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2021.01.20

F.I.N.的新語辞典

第79回 伝泊

隔週でひとつ、F.I.N.編集部が未来の定番になると予想する言葉を取り上げて、その言葉に精通するプロの見解と合わせながら、新しい未来の考え方を紐解いていきます。今回は「伝泊」をご紹介します。

写真提供:奄美イノベーション株式会社

伝泊【でんぱく/Denpaku】

伝統的かつ伝説的な建築や集落の姿を、次の時代に伝えていく宿泊施設のこと。「伝統」「伝説」「伝える」の3つの“伝”を満たす宿泊施設であることから、「伝泊」と名付けられた。古民家などの伝統建築を利用し、集落の風景を守りつつ、「日常の観光化」を目指している。

今回は、「伝泊」の提唱者である鹿児島県・奄美大島出身の建築家・山下保博さんに、「伝泊」が生まれた背景や特徴について、お話を伺いました。

「奄美大島をはじめ、日本の島の多くは、人口流出や高齢化、空き家などの社会問題を抱えています。実際、建築家として故郷を訪れたときに、空き家が多くて困っている、という相談を受けました。そこで考えたのが、空き家や古民家を宿泊施設にリノベーションし、集落全体を活性化するまちづくりプロジェクトです。伝統建築に宿泊することで、島の文化や歴史を知ってもらい、次の世代につないでいきたいという想いから『伝泊』はスタートしました」。

 

最初の「伝泊」の施設〈港と夕陽のみえる宿 〉が完成したのが2016年。現在では、奄美大島に7棟、隣の加計呂麻島に2棟、徳之島に6棟展開しています。山下さんが伝泊施設をつくる際には、3つの基準を設けているといいます。

「築50年以上の伝統的な建物を使用すること、奄美における伝統的建築の7つの条件を7割以上満たす建物であること、現代の集落に合った建物をつくること、の3つです。奄美の伝統的建築は、台風や虫への対策がなされていて、沖縄や東南アジアの高床式家屋に似ています。集落の景観を守るため、外観に関しては大幅な変更はしません。コストをかけなければ、大きく稼ぐ必要もありません。ビジネス的になりすぎると、集落に対して違和感が生まれてしまいます」。

古民家を改装した伝泊施設以外にも、廃業したスーパーマーケットを高齢者施設やレストラン、ホテルなどが入る複合施設として蘇らせた〈まーぐん広場〉なども運営しています。将来の展望について、こう教えてくれました。

「伝泊やコミュニティ施設を介して、住民と観光客の交流を促したいです。また、観光で得た利益を地域に分配したいですね。全国的に『伝泊』によるまちづくりが広まればいいなと思っています」。

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