2021.02.15

あの人が選ぶ、未来のキーパーソン。

第4回 内田まほろさんが選ぶ、ものづくりの未来を支える人

私たちの暮らしには、あらゆる分野の作り手たちによるさまざまなモノやコト、サービスが溢れています。それらを手掛けてきた各界の第一線で活躍する方々は今、5年先の未来を、どのように見据えているのでしょうか。この企画では、彼らに「未来の芽」とも言える次世代のキーパーソンを一人挙げてもらうことで、来たる社会について一緒に考えていきます。

 

今回お招きしたのはキュレーターの内田まほろさん。これまで日本科学未来館のキュレーターとして企画展『時間旅行展』『チームラボ展』『GAME ON展』やシンボル展示『ジオ・コスモス』などを手掛け、現在は新しいミュージアムの開発に関わりながら新たな文化の場を創り出す活動をされている内田さんに、5年先の未来の担い手について伺いました。

(イラスト:星野ちいこ)

<内田まほろさんが選ぶ、5年先の未来をつくるキーパーソン>

クリエイター集団・secca(せっか)

Profile

secca

2013年に創立した、金沢を拠点に活動するクリエイター集団。伝統工芸から最先端のテクノロジーまで、様々な技術と新たな解釈を掛け合わせたものづくりを通じて、人の心を動かす新たな体験価値をカタチにし、文化を進化させる活動をしている。星付きレストランの料理表現を拡張するオリジナルの器、100%リサイクル可能な新素材プラスチックを活用したサスティナブルなテーブルウェアブランド<ARAS>、ホテルのエントランスを飾るオブジェなど、生み出すプロダクトは多岐に渡る。

http://secca.co.jp/

〈secca〉は、代々受け継がれてきた伝統的な技術と、最先端の技術を掛け合わせて、新しい価値を生み出している提案型の職人集団です。ものを消費することの価値観が変わりつつある今の時代において、ものづくりの本質を捉えながら活動をしている彼らは、未来のキーパーソンになるでしょう。

 

彼らは伝統工芸の技術が集まる石川県金沢市を拠点に、新しい技術と伝統技術を駆使して、新しい手法やマテリアルの開発から、実際のプロダクトの企画、デザイン、制作、実装までを一貫して行っています。彼らが生み出すプロダクトは、製品そのものだけでなく、仕組みのデザインやプロセス、背景も含めてぶれない思想が流れていて、なんとも素敵です。

例えば、いま広く普及しているプラスチックという素材は、安価で短命な、捨てられると地球のお荷物になる、なんとなく“イケていない”イメージがあるかと思います。その反面、軽い、割れない、100%リサイクルできるものがある点など、実際に使ったり、大量生産することを考えれば最適な選択肢となり得る素材です。彼らの手にかかると、このプラスチックが”イケてる”プロダクトに生まれ変わったりします。リサイクルプラのくすんだ色を逆にいかして渋めのデザインにしあげ、かつガラスの繊維を混ぜてプラスチックとは思えない質感を伴うカトラリー。3Dテクノロジーを活用し、水の波形からかたどった意匠で、水に触れるかのような遊びと透明感を実現したウェオータージャグなど。今の技術によって、新しいプラスチックの魅力と社会問題の解決が同時にできてしまう。

彼らのものづくりの背景には、「文化を進化させる」というビジョンがあります。生物と同じように、文化も時代とともに進化させる。そして自分たちも、進化し続けるものづくりを実践していく。つまり、伝統を守るのではなく、今の技術を取り入れアップデートさせながら文化を繋いでいくことを目指しているんです。

また、〈secca〉そのものの誕生プロセスも魅力的だと思います。代表を務める上町達也さんと柳井友一さんは、元々は大手メーカーに勤めるプロダクトデザイナーでした。しかしある時、「消費」を促すためのマーケットプロセスに疑問を抱いたことをきっかけに退職。いきなり小さなハヤシライス専門店を開業して、ハヤシライス専用の器を研究したり、高校生に交じって伝統工芸の勉強などをしたりしたのち、金沢でものづくりを始めたそう。なんか、この振れ幅の大きな人生ってとても人間くさいというか。両極端にあるものづくりの背景を見た上で、本質に寄り添ったものづくりができる場所を作った。そんな働き方というか、生き方もこれからの時代を映しているのかもしれません。

 

いま、21世紀を目指していた20世紀の頃のように、「ものをたくさん作ることが、成長につながる」という価値観ではなくなってきています。買って捨てる消費サイクルを続けることは、地球規模でも難しいこと。そのような価値観の中で、完成形だけでなく、ものが作られたプロセスや背景も含めて魅力的であるということが、より一層求められてくるのではないでしょうか。

<seccaさんを教えてくれた人>

内田まほろさん

キュレーター、展示プロデューサー。専門はアート、テクノロジー、デザインの融合領域。日本科学未来館の展示スーパーバイザー。企画展では『時間旅行展』『恋愛物語展』『チームラボ展』『GAME ON展』、常設展はシンボル展示の『ジオ・コスモス』やアンドロイドロボット、『計算機と自然、計算機の自然』などを担当。バービカンセンター、ミラノトリエンナーレ、海外ミュージアムにおける企画なども行う。

編集後記

本質を捉えたものづくりとは、信念、素材、作られる過程、行く末まで設計されている。なおかつ、自然物のように、一つの線となり循環しているようです。

今回のキーパーソンのお二人自体も、それぞれの過程を経て、本質を捉えたものづくりをして、伝統的な技術を未来へつなぐ、大きな循環の輪を支えている存在のように思えます。

そんな大きな視点の中で、私たちは消費を再定義・再認識する転換期にいるのではないでしょうか。

(未来定番研究所 窪)

あの人が選ぶ、未来のキーパーソン。

第4回 内田まほろさんが選ぶ、ものづくりの未来を支える人