もくじ

2021.03.09

F.I.N.的新語辞典

第82回| ミラーワールド

隔週でひとつ、F.I.N.編集部が未来の定番になると予想する言葉を取り上げて、その言葉に精通するプロの見解と合わせながら、新しい未来の考え方を紐解いていきます。今回は「ミラーワールド」をご紹介します。

「2025年大阪・関西万博誘致計画案」noiz×PARTY(森美術館、2020年)

空間コンピューティングを使い、現実の世界をデジタル化したもの。実世界から収集したデータを元に、仮想空間上に同様の環境を再現することから、「デジタルツイン」とも呼ばれる。代表例として〈Google Earth〉などがある。インターネットやSNSに続く第3のデジタルプラットフォームになると予想されている。

 

「ミラーワールドは、物理的に存在する世界というよりも、より概念に近いものです。カーナビや自動運転は、我々が知らないうちに享受しているミラーワールドの好例。自律走行車は、現実世界の道路を走行しますが、車自体が見ているのはバーチャル上のデータ空間です。より技術が発達すると、例えば、現実の道路から標識が消えたり、バーチャル空間にメッセージが残せたりするでしょう。現在、私たちはどこにいてもインターネットにアクセスしていますが、数年後の未来には、どこにいてもミラーワールドにアクセスしているようになると思います」。

そう話すのは、未来の体験を社会実装するクリエイティブ集団・PARTYでテクニカルディレクター/エンジニアを務める梶原洋平さん。

「概念自体は90年代からありましたが、ここ数年で一気にバズワード化したのにはいくつか理由があります。一つ目は、空間をデータ化するためのセンサーが安価になり、手に入りやすくなったこと。二つ目は、IoT(モノのインターネット)が普及し、街全体の情報がリアルタイムに観測できるようになったこと。三つ目にAR(拡張現実)やVR(仮想現実)のインターフェースが発達してきたことが挙げられます」。

PARTYでは、この技術を使い、仮想空間上でのエンタメ体験を共有できる「ヴァーチャル パーク システム(VARP)」を開発。オーディエンスはアバターを介し、仮想空間でのライブに参加が可能になりました。また2020年には、ARを使用したプレゼンテーション作品「2025年大阪・関西万博誘致計画案」(森美術館)を展示。今後ますますミラーワールドを用いた表現が増えると言います。

「すでに、デジタル領域のアートやエンタメの世界では、ミラーワールド的なコンセプトを内包した表現が避けて通れなくなっています。これから5Gが普及するにあたり、より扱えるデータ量が増え、技術も発展していくと思います。ミラーワールドはインフラとして、我々の生活に欠かせないものになっていくでしょう」。

もくじ