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2019.10.16

F.I.N.的新語辞典

第48回 LCA

隔週でひとつ、F.I.N.編集部が未来の定番になると予想する言葉を取り上げて、その言葉に精通するプロの見解と合わせながら、新しい未来の考え方を紐解いていきます。今回は、「LCA(ライフサイクルアセスメント)」をご紹介します。

LCAの概念図/提供:稲葉 敦教授(工学院大学 先進工学部 環境化学科)

冷蔵庫自体は何も排出しないが、使用時には電気が必要になる。この電気を発電するために、発電所で燃焼している化石燃料から二酸化炭素(CO2)が排出される。さらに化石燃料の採掘や輸送、冷蔵庫の組み立て時や部品となっている材料を製造する際にもエネルギーが必要となりCO2が排出される。最終的には冷蔵庫の廃棄にもエネルギーが必要である。

LCA【えるしーえー】

Life Cycle Assessment(ライフサイクルアセスメント)の略。目に見えている製品の環境への影響だけでなく、その製品が生まれるまで、および廃棄されるまでの“製品の一生(ライフサイクル)”での環境への影響を調べる手法。

 

環境問題への関心が高まるなか、環境負荷をより包括的に把握する手法として注目されているLCAについて、今回は、工学院大学先進工学部 環境化学科の稲葉敦教授に教えていただきました。

 

「たとえば、電気自動車は走っているときには排気ガスが出ないので環境に悪い影響がないのですが、電気自動車に供給する電力を作る火力発電所では、発電するときに地球温暖化の原因になる二酸化炭素(CO2)が出ています。電気自動車の生産から廃車までのCO2をゼロにするためには、太陽光発電などの再生可能エネルギーで発電した電気を使う必要があります」

 

稲葉教授によると、LCAが発祥したのは1980年代のヨーロッパ。1992年にブラジル・リオデジャネイロで行われた通称“地球サミット”で、環境を守る国際標準規格が必要と認識されました。規格を具体化するためにISO(国際標準化機構)が設立したTC(テクニカルコミッテイ:技術委員会)207番で議論されることをきっかけに、日本でも、製品の一生を通して環境への影響を考える手法・LCAが紹介されたのです。

 

「TC207は、環境ISOとして知られる“環境マネジメントシステム(ISO14001)”も発行しています。これは日本でも多くの企業が取得していますが、LCAはその兄弟ともいえるもの。製品の環境への影響を少なくするために必要な方法なので、同じく多くの日本企業が取り入れています。製品の一生(ライフサイクル)からCO2を計算した結果を商品に貼り付けることを“カーボンフットプリント(CFP)”といいます」

 

稲葉教授の研究室では、環境側面のみならず、経済的・社会的側面をライフサイクル思考で考慮する多様な実践的手法開発にチャレンジしているのだそう。「たとえばCO2を排出すると、気候が変動し多くの被害が出てきます。しかし、CO2を減らすということがどれくらいの被害を減らすことになるのか、実感がわかないがゆえに地球温暖化の対策が進んでいないのが実情です。そこで私は、CO2排出による環境への影響を調べ、その被害をお金に変換して、1トンのCO2の排出が削減されると被害総額がどれくらい削減できるのかを研究しています」

 

被害をお金に変換することは“環境経済学”という分野で研究が進められおり、その方法は、今年ISO(国際標準規格)14008になったそうです。

 

「これからこのような方法を使って、企業が環境への影響をお金に換算し、自分たちの環境への努力をお金で表すようになると思います。そして、消費者は環境により配慮する企業を応援するという社会になってゆくと思います」。稲葉教授は、少し先の未来についてこう考察してくれました。

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