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2018.07.29

F.I.N.的新語辞典

第15回| ストーリーテリング

毎週一つ、F.I.N.編集部が未来の定番になると予想する言葉を取り上げて、その言葉に精通するプロの見解と合わせながら、新しい未来の考え方を紐解いていきます。今回紹介する言葉は、ストーリーを通して他者とのコミュニケーションを深める対話の手法、「ストーリーテリング」です。

ストーリーテリング【すとーりーてりんぐ/storytelling】

語り手が、エピソードや体験談など自身の“ストーリー”を交えて伝えたい思いやコンセプトを語る手法。話の説得力や共感が増す効果などを期待し、企業や法人ではコミュニケーションやリーダーシップの育成として積極的に取り入れられています。

今回お話を伺った牧原ゆりえさんは、各地でストーリーテリングを実践するワークショップを行っています。話し方や聞き手の視点、互いへのフィードバックなどを学び、その手法だけでなく、どのような効果があるのか実感し理解します。学生から大人まで、さまざまな立場や価値観を持つ人たちが初めて出会い、ストーリーテリング行う時、進行役も務める牧原さんは何が重要だと感じているのでしょうか。

「顔見知りではない方同士で行う際には、始める手前の時間が特に大切です。というのも、一人一人それぞれの人生経験があるので、1つのことを聞いても捉え方はさまざまですよね。初めから話し手の意図した通りに聞き手が理解してもらえることはまれです。その環境の中で話し手は論理立てて整理して話し、聞き手は正しく聞き取らなければならないと思っていると、話し手はオープンに話せませんし、聞き手は自由に想像力を広げて聞くことができません。相手との信頼関係が築けているかどうかで話す内容もその伝わり方が変わってくると思っています。信頼関係が築けていれば、ストーリーを交えて話すことで生まれる言葉の“質感”を五感で感じ取り、“なんとなく”相手の思いを理解した上で対話することが可能になるのではないでしょうか。自身の考えに固執するのではなく、一つの話でも捉え方の違いに学びの可能性があるという視点を持っていて欲しいですね。」

また、ストーリーテリングはプレゼンテーションやディベートのように思いを伝えるためのスキルのひとつとしてだけでなく、人生や経験をシェアし合う方法だと受け取ってほしいと牧原さんは考えているそう。

「話を聞いて感じたことや、学びのあったことを共有すると一つのストーリーに数えきれない学びがあることに気づきます。また語り手も、自分のストーリーにいろんな可能性が見えることで、新しい学びもあるはずです。手法としての話し方、聞き方の技術ももちろんですが、その考え方や効果を実感してもらう必要性を感じます。現代社会では一つのことだけでなく、いろんな知識を持つことが必要になっていますが、個々が培ってきた知識や知恵を互いに享受し合うことができれば、一人ひとりの知識や視野が広がります。一個人の言葉だったものが、実は社会全体を考える気づきや、見えなかった壁を取り払うきっかけになる可能性を持っているかもしれません。それが町全体、社会全体に繋がっていったらと思うとワクワクしませんか。」

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