2021.02.01

“シェア”することでもっと豊かに。 まちのデザインから考える未来の暮らし。

1992年に創業されたUDS株式会社。「世界がワクワクするまちづくり」をコンセプトに、生活者目線に立ち、人々の暮らしをより豊かにする、さまざまな企画や施設を生み出しています。そこで「家具シェアリングサービス」や「タイムシェア型レジデンス」などを展開する 新プロジェクト「tefu」を手がけるUDS株式会社事業企画部ゼネラルマネージャーの金塚雄太さんに、これからのまちと暮らしについて、お話を伺いました。
(撮影:河内彩)

UDSのまちづくりの原点は、住む人と一緒に住宅を作る「コーポラティブハウス」。

FIN編集部

「世界がワクワクするまちづくり」という、UDS社のコンセプトについて教えてださい。

金塚さん

我々は、「コーポラティブハウス」事業からスタートしている会社です。一般的な集合住宅は、不動産会社が土地を購入し、住宅を建設してからお客様に販売するという流れですね。住宅は、すでに間取りまで決まっており、誰もがその幅の中でしか暮らしをデザインすることが出来ません。UDSではもっと住む人が自由に、暮らし方から考えられる住まいを提供したいと考えました。そこで、その場所に住みたい人を募り、入居希望者でつくる組合を事業主として住まいを作っていく「コーポラティブハウス」を日本で初めて事業化しました。

FIN編集部

住む人と一緒に作っていくんですね。

金塚さん

更地の状態から、集合住宅が出来上がるまで、最低でも1年半から2年程度はかかります 。その間に、住民の方の間にもコミュニティが形成されるので、隣に誰が住んでいるのか知らないマンションとは、少し違った住まいが提供できるんです。また、戸建て住宅が集まる「コーポラティブヴィレッジ」も手がけましたが、ここでは、住人の方が庭を共有することで、小さな「まち」が出来上がる。こんな風に、コミュニティ作りに貢献することは、僕らのアイデンティティのひとつです。僕らは目黒のホテル〈CLASKA〉も企画したのですが、1階にカフェやトリマーを入れることで、宿泊する方だけでなく、まちにも開かれたホテルにしたんです。このホテルもまた、コミュニティを重視する私たちのアイデンティティの元に生まれたものでした。

モノを所有する時代から、シェアすることで幸福になる時代へ。

FIN編集部

現在、金塚さんが手掛けている「tefu」について教えてください。

金塚さん

これは、「空間のシェアリングサービス」と「家具のシェアリングサービス」の2軸で展開しているプロジェクトです。まず「空間のシェアリングサービス」についてですが、最初のプロジェクトとして、これからの暮らし方・働き方を見すえて、タイムシェアの概念を取り入れた複合施設を代々木上原で運営しています。

背景にあったのは、コロナ以前から働き方が多様になっていて、ノマドワーカーやリモートワーク、多拠点居住で、住む場所を移動しながら働くことも、これからの「当たり前」になるだろうということ。その段階では、一部の先進的な方だけが実践していたスタイルでしたが、一般企業でもその概念を取り入れられないかと考えたんです。これからのオフィスは毎日通勤しなくてもいい場所になるかもしれない。それなら、使わないオフィスを有効活用できないか。オフィスとして快適な空間は、イベントスペースや宿泊施設にしても快適なはずです。そのため、平日はワークスペースとして、週末は多目的に使える複合空間〈tefu yoyogi uehara〉を作りました。

イベントや宿泊に使用した人が、企業の情報に触れてしまうのでは?と心配される方もいるのですが、それはセキュリティを強化したり、スペースを区切ったりすることで技術的に解決しているので、問題ありません。

 

FIN編集部

もうひとつの、「家具のシェアリングサービス」についても、教えてください。

金塚さん

今、メルカリやヤフオクが躍進していますが、それは「買う」ことより「使う」ことが重視されている時代だからなのではないでしょうか。また現在、コロナ禍で住環境の質が見直されはじめていますが、確かに家で過ごす時間が増えると、間に合わせの家具ではなく、自分が好きな家具に囲まれていたくなりますよね。ただ、デザイン性の高いヴィンテージ家具を使いたくても、高額で手が出せない方も多いと思います。ヴィンテージ家具の数は限られていますが、これからヴィンテージになりうる高いクオリティの家具を、月額利用料で使用できるサブスクリプションサービスを始めることにしました。

