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2020.07.20

F.I.N.的新語辞典

第65回| C2C

隔週でひとつ、F.I.N.編集部が未来の定番になると予想する言葉を取り上げて、その言葉に精通するプロの見解と合わせながら、新しい未来の考え方を紐解いていきます。今回は「C2C」をご紹介します。

調湿・消臭・抗菌、不燃性という優れた特性をもつ漆喰。写真は田川産業株式会社のショールーム「しっくい相談室」。

C2C【しーとぅーしー】

従来の製品サイクル“生産→使用→廃棄”の“ゆりかごから墓場まで”という概念から“廃棄”をなくし、“生産→使用→生産”という持続可能性や完全リサイクルを目標に掲げた“Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごへ)”という環境基準。ドイツの科学者マイケル・ブラウンガート氏とアメリカの建築家ウィリアム・マクドノー氏によって提唱された考え方です。今回は、世界の大手企業が相次いで取得しているC2C認証を日本企業としていち早く取得した漆喰メーカー、田川産業株式会社の広報・行平史門さんにお話を伺いました。

 

漆喰製品群、漆喰セラミック・LIMIX、インテリア消臭剤・Lumie cube、焼かずに使える手作り植木鉢キット・ecopoの4製品分野で、2010年4月にC2Cのシルバー認証を取得した田川産業株式会社。取得にあたって特に高い評価を得たのは、認証機関が設定する“Material Health”と“Material reutilization”の分野です。「漆喰やLimix製品は、その構成物に健康や環境に害を及ぼすような化学物質を使用していません。また主原料となる消石灰は自然素材で、建築材料としての役割を終えた後に単純に廃棄物として処理されることなく、自然に還すことができる環境循環型の製品であることが、高い評価を得ている点です。またLimixは、製造過程において環境負荷の大きい焼成のステップがありません。焼かないタイルでありながら、最終的に自然に還すことができるという点が評価に繋がりました」。

 

現在は、C2C認証をシルバーからゴールドにランクアップするための申請中だという同社。環境先進企業として今度取り組んでいきたいことについて、行平さんはこう話します。「C2C認証を得るために当社が何か変えたことはありません。当社が100年にわたって大切にしてきた概念 “住環境の健康改善”“環境負荷の低減”が、たまたま国際的にも求められる時代になってきたのだと思います。そういった意味で、漆喰はC2Cの概念においては既に完成された、非常に優れた製品です。そのうえで当社の次なるミッションは、環境負荷の低い製品を、再生可能エネルギーの有効活用などによって、今よりさらに環境負荷の低い製造プロセスで世の中に送り出すことだと思います」。さらに、C2Cを完全に実践するためには、1企業の取り組みだけでは限界があると行平さん。「例えば当社が関わる建築の分野においても、建築材料単体で環境負荷の低い材料を選ぶだけでなく、建築全体として新築、改修、解体、最終的に廃棄、リサイクルされるまでの全体を一貫してC2Cの概念のもとにデザインする必要があります。このような取り組みに積極的に参加し、建築の新たな常識を作る努力をしていきたいと思います」。

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