もくじ

2018.04.20

若い作り手たちの、これまでとこれから。<全3回>

第3回| 伝統産業の構造改革を図るデニムプロデューサー
山脇耀平さん、島田舜介さんの場合

日本の伝統と、職人の匠の技によって作られる伝統産業。いま、若い作り手たちのセンスと力によって伝統産業は新たな魅力を持って、世の中に発信されています。日本各地で活躍する、伝統の良さを生かしつつ、新しい風を呼び込む3名の作り手に、彼らの「これまでとこれから」を聞いてみました。最終回に登場するのは、瀬戸内のデニム産業を盛り上げる兄弟のひとり、山脇耀平さん。

EVERY DENIM〉の代表、山脇耀平さん(右)と島田舜介さん(左)。

大学生で起業した兄弟が、瀬戸内のデニム産業を盛り上げる。

EVERY DENIM〉がもたらした、ものづくりの構造改革。

 

岡山県瀬戸内に拠点を構える〈EVERY DENIM〉は、実の兄弟である山脇耀平さんと島田舜介さんが2015年に立ち上げたデニムブランド。大学時代に起業したふたりは2017年の「Forbs誌が選ぶ、アジアを代表する『30歳未満』」に選出され、テレビ番組『ガイアの夜明け』では、若い世代の“理想のデニム”を追求した「Brilliant」が紹介されました。そしてこの春、クラウドファンディングで集めた776万円の資金を元に、キャラバンで移動型販売を開始します。ものづくり業界から注目を集める〈EVERY DENIM〉の共同代表、山脇耀平さんにお話を伺いました。

通常のストレッチ素材の5倍の伸縮率をもつ「Relax」。〈EVERY DENIM〉が企画したセカンドモデル。

メディア取材で見えてきた、

瀬戸内デニム産業の光と影。

山脇さん:「〈EVERY DENIM〉は2014年にデニム産業の職人や経営者にインタビューするWEBメディアとして始まりました。2014年のことです。きっかけは、岡山の大学に通っている弟に誘われて、デニム工場を見学したこと。瀬戸内のデニム産業は世界からも高い評価を得ているのに、ホームページや SNSがないため、情報を見つけることができなかったんです。それで、より多くの人に工場や職人のこだわりを知ってほしいと思って始めました。でも実際に話を伺っていくと、価格競争によって人件費を抑えなくてはいけない実情や、経営難を抱える工場の増加、新技術を活かしてサンプルを作っても商品化されない事例など、デニム産業が抱えている課題を知ることにも繋がりました。」

瀬戸内では2016年の春に、国産ジーンズの総合展示会「BEAUTIFUL JAPAN DENIM Exhibition」の開催が予定されていました。岡山と広島のデニム工場を国内外にPRするために企画されたこのプロジェクトに、〈EVERY DENIM〉も運営チームの一員として関わっていました。

山脇さん:「企画の発起人である吉村恒夫さんは、ビッグジョンジーンズで約35年間デザイナーをしていた方です。彼は瀬戸内のデニム産業を盛り上げるために恩返しをしたいと考えていたそうです。工場の人々からも信頼も厚く、多くの参加表明もあったのですが、残念ながら2015年に企画は頓挫してしまいます。工場とブランドの関係性、技術の秘匿性、生産の手が止まることなどが理由でした。チームが解散するときに吉村さんから「引退する」という話を聞いて、その想いを僕らが引き継ぎたいと思ったんです。それで、メディアで伝えるだけでなく、〈EVERY DENIM〉として製品の企画・販売までを行うことを決めました」

『ガイアの夜明け』でも紹介された、シルク混素材を使った「Brilliant」。

工場のリスクを減らす受注生産。

想いを直接届ける、展示販売。

山脇さん:「WEB制作会社やアパレル企業でインターンをしていたので、その経験もためになりました。そして何より、生産、デザイン、パターンなど、吉村さんが丁寧にサポートしてくれたから実現できたのだと思います。デニム工場の方々にも「気概のある大学生だから良くしてほしいと」と紹介してくださったんです。瀬戸内の工場には日本でしか織れない生地がありますし、職人の手によって30工程の加工を加えることも可能です。たとえ生産効率が悪くても、より良いデニムを作ろうという想いと技術があるんです。〈EVERY DENIM〉はその職人のこだわりを大切にしています。ファーストモデルの「Bengala」では岡山県の天然染料、黒ベンガラを使ってデニムを作りました。最初の資金はクラウドファンディングで募り、ゲストハウスやコミュニティスペースでPOP UP SHOPを重ねることで、少しずつメディアにも取り上げられるようになっていきました」

〈EVERY DENIM〉が47都道府県をまわる、キャラバンでの移動型販売は4月にスタート予定。

商社や販売業者を通さないことで、求めやすい価格設定を実現し、商品に込めた想いを直接お客さんに届ける。受注生産方式を導入することで、工場側の在庫リスクをなくす。〈EVERY DENIM〉はこれらの指針を掲げながら、現在までに4型のモデルを販売してきました。通常のストレッチ素材の5倍の伸縮率をもつ「Relax」やシルク混素材を使ったスラックスタイプの「Brilliant」は、特に高い評価を受けています。また、オンラインサロンを開設して「理想のデニム」を考えたり、工場見学のツアーを組むなど、生産者と消費者との距離を縮める試みにも積極的です。そして昨年には2度目のクラウドファンディングで776万円の資金調達を達成し、キャラバンによる移動型販売が開始されます。

 

WEB上に街の概念を取り入れた「えぶりシティ」も4月にオープン予定。

山脇さん:「デニムキャラバン「えぶり号」に乗って、今年の4月から来年の夏にかけて47都道府県をまわる予定です。キャンピングカーの中には工場の写真やミシン、生地サンプルなどを用意して、お客さんに工場の雰囲気を味わってもらいたいんです。また対面でデニムを販売するだけでなく、その土地の生活や食に関わる生産者と出会って、毎月、東京で報告会を開催します。同じ価値観を持つ人々が作るものを紹介することで小さなコミュニティを作り、みんなで消費を楽しんでいきたいんですよね。それによって、将来的には独自通貨を使用した小さな経済圏を生み出すこともできるかもしれないですよね」

 

キャラバンプロジェクトの始動に合わせて、WEB上には、「えぶりシティ」の竣工準備も始まっています。住民登録をすると同じ価値観を持つ人々との情報交換ができ、そこから小さな経済圏が育っていく予感のする新プロジェクトです。今後、どんな市民が集まって、どんな街に育っていくのか、ぜひ注目してみてください。

 

EVERY DENIM

700-0013 岡山県岡山市北区伊福町1-15-18 スカラトーレ伊福町202

TEL:090-1904-9248

営業時間:10:00-18:00 

営業日:通年

編集後記

皆さまからお話を伺い、つくり手と消費者が直接繋がる環境がより広がる未来が見えました。すぐに消費者の反応を確認できる一方、ものづくりに集中できない問題点もある。
小売店が携わる意味を改めて考えさせられました。
また、既存の手法を継承するだけでなく、新しい価値のあるものづくりに興味を持ちました。皆さまの今後のご活動にも注目していきたいです。

(未来定番研究所 佐々木)