2022.06.21

目利きたちと考える、日本のしきたり新・定番。

第3回| 結納こそ、両親に感謝を伝える場。婚礼文化研究家・鈴木一彌さん。

日本には、古くから受け継がれてきた「しきたり」が多く存在します。「F.I.N.」では、そうした伝統を未来に繋ぐべき文化と捉え、各界で活躍している方々にお話を伺いながら、未来のしきたりの文化の在り方を探っていきます。

 

第3回目にピックアップするのは、挙式の前に行う儀式「結納」。結婚式すら簡略化される昨今、結納を行わない方も増えています。結納を行う意義や、これからの儀礼がどうあるべきか。婚礼文化研究家でウエディングプランナーでもある鈴木一彌(すずき・ひとみ)さんに、お話を伺いました。

 

(文:大芦実穂/イラスト:髙安恭ノ介)

結納は、個と個ではなく、家と家とが結ばれる「約束」です。一生の節目に行う人生儀礼でもある「婚姻儀礼」とは、なにも挙式披露宴だけではありません。仮約束を取り付ける「決め酒」、結婚の約束をする「結納」、新郎新婦が結ばれる「挙式」とお披露目の「披露宴」の3つがそろってはじめて儀礼が完成します。結納の儀式といっても地域によってさまざまで、東と西では大きな違いがあるものの、一般的な儀礼は男性側が女性側に、「お嫁にきてくれてありがとうございます。これで身支度を整えてきてください」と結納金、結納品を送り、女性は「確かに受け取りました」と受書と袴料(はかまりょう)として、いただいた金額の5割程度をお返しするというもの。結納品には地域ごとに違いがありますが、現代では結納金と結納品を贈るのが主流です。

 

ウエディングプランナーとして、これまで結納の介添え(仲人)も務めてきましたが、2000年代に入ってからは結納を行うご家族が減ってきました。意味を考えずにメリットやデメリットで判断する方が増えたことが原因のひとつではないかと考えています。お金がかかる、結納品は保管に困るなどデメリットばかりに目がいってしまいますが、結納を是非お考えくださいませとお伝えしています。

 

結納のあとに挙式披露宴を行いますが、結納をしておくと、どこにお金をかけるのかなど両家の価値観がわかるほかに、両家がすでに顔合わせもしていることで、結婚式の決め事がスムーズに進むことを多くお見受けします。すると結果的に、挙式を準備する新郎新婦の負担が減るという点もあります。

 

今後も結納という儀式が存続していくためには、何が必要なのでしょうか。まず、結納はかしこまっただけのイメージがありますが、衣装を着たり、ヘアメイクをしたり、本質を変えずに自由な部分があっても良いのではないでしょうか。よく「もう一回結婚式をやりたい!」と言う方がいらっしゃいます。でしたらぜひ、結納を挙式披露宴のように扱う“プレ挙式披露宴”を行ってもいいと思います。それに、披露宴というのは、社会から認めてもらうための儀式。そのような公の場で両親にお礼を言ったり、大勢の前で泣いたりするのは本来の趣旨からは少しずれてしまっています。私が推奨したいのは、結納の場でこそ、お互い自分の両親に育ててくれた感謝を伝え、お相手のご両親に「今後はよろしくお願いします」と正式にお願いするというもの。その場には家族しかいませんので、絆も深まると思います。

 

それから、結納品の保管が難しいという意見。実は結納品にはたくさんの活かし方があります。結納品を挙式の際に活かしたり、リメイクをして結婚記念日には出してきて飾るなど、もっと積極的に活用していくべきです。例えば、挙式での指輪交換で指輪を置いておく「リングピロー」。これは、リングのためだけのまくらではありません。赤ちゃんが生まれたとき、その赤ちゃんのまくらとしても使うため「ピロー」という名前がついています。

 

また、結納品にはたくさんの上質な紙や水引が使われますが、再利用してもいいですし、あしらいに水引を使うこともできます。最近は指輪を希望されない方もいらっしゃるので、水引で薬指を結び合うのもロマンチックだと思います。コロナ禍で結婚式を日延べやキャンセルされた方も多いでしょう。こんなときだからこそ、結納を行ってほしいです。家族間のみの少人数でできますし、結納から挙式まで時間が空いても問題ありません。事前に約束を結ぶことで、家族としての連帯感が生まれると思います。

 

Profile

鈴木一彌

婚礼文化研究家/株式会社Ginza Fiore代表取締役/日本ブライダルスペシャリスト協会代表 司会、デザイン、アテンダー、プランナー等経験し、ブライダル業界に38年以上在籍。現在も國學院大学大学院にて、民俗学から婚礼文化を研究中。ブライダル専門家として、数多くの雑誌や書籍、テレビ番組等の指導や監修を務める。 https://ameblo.jp/ginza-fiore

【編集後記】

「コロナで結婚式が開きにくい時期だからこそ、プレ結婚式として結納をしたらいいのに」という鈴木さんのご提案で、自分が結納を”儀式の型”としか認識していなかったと気づくことができました。

家族と過ごす時間が今一度見直されるようになってきています。両家で思いっきりドレスアップしたり、「#結納」をSNSに投稿したり、2つのお家が家族になる華やかな儀式を楽しむ未来が想像でき、とてもワクワクしました。

(未来定番研究所 中島)

目利きたちと考える、日本のしきたり新・定番。

第3回| 結納こそ、両親に感謝を伝える場。婚礼文化研究家・鈴木一彌さん。