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2019.02.26

F.I.N.的新語辞典

第34回| ティール組織

毎週ひとつ、F.I.N.編集部が未来の定番になると予想する言葉を取り上げて、その言葉に精通するプロの見解と合わせながら、新しい未来の考え方を紐解いていきます。今回は、従来のものとは大きく異なる独自の組織構造や慣例、文化を持つ次世代型組織モデル「ティール組織」をご紹介します。

ティール組織【てぃーるそしき/teal organization】

 

フレデリック・ラルー氏が、著書『Reinventing Organizations』の中で提唱した、新しい概念の組織論のこと。日本では2018年1月に日本語訳版『ティール組織』(英治出版)が発売されたことでこの概念が広がり、次世代のマネジメント論として注目を集めています。この書籍の解説者であり、組織づくりの調査研究を行うNPO法人・場とつながりラボhome’s viの代表である嘉村賢州さんにティール組織について教えていただきました。

 

「フレデリック・ラルー氏は、CEO向けのコーチングを行うなかで、元々は志が高く熱量も高いCEOがそうでなくなっている状況を目にしたり、各種職場の調査において社員が働き甲斐を感じられたりしていないことなどから、現在の経済社会や組織の構造に疑問を持ち始めました。様々な書物にあたってみると、組織論に限らず、ありとあらゆる分野が時代とともに世界観やその時代によく使われている言葉などに表出する奥底のメタファーがあることに気づきます。そして最先端のメタファーが“生命体”であることから、生命体のメタファーで表現できるような組織があるかもしれないということで、口コミで世界中の組織の事例を調べました。すると、今までとはきわめて異なる方法で運営され、組織内の人が輝き、お客さんをも喜ばせているいくつかの組織があることを発見しました。“自主経営”“全体性”“存在目的”という3つの要素を持つそれらの組織が、ティール組織です」

 

ラルー氏は著書で、ティール組織までに至るまでの組織運営の5つの過程に色とメタファー(レッド=オオカミの群れ、アンバー=軍隊、オレンジ=機械、グリーン=家族、ティール=生命体)をつけて説明しています。最先端であるティール組織は、上下関係のあるピラミッド型組織ではなく組織メンバーが信頼で結びつき、一人ひとりの構成員に自律的判断が委ねられることが大きな特徴。この概念が日本で話題となっている理由を、嘉村さんはこう考えます。

 

「働き方革命という言葉が広がるなど多くの人が働き方に関して関心を示す一方で、その施策は少し表層的になっていると感じているのかもしれません。人生の大半を過ごす職場が、上司の評価を気にし、同僚と競い合い、必ずしも誇りを持てない商品を売らざるを得ないような場になっていることにうんざりしている人が増えているのかもしれませんね。縁があって出会い、多くの時間を過ごす会社の同僚との関係が安心・安全で、互いに高め合えるものになるのであれば素晴らしいことで、その可能性を多くの人が敏感に感じ始めているのだと思います」

 

ごく僅かではありますが、日本でもティール型組織が現れつつあり、今後は増えていくだろうと嘉村さんは続けます。「人と人の間に上下関係を作ることでコミュニケーションをとること、また機械と同じように人もコントロールできるという前提で作られた組織論のひずみを、多くの人が肌で感じているのではないでしょうか。海外のティール組織は、結果としてハイクオリティなアウトプットと高い売上高を生み出しているので、いずれ日本にもそういった組織が現れて、それが後続の組織のティール組織化を後押しする形になると思われます」

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