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2018.06.24

F.I.N.的新語辞典

第10回| アップサイクル

毎週一つ、F.I.N.編集部が未来の定番になると予想する言葉を取り上げて、その言葉に精通するプロの見解と合わせながら、新しい未来の考え方を紐解いていきます。今回紹介する言葉は、古くなったものに新たな価値を生み出す新しいものづくりの形「アップサイクル」です。  

©️hiroko ohtsuki(IDEA R LAB)

IDEA R LABで制作されたアップサイクル商品、卵専用アメリカントレーのランプシェード。

たまご屋さんで廃棄される業務用卵専用ケース(アメリカントレー)をきれいに洗浄。レーザーカッターでデザイン加工したアクリル板と組み合わせ、ランプシェードに仕立てている。

アップサイクル【あっぷ・さいくる/upcycling

リサイクルやリユースと同様に、廃棄物を再利用して循環させる考え方のひとつ。

日本でも絶大な人気を誇る、トラックの幌を再利用して作られるバッグで有名なスイスのブランド〈FREITAG(フライターグ)〉もこの考え方から生まれた商品で、近年、ファッションやデザイン、プロダクトなど幅広い分野で注目を集めています。ものを再利用するだけではなく、新たな価値と有用性を生み出すアップサイクル。その可能性について、2013年から玉島地区で廃材再生に着目したまちづくり「クリエイティブリユース」の活動を意欲的に取り組まれている、IDEA R LAB主宰の大月ヒロ子さんにお話を伺いました。

全国各地の美術館や博物館などで展覧会の監修や教育プログラムの開発などで活躍している大月さん。近年、世界中でアップサイクルが広まっている理由は、人々の暮らしの変化にあるといいます。「昔と比べて消費者ニーズが多様化し、大量生産、大量廃棄の経済活動に疑問や違和感、抵抗を感じる人が増えてきました。身の丈の暮らしに充足感を覚える若い世代も増えていますね」。

今後、アップサイクルの考え方は、どのような業界や活動に広まっていくのでしょうか。大月さんは次のように話します。「物の再活用だけでなく、建物や土地も含め、もっと広い捉え方をしたアップサイクルが盛んに行われるようになると思います。そして、それぞれの対象物の背後にあるストーリーにも焦点が当てられ、関わる多くの人々に知識や恩恵が与えられるはずです」。諦めることなく持続していけば、緩やかな循環のシステムが整ってくることを期待している、と大月さん。アップサイクルには、私たちの暮らしを支えているものや道具の誕生から終わりを見つめ直し、新しい発想で暮らしを豊かにするヒントがありそうです。

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