2020.01.28

これからの5年で変わるもの、変わらないもの。<全8回>

第7回| ブランディングディレクター・佐藤香菜さんの場合

今起きている”変化”の中から5年先の未来の種を探してきたF.I.N.。変化を追い続けてきたからこそ、これまで目を向けてこなかった、”変わらないもの”の中にも未来の種の可能性を感じるようになりました。そこで、2019年から2020年へと移り変わる今のタイミングで、ビジネス、カルチャー、ライフスタイルなど、各分野を牽引する方々にご登場いただき、「これからの5年で変わるもの、変わらないもの」について伺っていきます。

 

今回お招きしたのは、ブランディングディレクターの佐藤香菜さん。「ビープル バイ コスメキッチン」のディレクターを経て、現在はフリーランスのブランディングディレクターとして幅広く活躍している佐藤さんに、「これからの5年で変わるもの、変わらないもの」についてお話しいただきました。

イラスト:tent

5年先も変わらないもの:「人々の悩むこと」
5年先に変わっているもの:「価値観」

人は、いつの時代も悩んでばかり。テクノロジーはどんどん進化していますが、同じような速さで人間は進化できません。テクノロジーと人間の進化の差が大きくなればなるほど、人の悩みは深くなっていく気がしています。5年先も人は悩み、そして自らの悩みを解決してくれる「何か」を求めていると思います。そして多くの人はまず、「もの」に頼ったりすがったりする傾向があると思います。例えば、オーガニックコスメというだけで、悩みを全て解消してくれるのではないか、と期待されるお客様もいます。これは以前私がコスメキッチンで働いていたときに聞いたお客様の声や、私のInstagramに寄せられる質問などから感じたことです。頼りたい何かを求めるあまり、インフルエンサーやインターネットに転がっている情報に振り回され、何がなんだかわからなくなり、最終的に疲れてしまっている人もいるのではないでしょうか。

 

表面的な情報がどれも根本的な解決には繋がらないからこそ、自分を強く持ったり、自分の感情が動く瞬間を固めたりすることが、これからもっと必要になる気がします。人はもっと本質的な情報をもとに、物事を判断しないといけないと思うんです。例えばものをひとつ選ぶにしても、その商品ができるまでのプロセスや、プロセスに込められたブランドのこだわりやストーリーを見つめる。ネットや口コミではなくて、信頼できる販売員の人の一言を大切にする。そんなモノとの向き合う姿勢が大切になっていくと思います。

 

実際、本質を大切にするムーブメントは既にさまざまな場所で出てきています。例えば、透明性を大事にするブランドやローカルな関わりを大切にするお店ができてきたり、大きい企業とフリーランスが組んで良いものづくりをしていたり。モノに限らず、ブランドや会社のあり方から、コミュニティの質や大きさまで、幅広い範囲でこの動きは広まっています。

 

だから5年先の未来では、物事の本質的な部分を重視する人がもっと増えていると思います。私が専門とするものやコスメ選びで言えば、インフルエンサーなどの言葉に頼って商品を選ぶのではなく、1人ひとりが自分自身の心と感情に向き合い、それを基準にした商品選びをして欲しいです。さらには、自分が強くなることを後押ししてくれる商品を選んで欲しいと思います。だから私は今後も仕事を通じて、真摯なモノづくりをしているメーカーの商品を1人でも多くの人に正しく伝え続けていきたいですね。

Profile

佐藤香菜/ブランディングディレクター

世界中のナチュラル&オーガニックアイテムを展開する「ビープル バイ コスメキッチン」のディレクターを経て、現在はフリーランスのブランディングディレクターとして多数の企業コンサルティングに関わる。世界中のオーガニックコスメやフードを求めて旅する様子や、本人が実体験に基づく言葉で綴られているInstagramは、幅広い層の女性から支持されている。

編集後記

インフルエンサーである佐藤さんからの「インフルエンサーの情報を鵜呑みにして、頼りすぎることはよくない」という言葉には、驚きでした。なぜなら、ふつうはフォロワーを増やしたい思いから、情報をどんどん受け取って信じてほしい、と言いたくなるところだと思ったからです。今回の取材を通して、「本質的に世の中の人々を後押ししたい」という、佐藤さんの”自分自身の軸”を覗い知ることができました。

過多ともいえる情報に囲まれた現代において、「もの」に判断を委ねたくなるところを堪え、「自分を強くしてくれるものはなにか?」を自問自答していきたいと思います。

(未来定番研究所 中島)