FIN編集部

「tefu」の2つの事業に共通するものはなんでしょうか。

金塚さん

「わかちあい」です。例えば、都内にはコーヒーショップがたくさんありますが、コーヒー自体はコンビニに行けば100円で買うことができる。でも、わざわざお店に行って600円のコーヒーを飲む理由には、素敵な空間を楽しんだり、店員や常連さんとコミュニケーションしたりできることも含まれているんじゃないかと思うんです。時間や空間や音楽など、ひとりで独占できないものを誰かとわかちあうことに、より幸福を感じるようになっている傾向があると感じています。さらに、メルカリやヤフオクの例もあるように、経済合理性の観点からも、モノをシェアすれば、コストを抑えながら生活の質を上げることはできるんです。

FIN編集部

豊かさを感じるポイントが、モノの所有からシェアに移り変わってきたんですね。

オフィスでも家でもない、サードプレイスの重要性。

金塚さん

そうですね。それから、先ほどの働き方でいうと、コロナ禍でオフィスへの通勤頻度が減少したり、本社機能が縮小したりすることで「サードプレイス」の重要性がこれまで以上に高まるのではないかと思っています。そもそもオフィスと家の違いは、作業に集中できる環境が整っているか、会議ができる場所があるかどうかですよね。家でそれが十分にカバーできない場合、住居空間の近くにあるサードプレイスの必要性が高まってくる。

FIN編集部

例えば、まちの中にあるカフェもサードプレイスになりますか?

金塚さん

オフィスと家の中間というとそうですが、カフェはWi-Fiや電源の問題、オンライン会議に集中しにくいなど、仕事をする上での機能は満たしていないですよね。だから、もっと作業環境が整っている場所が必要になると思います。オフィスのような機能性がありながら、家のような心地よさもある、だけど家よりも特別感のある新しいサードスペースの役割が求められると考えています。また、私たちは「下北線路街」にも携わっているのですが、下北沢は遊びに行く街であり、住人も多い街です。以前は「住宅街」から「オフィス街」に通勤し、「商業エリア」で遊ぶというように、まちを使い分けることが一般的でした。しかしながら、これからの「いいまち」は、それらの要素が混在してくると思うんです。下北沢はそのモデルケースになると考えています。下北線路街の開発では、より住みやすくなるように保育園を設置、さらにサードプレイスの役割を担うカフェやワークプレイス、そして遊びに行く場所として温泉旅館の〈由緑別邸代田〉を企画しました。住居から徒歩圏内で全てがまかなえる。そんなまちを手がけていきたいと思っています。

(撮影:ナカサアンドパートナーズ)

FIN編集部

では、金塚さんが考える、5年先の未来とは?

金塚さん

シェアの価値観が定着して、オフィスのあり方も見直されているでしょう。おそらく、今、企業は議論している最中だと思いますが、5年後には、一定時間、オフィスに拘束されるような働き方は減少して、ひとりの個人が複数企業と契約して、成果によって賃金が支払われる「従量課金制」が一般的になっているかもしれません。今もすでにその流れがありますが、副業もより一般化しているのではないでしょうか。それに伴って、サードプレイスも普及して、住まいの徒歩圏内で働いて、遊べる。今よりもっとストレスの少ない都市生活になると思います。

Profile

金塚雄太

1983年東京生まれ、横浜育ち。東京工業大学建築学科卒業後、スイス連邦工科大学留学を経て、東京工業大学大学院建築学専攻修了。2010年、株式会社日建設計入社、商業施設、教育施設などの設計に従事。設計者の枠組みを超えてクライアントに貢献できる立場でありたいという想いから、2013年よりUDS株式会社に入社。現在は、事業企画、空間ブランディングを担当。

編集後記

数年前を振り返ると。これほどまでも、人々がシェアリングサービスを利用すると想像できたでしょうか?

今のように、シェアリングサービスが生活に浸透したのは、技術の革新もありますが、しくみとして無駄なく、無理なく、快適に、利用者が幸せを享受できているからなのでしょう。

未来を見つめる金塚さんのお話をお聞きして、「シェアの先には、どんなサービスが求められるのか?」と考えてみたくなりました。

(未来定番研究所 窪)