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2022.01.14

未来定番サロンレポート

Vol.22 ピクセルアートの可能性。いま、低解像度アートが新しい。

年末に向けて街が活気づく2021年12月4日、22回目の「未来定番サロン」が東京・谷中で開催されました。未来定番サロンは未来のくらしのヒントやタネを、ゲストと参加者のみなさんが一緒に考え、意見交換する取り組みです。

今回は、「ピクセルアートは現代の浮世絵!?」と題し、近年世界でも注目が集まっているピクセルアートについて、渋谷を舞台にした芸術祭〈SHIBUYA PIXEL ART〉発起人である坂口元邦さんと、ドット絵をモチーフとした彫刻作品を制作する現代アーティスト・zerotaroさんにお話を伺いました。

(文:大芦実穂/写真:岡庭璃子)

ピクセルアートまたはドット絵とは?

そもそも「ピクセルアート」や「ドット絵」とは何であるか、というところから今日のお話はスタート。坂口さんは、さまざまな作品をスライドで紹介しながら、「かつてゲームやコンピューターの中で使われていた低解像度の描写です。『スペースインベーダー』や『マリオブラザーズ』を想像してもらうといいかもしれません。デジタル上で制作することも特徴で、『描く』ではなく『打つ』と言います」と説明。zerotaroさんは、「ピクセルアートは最低3色あればできます。例えばマリオは3色でできています。ここにあるダビデ象のように、7色くらい使うとより深みが出ますよ」と制作面からも教えてくれました。

ピクセルアートのいいところは? と伺うと、「想像力が膨らむところかなと。低解像度ゆえの錯覚を利用し、脳の想像力で補う。そこが楽しい」とzerotaroさん。一方、坂口さんは、「ドットを打つことによってメディテーション(瞑想)効果があると言われています。アイロンビーズもデンマークでは作業療法として使われているそうなんですが、色彩を分けたり、細かいものを一個一個置いたりすることが、精神的安定を作り、脳にも刺激を与えられると。作り手がリラックスできるというのはいいことなんじゃないでしょうか」と解説しました。

『Become Future Classic』“未来のクラシックになる” 展

イベント当日は、未来定番研究所オフィスにてzerotaroさんの個展「Become Future Classic」も開催中でした(2021年12月18日で終了)。西洋の有名彫刻作品を、デジタルアート×木製彫刻で再現した作品や、狐面や灯篭を模したLEDで光る立体作品などを展示。イベント中も個展を見にきた方で賑わっていました。

未来定番研究所の古民家オフィスから覗く、zerotaroさんの作品〈David Head〉。

上と同じ作品。近くで見るとこんなに複雑!

近くで見るよりも、遠くから見た方が物体の輪郭がわかりやすいと、来場された方は近づいたり離れたりしながら作品を楽しんでいました。オンラインでイベントに参加された方からは、「画面越しでは立体的に見える!」といったコメントも。

今回の個展のために制作された狐面。LEDで光って色が変わる。

zerotaroさんは大学で彫刻を学び、卒業後よりフィジカルなピクセルアートの制作を開始。写真をまずはドット絵に落とし込み、さらに彫刻として表現する技法をとっています。今回展示されているダビデ像や人体模型の作品などは、バラバラの木材を1ピクセルに見立て、一つひとつ組み合わせながら大きな作品に。「実はやり方はなんでもよくて、例えば下絵をまずは3Dプリンタなどで立体にしてしまってから、逆にピクセルにしていくのもありなのでは」とアドバイスしてくれました。

築100 年以上の古民家にも意外にマッチ。

毎年600点以上が集まる芸術祭。

「SHIBUYA PIXEL ART」。

続いて、坂口さんが発起人で実行委員長を務めるコンテスト「SHIBUYA PIXEL ART(シブヤピクセルアート)」について紹介していきます。2017年にスタートした芸術祭で、一般応募作品から最優秀賞を決定するコンテスト。渋谷の街全体を使用した展示やトークイベントの開催など、“渋谷から勇気を届ける”ことを重要なテーマとしています。「コンテストに応募してくれる方は、8歳から80歳くらいまでと幅広いんですよ」と坂口さん。

写真向かって左がzerotaroさん。右は坂口元邦さん。

しかも第5回目の開催となった2021年は、国民的音楽デュオ・ゆずの最新アルバム『YUZUTOWN』とのコラボレーションが実現。2021年5月29日と6月5日の2日間にわたり開催されたゆずのオンラインライブイベントの一環として、アルバムに合わせて制作したビジュアルやこれまでのゆずの楽曲をモチーフとした作品などを展示しました。イベント会期中にはゆずの北川さんも展示会場に足を運んでくださったとか。

ドット絵は現代の浮世絵?

