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2020.11.27

F.I.N.的新語辞典

第75回| 逆レコメンド

隔週でひとつ、F.I.N.編集部が未来の定番になると予想する言葉を取り上げて、その言葉に精通するプロの見解と合わせながら、新しい未来の考え方を紐解いていきます。今回は「逆レコメンド」をご紹介します。

逆レコメンド【ぎゃくれこめんど/Preference elicitation】

ユーザーの検索ワードやサイトの閲覧履歴から分析し、好きなものを提示してくれる通常のレコメンドシステムの逆で、興味関心はあるがそれに気づいていないものや、あえて日頃購入しないものをおすすめしてくれる機能のこと。

 

「ECサイトなどで買い物をするときに、『あなたにおすすめ』や『この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています』という表示を見たことがあると思います。この仕組みをレコメンド機能と呼びます。逆レコメンドはこの進化版で、自分では気づかないような商品を紹介してくれるサービスです」。そう話すのは、株式会社電通の「未来予測支援ラボ(https://dentsu-fsl.jp)」で未来を見据えたアイディアの発想・提案を行っている立木学之さん。逆レコメンドという概念は、レコメンドシステムの持つ課題から生まれたそう。

「レコメンド機能では、ユーザーの見たいものしか見えなくなることで、興味関心の幅が狭まっていく『フィルターバブル』という現象が起きます。IT革命以前は、実際にお店に行くことで、それまで関心のなかった商品に偶然出会うという“セレンディピティ”が起こり得ましたが、デジタルの世界では関心のある情報しか目に入らなくなり、そういった偶然の出会いというものが担保されなくなってきています」。

その流れから一部の先端的なテクノロジーを採り入れている企業では、数年前から逆レコメンド機能を採用するところが多くなっています。例えば音楽ストリーミングサービスの「Spotify(スポティファイ)」は、性別や年代などの属性をもとにビッグデータから解析し、これまでに出会ったことのないような曲をすすめるといったアルゴリズムを使用しています。仮に、ユーザーが30代の日本人女性である場合、物心が付く前の1990年代にヒットしたアメリカンポップスを勧めてくるというような仕組みです。

「何か新しいものを発見したときに、脳は快感を覚えるそうです。人の心身の健康のためにも、興味や関心にも多様性があることが重要です。ユーザーエクスペリエンスの質を高めるのも、デジタル時代における企業の役割ではないでしょうか」。

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