2019.12.20

これからの5年で変わるもの、変わらないもの

第2回 茶人・松村宗亮さんの場合

今起きている”変化”の中から5年先の未来の種を探してきたF.I.N.。変化を追い続けてきたからこそ、これまで目を向けてこなかった、”変わらないもの”の中にも未来の種の可能性を感じるようになりました。そこで、2019年から2020年へと移り変わる今のタイミングで、ビジネス、カルチャー、ライフスタイルなど、各分野を牽引する方々にご登場いただき、「これからの5年で変わるもの、変わらないもの」について伺っていきます。

今回お招きしたのは、茶人の松村宗亮さん。茶の湯をもっと自由に、もっと楽しくすることを目指して活動を続ける松村さんに、「これからの5年で変わるもの、変わらないもの」についてお話しいただきました。

イラスト:tent

5年先に変わっているもの:「技術」

5年先も変わらないもの:「集い」

これからの5年で、さまざまな「技術」がさらに発展するでしょうね。茶道の世界でも、今でこそドクロの茶碗や黒い畳の下にLEDライトを配した“光る茶室”が新鮮に見えるかもしれませんが、そんなものは当たり前になってしまうような、新しい技術を使った茶道具が出てくるかもしれません。インターネットで繋いで空間を超えたお茶会も実現できるでしょうし、ARやVRを使ったお茶会もやってみたい。お茶会って集まる人々の会話や空気感、気候なども含めて再現不可能なところ、いわゆる一期一会が魅力のひとつなんですが、道具組みの再現や気候など環境のデータを取ったりすれば擬似的な追体験はできそうです。お茶の香りや温度も体験できると楽しいですよね。茶道が確立された約450年前にもし今の技術があれば、千利休もきっと最新技術を使っていたでしょう。もちろん基本は大切にしつつも、文化は時代に沿って変わっていくべきだし、変わらないと生き残れないんじゃないかなと思います。

 

変わらないものは、「集い」ではないでしょうか。それぞれが忙しいなか実際に集まって、同じ火を使って沸かした湯で点てたお茶を、みんなで飲む。そんな人間の根源的な集いは、これからも変えたくないものと言い換えてもいいですね。おもてなしの気持ちはもちろん、茶室の構造やお茶会の構成など、茶道のフォーマットとルールも大切にすべきものだと思います。

 

「SHUHALLY」を立ち上げて、今年でちょうど10年になります。かたいイメージを持たれがちな茶道界で、立ち上げ当初、私の活動は今よりももっと異質に捉えられていました。でも今は外国の方と同じように、昔ながらの茶道も私が提案する茶道も、並列で格好いいとフラットに受け入れてくれる方が若い方を中心に増えてきたように感じています。基本を守り、創意工夫を加え、独自のスタイルとして確立する。千利休が残した茶道の心得「守破離」をベースに現代の技術を取り入れて、今だからこそできる茶道の表現をこの先も探っていきたいと思っています。

Profile

松村宗亮/茶人

「SHUHALLY」庵主・裏千家茶道准教授。1975年横浜市生まれ。英国国立Wales大学大学院 経営学科卒(MBA)。学生時代に日本人でありながら日本文化を知らないことに気づき、帰国後、茶道を始める。「裏千家学園茶道専門学校」を卒業し、2009年、横浜関内にて“茶の湯をもっと自由に!もっと愉しく!”というコンセプトの茶道教室「SHUHALLY」を開始。以来、国内外で多数の茶会を開催。異分野とのコラボレーションを行うなど、日本文化の新たな伝統の開拓、発信に努め幅広く活動中。監修の茶室「文彩庵」は、2010年度グッドデザイン賞受賞。

編集後記

千利休が活躍していた、戦国時代。そのころ茶道は、戦や死と隣り合わせのストレスフルな毎日を送る武士たちが、ほっと一息つく貴重な場だったそうです。一方、我々が生きる現代日本はどうでしょうか。戦こそないものの、満員電車の通勤や、インターネットで常時つながることで、いつでもどこでも仕事の即対応が求められてしまったり、戦国時代とは違う種類のストレスに溢れた世界であるように思います。そんな現代日本で「茶道」は、せわしない日常からいっとき離れ、ほっと一息つかせてくれる存在として、戦国時代と変わらずわたしたちに癒やしをもたらしてくれる存在であり続けるのではないでしょうか。
(未来定番研究所 菊田)