2021.05.24

未来定番サロンレポート

Vol.21 参加者みんなで考える、アフターコロナの消費行動とは。

装いも軽くなり始めた2021年4月24日、21回目の「未来定番サロン」が開催されました。未来定番サロンは未来のくらしのヒントやタネを、ゲストと参加者のみなさんが一緒に考え、意見交換する取り組みです。今回は、「未来定番茶会」の第2回目(第1回目は、昨年12月に行われました )の様子をレポートします。

 

「未来定番茶会」とは、今後先鋭化していくであろう価値観や行動パターン、考え方をペルソナ像に落とし込み、そのペルソナを招くことを想定したお茶会。どんなしつらえで、どんな飲み物やお菓子を用意して、どのようにおもてなしをしたら喜んでもらえるだろうとイメージしながら、伝統的な日本のお茶会の「型」に、ペルソナ像を当てはめて未来の人々の価値観を体験します。そしてその体験や対話を通して、未来の価値観にまつわる考えをより具体的にしていくという、実験的なサロンです。

 

今回は、「築100年の古民家で、アフターコロナ時代の価値観を体験する」と題し、1回目同様、現代の「茶の湯」のあり方を探求し続けるアート集団「The TEA-ROOM」のメンバーである松村宗亮さんと、同じく「The TEA-ROOM」に所属する和菓子作家の坂本紫穗さんに企画していただきました。

(撮影:黒川ひろみ)

アフターコロナ時代に生きる
未来のペルソナ像を知る

まずはじめに、「人々の生活スタイルや価値観がアフターコロナの世界ではどのようになるだろうか?」というテーマで、未来定番研究所が独自にリサーチを行い作成したレポートの内容が参加者にシェアされました。コロナ禍によって顕在化した特徴的な事象を挙げながら、人に与える心理的影響、欲求、消費行動などが分析されています。

それをもとに、8人のユニークなペルソナが設定されています。生きている喜びを社会に還元する「21センチュリー・ガール」、意識は高く自己顕示欲は低い「都会脱出!フリーランス成功者」、冒険は頭の中でリアルは着実な生活プランを好む「メリハリ極めたネオ消費者」など、彼らがどんな価値観を持ち、どんな暮らしをしているか、先に挙げた欲求や消費行動を当てはめながら具体化されています。あらゆるペルソナの価値観や欲求を知ることで、参加者も自分自身の5年先の未来の暮らし方について考えるきっかけになりました。

未来のペルソナさんになりきって
おもてなしを体験

次はいよいよ「実験的茶室」空間で、お茶会のワークショップ。茶会というフォーマットを使ってペルソナさんを具現化し、理解を深めていきます。参加者は、ある1人のペルソナをイメージしてしつらえた空間で、ペルソナになりきって茶菓子、お茶の点前を体験しました。

今回の未来定番茶会のお客様となる「未来のペルソナ」は、「愛にあふれるセルフプロデューサー」さん。持ち前のバイタリティで夢や想いを形にしてきた方です。現在は個人経営者として、自身の活動をさまざまなメディアを駆使して発信。地元愛や仲間愛に溢れ、クラウドファンディングや地域イベントにも前のめりで、コロナ禍では近隣の苦しむ個人経営者を巻き込み新たな販路を追求したり、配信の音楽イベントを企画したりと、精力的に活動しています。

 

床の間に飾られたハッピは、ペルソナさんが夏祭りに愛用しているもの。現物を見ると、これを着て仲間たちと盛り上がっている様子がイメージできました。ペルソナさんは、アートや音楽が好きでアートコレクターでもあるので、ハッピの下には、「茶の湯」をテーマにした作品でも知られるNYの現代アーティスト、トム・サックスの「Casio Ceramic Pocket Watch」を。これはカシオの時計を焼き物で包んで固めたもので、ペルソナさんが普段から使っている愛用品でもあります。

この日用意された茶菓子は「谷中エナジーバー」。自宅にある蔵を改装して作ったカフェを営んでいるペルソナさんの、お店で人気のメニューを想定しながら用意しました。「すはま」という大豆の粉と水飴とお砂糖でできた干菓子に、ココアとドライフルーツ、くるみ、プロテインを混ぜたもの。栄養価が高く機能的で、新しい活動に余念のないペルソナさんにぴったりのお菓子でした。

