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2022.08.23
日本のしきたり新・定番。<全10回>
日本には、古くから受け継がれてきた「しきたり」が多く存在します。F.I.N.では、そうした伝統を未来に繋ぐべき文化と捉え、各界で活躍している方々にお話を伺いながら、未来のしきたりの文化の在り方を探っていきます。
第5回目は、満60歳を祝う「還暦」を筆頭に、100歳まで続く「長寿祝い」を取り上げます。5年後、10年後の未来、長寿祝いはどのように変化していくのでしょうか。オリジナルの絵本で遺言を伝えるサービス〈えころ〉を運営する〈えほん遺言司法書士事務所〉代表で司法書士の水上和巳(みずかみ・かずみ)さんに話を伺いました。
(文:大芦実穂/イラスト:タカヤ ユリエ)
長寿祝いのなかでもよく知られているのは「還暦」ですが、ほかにもどのような祝いがあるのか、以下にまとめてみました。
・61歳…還暦(かんれき) 干支が60年で一巡し、もとの暦に還(かえ)るという意味。
・70歳…古稀(こき) 中国の詩人、杜甫の「人生七十古来まれなり」に由来。
・77歳…喜寿(きじゅ) 「喜」の草書体が七を三つ重ねた形になり、「七十七」と読めるため。
・80歳…傘寿(さんじゅ) 傘の略字「仐」が、「八」「十」と読めるため。
・88歳…米寿(べいじゅ) 「米」を分解すると「八」「十」「八」となるため。
・90歳…卒寿(そつじゅ) 卒の字の略字「卆」が「九」「十」と読めるため。
・99歳…白寿(はくじゅ) 「百」から「一」を引くと「白」の文字になることから。
・100歳…紀寿(きじゅ) 百年=1世紀を意味する「紀」、百寿(ももじゅ)ともいう。
・120歳…大還暦(だいかんれき) 還暦の2倍、昔寿(せきじゅ)ともいう。
(年齢は数え年)
参照: 『図解 日本人なら知っておきたい しきたり大全 』(講談社の実用BOOK)
僕はいま32歳ですが、僕らの年代よりも祖父母の年代のほうが、お金に余裕があることも多いですよね。ギフトを考えるときに、双方の資産背景というのはひとつ参考にすべきポイントだと思います。例えば、金銭的に余裕がない30代の孫が、80過ぎの祖父母に高級時計をプレゼントするって、ちょっと無理しすぎじゃないかなと思います。もらう側も気まずいのではないでしょうか。それならば、あげる人にしか表現できないものがいいと思っています。僕の場合は、家族が写っている写真をフォトブックにして渡したりしています。
長寿祝い、新・定番ギフト。
自分史絵本
僕たちは「えほん遺言」という、自分史と遺言をセットにしたオリジナル絵本制作サービスを展開していますが、遺言書を除いた絵本の制作も可能です。絵本の制作は、まずはプレゼントをされる側の方に、人生グラフを書いてもらうところから始めます。自分の人生に向き合うことになるので、昔のことや印象に残っている出来事などを思い返すきっかけにもなります。その人生グラフをもとにストーリーを編集し、絵本作家さんにイラストを描き下ろしてもらいます。世界にたったひとつの絵本は、本人だけでなく、親族の宝物になること間違いありません。
家系図ギフト
司法書士である僕らができることとして、家系図の制作があります。すでに家系図をつくるサービスを行っているところもありますが、戸籍を辿ると、明治時代から現代までの先祖について知ることができます。それらを家系図にして、額装したり、本のように装丁したりして、プレゼントするのはいかがでしょうか。自分のルーツが知れるというのは、誰にとっても嬉しいことだと思います。
人生ドラマ
家系図をもとにして、人生の変遷がわかるドラマを制作してプレゼントするのもおもしろいと思います。インタビューをもとにしたドキュメンタリー動画なら、対象となる高齢者の方に話を聞くことになりますが、その際、いまはもう亡くなっている先祖の話まで聞けるかもしれません。完成したドラマなりドキュメンタリー動画を、家族みんなで観賞するのも楽しそうですよね。もちろん出演者は家族や友人などがいいと思います。
えほん遺言でお客様と関わっていると、「自分の人生は、大したものじゃないから」とおっしゃる方がいますが、話を聞いていくと、つまらない人生の方はひとりもいません。最初は乗り気じゃない方も、「人生グラフ」を書いているうちに、書く手が止まらなくなることも。自分のことを話すって、本来楽しいことなんですよね。それに、数十年後の未来、子どもが本棚で絵本を見つけて読んでみたら、自分の祖父母の話だった!なんてこともあるかもしれません。家宝として受け継がれていく、夢のようなギフトだと思います。
水上和巳
えほん遺言司法書士事務所 代表司法書士。2020年、姉の瞳さんと一緒に絵本遺言サービス〈えころ〉をスタート。絵本の力によって、遺言書文化を活性化させようと奮闘中。簡単な冊子の作成ができる「自分史絵本ワークショップ」も開催。
【編集後記】
令和を生きるわたしたちにも還暦を筆頭になじみのある「長寿祝い」ですが、日本での起源は奈良時代に聖武天皇が「初老の賀」を祝ったことに遡ると言われています。
平均寿命がいまよりもずっと短かった1300年以上も前から受け継がれてきたこの文化の現代、そして未来へのあり方として、その人の人生を尊重し、次の時代を生きる人に伝え残す、といったヒントを見つけることができました。
(未来定番研究所 中島)
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第5回| 長寿祝いには「自分史」を。えほん遺言・水上和巳さん。
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