芸能と芸術がクロスオーバー。

「ドット絵は現代の浮世絵なんじゃないか?」と話すのは、坂口さん。「浮世絵とは、江戸時代に描かれた風俗画ですが、当時は“アート”としての概念もなかったと思うんです。よって、『これが浮世絵だ!』という定義もそこまでなかったのかなと。浮世絵とドット絵に絵としての類似性こそありませんが、浮世絵も歌舞伎役者の似顔絵などを描いていましたし、大衆文化という意味ではゲームから生まれたドット絵と重なるところがあります」。

zerotaroさんも、「これまで国内の彫刻は、西洋的なスタイルを踏襲することが一般的で、西洋に追いつこう、追い抜こうとしてやってきたんですが、これからはもっと日本らしい“大衆アート”というものを発信していってもよいのでは」と話します。浮世絵が世界で認められたように、ピクセルアートも日本らしいアートのひとつとして認知されていくかもしれません。

NFTプラットフォームも公開。

低解像度に価値を見出す。

さらに、坂口さん率いるシブヤピクセルアート実行委員会は、2021年12月22日に日本初となるピクセルアートに特化したNFTプラットフォーム「the PIXEL」をリリースしました。“究極の1点”をコンセプトとし、低解像度こその価値を見出すことを目的としています。「これからどんどん仮想空間の高解像度化が進んでいくし、人間の視覚や聴覚体験がもっともっと上がっていくと思っているんですが、その空間の情報量があまりに多すぎて疲れるというのが僕の中にもあって。もうちょっと世の中の解像度を下げてもいいかなと」。

ピクセルアートは5年後どうなってる?

イベントの最後に、坂口さんとzerotaroさんそれぞれに「ピクセルアートの5年後の未来は?」と伺いました。

 

「通信技術がどんどん発達して、やはりメディアアートの要素が強いものの方が、今後伸びていくのではないかと思います。その中でも、音声から映像の時代に変化した様に、今後は平面から立体(3D)であることがより重宝されるようになると予想しています。その需要に付随して、もっとみんなが気軽に『彫刻しようよ!』と思ってくれたらいいですね(笑)」(zerotaroさん)

 

「これから確実にメタバース(3D)の時代になるので、先ほどもお話ししましたが、その高解像度の世界を楽しむためにも、逆に解像度の低いものの価値が見直されていくと思っています。現実世界で五感をフルに活用し、さまざまことを感じ取っていくことで、ピクセルでできたシンプルな世界をより楽しむことができるのではないでしょうか(坂口さん)

 

浮世絵からNFTまで、時代を大きく跨いだアートについてのお話も無事終了。すっかり陽が落ちても、まだまだ個展を見に訪れる人たちが。イベントを終えて出てきたお二人に、あれこれ気になったことを質問されていました。

今後も未来定番研究所では、さまざまな視点で「5年先の定番」を探っていきます。

Profile

坂口元邦さん

SHIBUYA PIXEL ART実行委員会 発起人/PIXEL×PIXELディレクター/スリーシックスティ・チャネル株式会社 代表取締役

18歳で渡米し、大学では美術・建築を専攻する傍ら、空間アーティストとして活動。帰国後は、広告業界で企業のマーケティングおよびプロモーション活動を支援。ゲーム文化から発展した「ピクセルアート」に魅了され、2017年に「SHIBUYA PIXEL ART」を渋谷で立ち上げ、ピクセルアーティストの発掘・育成・支援をライフワークとしながら、「現代の浮世絵」としての「ピクセルアート」の保管、研究、発展を行う「ピクセルアートミュージアム」を渋谷に構想する。

https://www.instagram.com/motosakaguchi/

 

Profile

zerotaroさん

現代アーティスト/彫刻家 愛知県立芸術大学大学院博士課程前期美術学部彫刻専攻卒業

業「ピクセルアート」「ドット絵」と呼ばれるコンピュータゲーム黎明期のデジタルグラフィック表現を用いた彫刻作品を制作。ピクセルアートを立体的にすることによって、情報化社会における、新たな現実と仮想の関係性を表現する。

https://www.instagram.com/zerotaro/

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