お茶は、有機ほうじ茶豆乳ラテ。こちらもペルソナさんが経営するカフェで人気メニューの1つです。使用したマグカップは、ペルソナさんが属する町内会の記念品である「町内会メンバーの名前入りマグカップ」。作法が厳しいイメージのあるお茶会ですが、松村さんによるユニークな演出に参加者も緊張感がほぐれ、楽しんでいる様子でした。

何を考え、どんな価値観を持っているのか。
ペルソナさんについて、ディスカッション

ペルソナさんのイメージがふくらんだところで、どんな人なのか参加者と一緒に考察していきます。小道具として、ペルソナさんが愛用している手ぬぐいを手にしながら、属性情報や考えていること、見ていること、必要としていることなど参加者で考え、ディスカッションすることで、共通認識を高めます。

参加者からは、
「男性で、36歳くらい。若いときは地元の友達とやんちゃもしていたけど、今は落ち着いて家業を継いでいる」
「困ったら俺のところに来い!と言いそう」
「ずっと地元にいてコミュニティが変わらない」
「地元の仲間とリアルで集まれないことがストレス。そして、コロナで出かけられないから、逆に地元の嫌なところが見えてきてしまう」
「何事にも一体感を必要としている人」
「自分のカフェも大変だけど、みんなも大変だから弱みを見せられない。リーダーシップが強いが、実は孤独な人でもある」
といったようなイメージが挙がりました。

 

当初想定していたイメージに、参加者それぞれの意見が重なっていくことで、どんどんペルソナの人物像が立体的になりました。なかには、「いけすかない奴かなと思っていたけど(笑)、みんなの意見を聞いていると、実は悩みもあっていい奴なのかも」と、見え方が変わった方もいたようです。

もし100万円が手に入ったら?
消費行動から、よりペルソナを深堀り

続いて、ペルソナ像をより深掘りすべく個人ワークの時間。「ペルソナさんに臨時収入100万円が入りました。ペルソナさんは、その100万円をどのように使うでしょうか?」というお題に対して、個々で想像を巡らせました。

 

「100万円全額使って、仲間みんなにおごる。お店も地元の馴染みのお店を選ぶだろう」
「20万円を自分のために、ストレス発散のために浪費する。でも地元への愛が強いので、人を集めたいけど難しい。そこで将来コロナが収束してどんちゃん騒ぎができるように、庭に桜の木を植えて、桜を見る会を開催する。盛り上がるものを残したいという想いで桜の木を植えることに使いそう」
「10万円は自分で使って、90万円は他者への還元。商売をしている人は自分以外もしんどいと思うから、地元の友人が営む雑貨屋で茶器を揃えたり、ラーメン屋で冷凍餃子を取り寄せたり。自粛疲れに耐えきれず、広い家に人を呼んで、パーティーをしちゃうんじゃないかな」
「近所のお店で買い物をして、まわりに還元する身近な使い方をしたり、自分のお店をカフェだけじゃなく、イベントスペースやワーキングスペースとしてプランを考えて、設備に投資しそう。みんなに協力してもらって、商店街を盛り上げるような活動を始めるのではと思います。広告費や好感・共感を集めるようなことに消費するのでは」

 

参加者それぞれ違う視点の意見が挙がり、ついには見えない相手に感情移入してしまうなど、みんなで対話することで空想が深まっていくおもしろい時間になりました。

未来定番茶会を終えて。

イベント終了後、松村さんと坂本さんのお2人にさらに未来の暮らし方についてお話を伺いました。

 

F.I.N.編集部:1回目に引き続き、お茶会を企画していかがでしたか?

 

松村宗亮さん(以下、松村さん):前回は初めてだったこともあって、アイディアが出しやすかったけれど、今回は、私たちもペルソナにどう近づいていくかということに、苦しみというか難しさもありました。今回はあえて前もって設定を決めすぎずに“空白”を設けるということにシフトしたのも、発見がたくさんあっていい時間が作れたかなと思っています。お茶会ならではのおもてなしの空間で、アイディアを出しやすい空気感が生まれました。

 

