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2019.01.20

F.I.N.的新語辞典

第30回| 超人スポーツ

毎週一つ、F.I.N.編集部が未来の定番になると予想する言葉を取り上げて、その言葉に精通するプロの見解と合わせながら、新しい未来の考え方を紐解いていきます。

今回紹介するのは、最先端テクノロジーを使った未来のスポーツ、超人スポーツです。

超人スポーツ【ちょうじんすぽーつ/superhuman sports】

 

超人スポーツとは人間の身体能力を超える力を身につけ、年齢や障害などの格差をなくし、誰もが楽しめるようになる新たなスポーツのこと。装着型ロボットやアシストスーツ、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)など、最新のテクノロジーを使って能力を拡張した人間が競い合います。例えば、視覚や触覚の機能を増強するウェアラブルデバイスなどを装着して行うサッカーや、西洋竹馬を足につけてジャンプ力を強化し、人体を拡張した選手同士が激しくぶつかり合うバブルジャンパーなどスポーツの種類は様々です。この超人スポーツが生まれた背景や未来のスポーツについて、超人スポーツの発案者であり、超人スポーツ協会代表の稲見昌彦教授に教えていただきました。

「テクノロジーを活用し、老若男女、障害のあるなしに関わらず楽しめるスポーツのことです。皆が超人になったかのように楽しめるということですね。私たちはよく、人と機械が一体となった、“人機一体”のスポーツという言い方もします」。

稲見先生が中心となって進めている超人スポーツ。発案されたきっかけは、2020年にオリンピックの東京開催決定したことでした。

「私自身、正直スポーツは得意ではなく興味もそれほどありませんでした。ですが、2020年のオリンピック開催決定を受けて、自分が長年研究している『人間拡張工学』(*1)を使った新しいスポーツができれば、世界の方により新しい日本のオリンピックを見ていただくことが可能になると思い立ち、テクノロジカルなオリンピックの実現のために、超人スポーツを考案いたしました。超人スポーツは、ただ高度なテクノロジーを使ったものだけでなく、例えば、空を高く飛べるようになるジャンピングシューズのような、単なる道具を使って楽しめるものでも良いと思っています。大切なのは、誰もが安心してできること。ハイテクすぎると多くの人が触れられないので、より多くの方が楽しんでもらえるようなスポーツにしたいと考えています」

具体的に開発中のテクノロジーについて伺うと「人工筋肉」を検討中だとか。これはプレイヤーに設置することでより早くボールが投げられたり、打てたりすることが可能になる技術です。他にも開発段階のアイテムは様々。現在のテクノロジーを使ってさらに開発を進めていくと語っていただきました。また、さらなる超人スポーツの導入について稲見先生は次のように考察します。

「近い未来としては、2020年に超人スポーツの国際大会の開催を目指しています。現状、プレイヤーの人口を増やしていくのが課題です。まずは競技人口を増やすために、イベントやワークショップを積極的に開催しています。遠い未来としては、超人スポーツが当たり前のスポーツとして世の中に広まっていることを願っています。学校に超人スポーツ部が出来る……なんてことも将来あるかもしれません」

 

 

*1 人間拡張工学

人間の知覚や身体能力を技術的に拡張することを目的とする、学際的な学問分野。人間の知覚と拡張現実(AR)・仮想現実(VR)を組み合わせたり、人間が行う自然な動作によって遠隔地のロボットを制御したりする技術に関する研究を指す。

 

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