2022.04.25

日本のしきたり新・定番。

第1回| ご祝儀袋から彫刻アート作品へ。水引ユニット〈tietie kanazawa〉さん。

日本には、古くから受け継がれてきた「しきたり」が多く存在します。「F.I.N.」では、そうした伝統を未来に繋ぐべき文化と捉え、各界で活躍している方々にお話を伺いながら、未来のしきたりの文化の在り方を探っていきます。

 

第1回目は、ご祝儀袋などのあしらいに使われる、飾り紐「水引」を取り上げます。お招きしたのは、金沢を拠点に活動されている水引ユニットの「tietie kanazawa」のmayukoさんとhonokaさん。伝統工芸でもある水引を使い、普段使いもできるアクセサリーやヘッドドレス、壁飾り等も制作しているお二人に、5年先の水引がどのように進化していくと思うかを聞きました。

 

(文:大芦実穂/イラスト:香取亜美)

水引とは、こよりのようによった和紙に糊を引き、そのうえから絹糸を巻き付けたものです。ご祝儀袋などで一度は目にしたことがある方も多いかもしれません。私たちは金沢出身なのですが、水引細工が伝統工芸品に認定されているほか、この地域では結納の文化が色濃く残っていて、結納品には亀や鶴をかたどった水引をかけるのが一般的。それゆえ、まちにも水引を扱うお店が多くあります。一方、生産地は長野県の飯田市が有名です。金沢でも作っているところはあるのですが、飯田のほうが規模も大きく、色のバリエーションも豊富。この飯田の水引を見て、「こんなにカラフルでポップだったんだ!これで何かを作りたい!」と感じたことが、tietie kanazawaをはじめるきっかけにもなったほど。

 

水引の起源には諸説ありますが、私たちがいつもワークショップで説明しているのは3つあって、飛鳥時代に遣隋使として派遣された小野妹子が、日本へ持ち帰った献上品に紅白に染められた麻紐が結ばれていたことを発端とする説がまずひとつ。それから、日明貿易が盛んになった室町時代に、輸入品に紅白の麻紐が結ばれていたことで、日本側がこれを「贈呈品への慣習」と勘違いし、以後贈呈品には紅白の紐をかけるようになったという説。また、航海の無事を祈るお守りとして付けられた説です。どれにも共通しているのが、なにかを贈るときに結ばれたものである、という点です。

 

現代の日本では、やはりご祝儀袋や不祝儀袋に使われるのが一般的で、結び方や使う色、本数などにも細かいルールがあります。私たちは、よりカジュアルに水引に触れてほしいと思い、普段から身に付けられるアクセサリーや、ヘッドドレスなどを制作しています。ご祝儀袋も作っていますが、ちょっと変わったモチーフなどを受注制作しています。例えば、ビール好きな方には、ビールをかたどったものを中央にあしらったり。贈り物には、「相手によろこんでほしい」という気持ちが込められているもの。時代は変われど、起源に通ずるところがありますよね。

 

また、最近では、子どもたちと一緒に、キャンバスに穴を開けて、水引を通した作品を作る活動もしていて、アートとしても表現していけるのでは、と考えています。5年後、10年後の水引について考えたとき、家に絵を飾るのと同じ感覚で、壁に水引作品を飾ってもらえたらうれしいです。いま、一本の水引の長さは90cmが一般的なのですが、数mの長い水引をつくっているところもあるので、それを使って、彫刻作品のような大きなオブジェも制作していきたいです。公共施設などに、私たちの巨大な水引作品が設置されたらワクワクしますね。水引の魅力は、なんといっても自分の手だけを使って作れるところ。結んだりくぐらせたり、つくれるかたちは無限大です。伝統や文化を重んじつつも、時代によってそのかたちを変えていくのがいいと思います。

Profile

tietie kanazawa

金沢を拠点に活動する、mayukoとhonokaによる水引ユニット。「水引をもっと気軽にポップに身につけてほしい」との思いから、カラフルな水引を使ったアクセサリーを一点一点手作りで制作。また、最近では金沢に観光に来た家族や、オンラインで勉強する小学生向けにワークショップも開催している。

https://www.instagram.com/tietie8008/

【編集後記】

水引の起源が飛鳥時代や室町時代にあると教えていただき、その気が遠くなるほどの年月のな かで水引が今日まで受け継がれてきた事実に改めて驚きました。これは、水引が担い続けてい る役割がわたしたち生活者にとっていかに重要であるかを物語っているとも言えます。相手へ 寄り添う気持ちや人とのつながりを表す水引でアートを制作されるtietie kanazawaさんの今後のご活動が、とても楽しみです。

(未来定番研究所 中島)

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