2020.12.24

わたしの「しない贅沢」

第2回 編集長・神藤秀人さんの場合

目まぐるしいテクノロジーの進化とともに、さまざまな情報がひっきりなしに目に入る今の世の中。現代における贅沢を考える上で、暮らしの「余白」をつくることが、毎日の生活を豊かにするのではないでしょうか。各界で活躍する方々に、気持ちをリセットしたい時や自分自身を整えたい時などに行う、「〇〇しないこと」をお聞きすることから、真の贅沢とは何なのか、一緒に考えていきます。

 

今回お招きしたのは、日本全国のその土地らしさをデザイン的観点から紹介するトラベルガイド『d design travel』の編集長・神藤秀人さん。2018年に3代目編集長に就任し、同誌の編集・執筆・撮影をはじめ、展覧会の構成も担当している神藤さんに「〇〇しない贅沢」を伺いました。

<神藤秀人さんのしない贅沢>

流行を追わない。

写真提供:神藤秀人さん(『d design travel』茨城号の取材中に、撮影されたもの。茨城県内にある居酒屋「山文魚」での一枚。料理の器には、益子焼と小鹿田焼が使われている)

仕事の影響もありますが、話題のものは追わないようにしています。流行を追ってしまうと、全国に点在している、その土地ならではの素晴らしいものが見えなくなるからです。日本中が同じ食べ物、映画、ファッション等で溢れたらつまらないと思っているので、全国どこにでもあるチェーン店などにも行かないようにしています。d design travelは、特集ごとに約2ヶ月、その土地に滞在しながら取材をします。旅をする中で、自然と入ってきた情報を取捨選択し、実際に自分で体験しながら自分の中に取り込んでいきます。その土地土地でももちろん流行りはありますが、僕らの雑誌は10年後も存在し続けるものなので、仮に10年後に消えてしまうようなものなら、取り上げる必要はありません。流行を追わないことで、逆に世の中で起きていることに対して、敏感になれた気もしています。例えば実は今、タピオカをけっこう飲んでいて(笑)。ブームが去った後でも残っていくとしたら、それは時代を問わず認められたものだと思うし、僕自身ようやく興味が持てるんです。d design travelの制作に関わるようになってからは、一つひとつ自分自身で確認しているので、数年後に今の自分を振り返った時に、自信を持って「こういう生活をしていた」と言える気がします。

 

流行って、世界全体を操作できてしまうものですよね。もしみんなが流されるままに何かを良しとしたら、極端な話法律だって変わってしまうかもしれません。それに、5年先の未来、ロボットやAIが今よりも社会に浸透していく中で、一人ひとりが自分自身で判断できる能力を低下させてしまうのは、寂しいことだと思います。“信念”と言うとかっこよすぎますが、ちゃんと自分の軸を持って、時には人とぶつかりながらでも、思いを通していく方が人間らしいのではないでしょうか。

Profile

神藤秀人

デザイントラベルガイド『d design travel』の編集長。2012年よりD&DEPARTMENT PROJECTに参加し、創刊者のナガオカケンメイとともに全国を旅して取材。2018年に3代目編集長に就任し、「その土地らしさ」をロングライフデザインの視点から紹介している。渋谷ヒカリエ「d47 MUSEUM」で開催する同シリーズの展覧会の企画・構成なども担当。

web:www.d-department.com

編集後記

我々未来定番研究所のミッションは、世の中の流行を追いかけるのではなく、未来の「定番」を生み出すこと。神藤さんのお話には、そんな我々の思いに通じる部分がたくさんあり、背中を押してもらった思いです。

先日、ユナイテッドアローズの栗野宏文さんにお話を伺う機会があったのですが、その時にも、これからの贅沢な服とは「流行っていないもの」だとおっしゃっていました。社会のあらゆる場面で、流行よりも「多様性」が大切にされるようになっているのを感じる、今日この頃です。

(未来定番研究所 菊田)

わたしの「しない贅沢」

第2回 編集長・神藤秀人さんの場合