」など、住宅プロジェクトから公共事業まで幅広い分野の建築設計を手掛けながら、東京藝術大学准教授も務める中山さんに、5年先の未来の担い手について伺いました。
(イラスト:星野ちいこ)
<中山英之さんが選ぶ、5年先の未来をつくるキーパーソン>
建築家・元木大輔(もとぎだいすけ)さん
元木大輔さん
1981年埼玉県生まれ。2010年、建築、都市、ランドスケープ、インテリア、プロダクト、ブランディング、コンセプトメイク、あるいはそれらの多分野にまたがるプロジェクトを建築的な思考を軸に活動するデザインスタジオDaisuke Motogi Architecture (現DDAA)設立。また2019年には、実験的なデザインとリサーチのための組織DDAA LABを設立。昨年、初の著書となる「工夫の連続:ストレンジDIYマニュアル」を出版した。
元木大輔さんは、都市という捉えどころのない場を、個人からでも始められるデザインの対象として見つめている建築家です。その視点は、近年「タクティカル・アーバニズム」と呼称されるような文脈にも通じるかもしれません。主に行政が主体となって行われる都市計画的な街づくりは、大掛かりな計画や予算をもとに、細かなルールに沿って実行されていくものですよね。それに対して彼の実践は、”街づくり”って誰からでも、手作りでも始められるものでは?という問いかけのように感じられます。たとえばこんな風です。元木さんは、事務所前の歩道に置いたベンチでボーっとするのが日常的な息抜きだったのに、ある時それが持ち去られてしまったのだそうです。すると彼は、自らベンチを作りました。それはガードレールに引っかけて使うことのできるベンチで、素材はガードレールと全く同じ色・直径のバイブ。つまり、同じ仕様のガードレールがある場所なら、どこでも小さな公共空間になり得る可能性として、それを考えたんですね。そこから観察が始まって、東京23区でガードレールのデザインに違いがあることを発見すると、今度は全てを計測、作図したカタログにして公開しちゃったんです。つまり、誰もがすぐにこの発想に参加できる仕組みを作ったわけです。
ここで少し補足すると、そうした活動には、1960年代以降のヒッピーカルチャーや、ストリートアートやグラフィティなどから現代のライフハック文化へと連なる一種のDIY精神や、グラフィティ文化に代表されるようなストリート性にも通じるところがあるように思います。その根底にある感情って、喜怒哀楽で言えば怒りが近い。巨大な計画や動かしがたいシステムを前にした声にならない声を、小さいけれど誰にも開かれたデザインに変換してしまう。これこそが、元木さんの魅力だと思います。
今、建物の中で人が一堂に会することが、なかなか難しい状況がありますよね。でもそれは、デザインがインテリアから街へと開かれていく、ひとつの契機でもあるはず。歩道や公園に敷かれていたルールが緩和されるニュースも聞かれます。そんな中で、元木さんの仕掛けるちょっとしたいたずらのような“あたらしい街づくり”が、いつのまにか都市を変えていくような未来がくるといいなと思います。
<元木さんを教えてくれた人>
中山英之さん
伊東豊雄建築設計事務所で「多摩美術大学図書館」等を担当後、独立。処女作「2004」でSD レビュー2004 鹿島賞と第23 回吉岡賞を立て続けに受賞して注目を集める。その後も「O 邸」(2009)、「弦と弧」(2017)、「MITOSAYA薬草園蒸留所」(2018)など話題作を手がけ、現在も国内外に数々のプロジェクトが進行中。2014年より東京芸術大学准教授。
編集後記
未来の芽になる人材は、能力や技術が高いだけでなく、「何か」を持っているようです。
その何かは、今までの概念を壊す力や、新しい次元に引き上げる力など、それぞれですが。
原動力は、自他含めて、皆を幸せにしたいという気持ちが共通してあると思いました。
そして、何よりも、その活動が、シンプルに人々を楽しませているような気がします。
(未来定番研究所 窪)
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