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2020.05.01

目利きたちに聞いた、これからの暮らしのマイルール。

前編 大谷明日香さん、藤原麻里菜さん、溝口実穂さんの場合

春になると、気持ちも新たに暮らしへの向き合いかたも整えたくなるもの。これから1年間、新たに自分の習慣にしたい、挑戦してみたいルールを、各ジャンルで積極的にあたらしいことへの挑戦を続けている6人の目利きたちに伺いました。みなさんの回答から、未来につながるあたらしい暮らしの片鱗を覗けるかも?今回お招きしたのは、タイプやサイズ、カラーで区別せず誰でも着ることのできるアンダーウェアブランド「REING(リング)」代表の大谷明日香さん、コンテンツクリエイターの藤原麻里菜さん、「菓子屋ここのつ」の溝口実穂さん。この3名に、春から実践したい暮らしのマイルールについて伺いました。

イラスト:小林敦子

アンダーウェアブランド「REING(リング)」代表の大谷明日香さんの場合

〈暮らしのマイルール〉

できるだけゴミを出さないこと

人は何かについて考える時、“社会の普通”が基準になってしまうことが、多くあると思います。よく「ありのままで」とか「自分らしくいよう」というフレーズを目にするけれど、そもそも“自分らしさ“って何でしょう。私もその一人でしたが、”社会の普通“に囚われて自分らしく表現することに一歩踏み出せず、どんどん自分らしさがわからなくなってしまうんです。REINGでは、自分らしい選択を紡いでいくことこそが自分らしさをつくる」ことだと話すのですが、本来すべてのことは自分起点。誰と関係性を紡ぐか、何を選ぶか、どう生きていきたいかを自分で選択することを怠らないこと。それこそが心地よく自分らしくいられることではないかと考えています。そのためにはまず自分は何が好きなのか知り、日々の選択を一つひとつ自分の「好き」「心地いい」に従って選ぶトレーニングをすることが、自ずと自分らしさに繋がるんです。

 

最近私は、「できるだけゴミを出さないこと」が心地いいと感じていて、そのためにゴミが出ない固形石けんシャンプーに変えました。またペットボトルは買わずにマイボトルを持ち歩いて、エコバッグも携帯しています。お弁当も作るようになりました。自身の体調管理のためでもあったのですが、料理をはじめると、食材を買う際もできるだけゴミが出ないようにしたいと思うようになったし、ゴミを出さないようにするにはどうすればいいだろうと考えることも日々楽しくなっています。私のやっている「REING(リング)」というブランドのフィロソフィーでもある「Every relationship is beautiful.」には、地球との関係性も美しく、作り手との関係性も美しくという意味が込められています。自分たちだけがよしで自分たちだけが心地よくいられたらいいって変じゃないですか。すべての人、環境に対しても心地よい選択ができるといいと思っています。

 

なかなかすぐに自分を解放して自分らしく生きるというのは難しいけれど、今はブランドをやっていることが自己解放になっています。まだ発展途上だけど、もう一歩先の5年先には、自分がやっていることや自分が選んでいるもの、自分がこうありたいという生き方に対して、自分らしくいたい。先を考えるというより、今を一つひとつ丁寧に積み重ねていって、結果5年後そうなっていると嬉しいです。そしていずれ性別関係なく、「大谷明日香」として存在したいと強く思っています。

Profile

大谷明日香さん

福岡生まれ。上智大学、ロンドンへの短期留学を経てベンチャーの広告代理店に入社。

「YOUNG SPIKES2016日本代表選考」にてBRONZE受賞時、課題がジェンダー不平等だったことを機に「社会課題にこそ、クリエイティブの力が必要だ」と感じ、NEWPEACE Inc.に参画。現在は日本発のグローバルブランドやファッションプロジェクトの戦略立案に携わりながら、THE RELATIONSHIP BRAND「REING[リング]」を立ち上げ、代表を兼任。プロダクト/クリエイティブ/コンテンツの開発を通じて、日本のジェンダーやセクシュアリティに対する考え方をアップデートするべく活動している。

REING Instagramアカウント:https://www.instagram.com/reing.me/

コンテンツクリエイター、藤原麻里菜さんの場合

〈暮らしのマイルール〉自分の嫌な部分を肯定して、“おもしろい”に変換

私は、自分の中に生まれる嫌な感情に目を向けて、「無駄づくり」のコンテンツに生かしています。例えば、私はバーベキューに誘われたことがなくて、SNSにアップされるバーベキューの様子を見るのが嫌で。Twitterで「バーベキュー」と呟かれる度に、藁人形に五寸釘が打ち付けられるデバイスを発明しました(笑)。人間の負の部分は、アウトプット次第ではおもしろいし、むしろそれを肯定したくて。負の部分を発散して“何か”を生み出すことは“プラスの発散”だと思ってやっています。でもネットを使った攻撃などは何も生み出さないから“マイナスの発散”ですよね。