坂本紫穗さん(以下、坂本さん):お茶会の力は、とても強いなと改めて感じました。みなさんお茶とお菓子をいただくと、和んだ様子でしたよね。ペルソナさんに関して、具体的にイメージできなくても、「あの人っぽいのかな」とどこか身近に近しい人を考えているかもしれないですよね。妄想がどんどん膨らんでいくし、結構正解に近づいているんじゃないかなと思いました。

 

F.I.N.編集部:「100万円をもらったら」という消費行動を考えてみるのは、とてもおもしろかったですね。

 

坂本さん:さまざまな意見があって、おもしろいなというのが率直な意見です。人の意見を聞くと考えが分岐するというより、どんどん深まる気がしました。

 

松村さん:お金の使い方は、人によっては全部使うという人もいれば、5万円・10万円と細かく使い道を分ける人もいて。消費行動は、その人の性格が端的に現れていたと思います。本人の価値観も反映されていたのではないでしょうか。とても興味深いですよね。

 

F.I.N.編集部:お2人は、100万円をもらったら何に使いますか?

坂本さん:最近、ネパールの貧困地域で暮らす子ども達へ教育支援をする里親のようなボランティアを始めたんです。寄付をした子どもからお手紙が届いて、とても嬉しくなって。100万円もらえたとしたら、もう数人増やしてもいいかな。ぽんっともらったお金だと、そういったことにも使いやすいなと思いました。自分で稼いで、いろいろと調整して捻出するとなると迷ってしまうけれど、予期せずもらったお金だと、出しやすいかもしれないですね。自分へのちょっとしたご褒美と、人のためにと、うまくバランスを取りたいです。

 

松村さん:なるほど。私は人のために使うっていう方法論を今持っていなかったな(笑)。私は、お気に入りの作家さんに100万円で大きなお茶碗を作ってもらいたいですね。お正月などでよく目にする大きな筆を使った書道のパフォーマンスがあると思いますが、そういった場面でお点前を披露する機会があります。でもお茶になると茶せんも茶器も小さくて、一気に勢いがなくなるのが悲しくて。大きな茶せんは購入したので、あとは大きな器。コロナが収束して平和になったら、それでお茶を点てて、みんなでシェアできたらいいなと思っています。

 

F.I.N.編集部:この未来定番茶会では、参加者にどんなことを持ち帰っていただきたいと思いますか?

 

坂本さん:“こんな考えもありえるな”という感覚は持ち帰ってもらいたいですね。全く非現実的なイメージではなく、自分の日々の生活の楽しみに繋げていってもらえたらいいですよね。

 

松村さん:いろんなペルソナ像が出てきたけど、自分に似ている部分もあるのではと思います。考察することで自分のキャラクターを客観視することもできますよね。消費活動に関しても、改めてどうしてこれを買うのだろうと考えさせられました。この茶会を通して、自分自身のことを知り、消費のこと、つまり社会のことも知ることができる。こんな風に考えながら、人の意見を聞く機会があると、何かあった時に違った視点で考えるという回路ができて、柔軟になれるような気がします。

 

1人の人物を深く掘り下げて想像し、それを共有することで、自分1人では考えつかない意外な側面に気づくきっかけにもなったようです。

Profile

松村宗亮さん

The TEA-ROOM メンバー/裏千家茶道准教授/茶道教室SHUHALLY代表/へうげもの筆頭茶道。学生時代のヨーロッパ放浪中に日本人でありながら日本文化を知らないことに気づき、帰国後に茶道を開始。「SHUHALLYプロジェクト」として ”茶の湯をもっと自由に、もっと楽しく” をモットーに茶道教室やお茶会を主宰。茶の湯の基本を守りつつ現代に合った創意工夫を加えた独自のスタイルを構築し、これまでに海外10カ国、首相公邸などから招かれ多数の茶会をプロデュース。コンテンポラリーアートや舞踏、ヒューマンビートボックス、漫画等、他ジャンルとのコラボレーションも積極的におこなう。裏千家十六代家元坐忘斎に命名されたオリジナル茶室「文彩庵」はグッドデザイン賞を受賞。NHK 助けて!きわめびと茶道担当。

Profile

坂本紫穗さん

The TEA-ROOM メンバー/和菓子作家。オーダーメードの和菓子を作品として制作・監修。日本国内および海外で和菓子教室やワークショップ・展示を行う。「印象を和菓子に」をコンセプトに、日々のあらゆる印象を和菓子で表現し続ける。

https://shiwon.jp

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