 

だから、私は日頃から自分自身の嫌な部分を肯定するようにしています。実は、「無駄づくり」をしていながら、本来とても合理主義で完璧主義な性格。ダラダラと無駄な時間を過ごすのが嫌いなんです。昔は自分にも厳しくて、だめな自分を許せないし人のことも許せない性格でした。そんな自分のだめなところを肯定してあげるために、「無駄づくり」をしています。誰にでも嫌な一面はあるし、正義感が強かったり、かわいい人やちやほやされている人がむかついたりする気持ちもわかります。でも、みんなが何か発明しなくても、ネガティブな感情をどんな風におもしろい発想に転換できるか妄想するだけでも楽しくなるかもしれない。私がやっていることをみて、少しでも心に余裕を持ってもらえたらいいですよね。私の場合、自分を肯定することを続けていたら、同時に人のこともおもしろいと思えるように。みんながそう思えると、もっとハッピーな方向に向かいそう。人に対する負の感情が生まれたら、「いやでも、自分にもそういう部分はあるぞ」と、いくつか違う視点を持って考えるようにすると冷静になれるんです。

 

どの時代にも、ネガティブなことをおもしろさに変えている人がいますが、私もそういうコンテンツを自分なりに作り続けていきたいんです。作ることにあまりメッセージ性はないけれど、自分自身が「無駄づくり」をすることで心が救われて、悩みなく楽しく生きていられるので、私の姿を見て楽しんでもらえたら嬉しいです。

Profile

藤原麻里菜さん

コンテンツクリエイター、文筆家、映像作家、発明家。「無駄づくり」をしながらYouTubeを中心にコンテンツを広げている。2013年からYouTubeチャンネル「無駄づくり」を開始。現在に至るまで200個以上の不必要なものを作る。2016年、Google社主催の「YouTube Next Up」に入賞。2018年6月、国外での初個展「無用發明展-無中生有的没有用部屋in台北」を開催。著書に『無駄なことを続けるために ほどほどに暮らせる稼ぎ方』(ヨシモトブックス)がある。

〈菓子屋ここのつ〉 溝口実穂さんの場合

〈暮らしのマイルール〉自分の声を聞いて、優先順位を決める

〈菓子屋ここのつ〉は、お茶と和菓子のコースを提供する完全予約制の茶寮です。「和菓子」というと練り切り菓子を思い浮かべるかもしれませんが、私がつくるのは料理と和菓子の中間のようなもの。境のないそれを陶作家の安藤雅信さんが、それを「糧菓(りょうか)」と名付けてくれました。茶寮では、お茶やお菓子だけでなく「時間」を提供しています。何もない環境に身を置いて、目の前にあるものに集中する。静かに自分自身と向きあう「時間」は、以前の私にとっても必要なものでした。

 

この茶寮を始める前、東京の和菓子屋さんで働いていました。その頃はとても忙しく、夜明けから仕事が始まり、夜遅くに帰宅する毎日でした。休みの日は夜行バスに乗り京都で和菓子の勉強をして、東京に戻ったらまたすぐに仕事。四季の移ろいも感じず、桜も紅葉も見ることなく一年が終わってしまう。忙しく働く人にこそ、ゆっくりお茶とお菓子を味わい、心に余裕を感じる時間が必要だと思って、この茶寮を始めました。

 

温かいお茶を飲んで心に余裕が生まれたら、自分の声が聞こえてきます。自分がどうしたいのか、どう生きたいのかに気付けると、とても楽になります。優先したいことが見えたら、自然とものごとは進みます。また、第一優先にしたいものについては、常に柔軟に決めていく。そんなふうに常に優先順位を明確にしておくことが、マイルールかもしれません。

 

今の第一優先は、お茶とお菓子を味わう時間を提供すること。でも、時代は刻々と変化し、自分自身も変わります。茶寮を続ける事も柔軟に変化する事もとても大切なことですよね。。5年先の未来は、どうなっているかもちろんわかりませんが、子育てをしていたいですね。今は努力した分だけ自分に返ってくるけれど、子どもがいればきっと思い通りにはいかない事もあるでしょう。それを経験することで、違うものが見えてくるかもしれません。そんな変化も味わってみたいと思っています。5年先の未来が愉しみです。

Profile

溝口実穂さん

東京・鳥越にある完全予約制の茶寮「菓子屋ここのつ」主催。日本に古くから伝わる事を身を以て学び、変えなくて良い事と変えていくべき事を糧菓を通して自分なりに伝えていく事が自分の役割と考える。2020年6月、陶作家の安藤雅信さんと共著『茶と糧菓』を出版予定。

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