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2018.08.30
思いを伝える、贈り物の選び方。<全8回>
「お中元」や「お歳暮」といった贈り物はあまりしない方も増えつつありますが、その伝統は今なお続く大切な文化です。一方で、手土産やお土産など、日常の何気ないシーンに贈る気軽なプレゼントの形「カジュアルギフト」の需要が高まっているのも事実。実際に人々は、どんな場面で、どんな想いからものを選んでいるのでしょうか?この特集では、これまで7回にわたって、自身の活動から人々に刺激や感動を与えている方たちへ聞き取り調査をしてきました。
最終回の今回は、未来の贈り物選びに注目。人の感性を学習するAI・SENSYは、私たちの贈り物選びをどんなふうに変えていくのか、SENSY社代表の渡辺祐樹さんにお話を伺いました。
渡辺祐樹/SENSY株式会社 代表
慶應義塾大学理工学部卒業。人工知能アルゴリズム研究に従事した大学4年時に起業を志し、起業家育成制度を利用して株式会社フォーバルに入社。初年度にトップセールスを獲得する。事業の立ち上げを学ぶために転じたIBMビジネスコンサルティングサービス株式会社でアパレル業界の膨大な在庫事情を知り、ファッションアプリ『SENSY』につながるビジネスの種を得る。在職中には公認会計士資格も取得。イーソリューションズ株式会社で事業プロデュースを学んだのち、2011年にカラフル・ボード株式会社(現:SENSY株式会社)を創設した。
AIと人の掛け合わせで、贈り物文化をもっと豊かに。
「相手のことを深く考え、その人にぴったりの贈り物を選ぶのはなかなか難しいですよね。そうした中、デジタルやAIの技術は、相手のライフスタイルや嗜好性に合わせた贈り物選びに貢献していけると思います。
私たちが研究を進めているAI・SENSYは、人の「感性=センス」を学習するパーソナル人工知能です。これは、人が「いつ、どこで、誰が、何を、どうやってしたか」という4W1H(When、Where、Who、What、How)の情報を入力することで、「Why=なぜその人がその行動をしたのか」を解析できるもので、この技術を活用して、企業向け、消費者向けのサービスとしてすでに実用化しています。例えば、アパレル企業向けの場合、企業のその先に100万人の顧客がいるとしたら、その100万人に一人一台のAIを作ります。それぞれのAIに、属性や購買履歴、ECサイトであれば閲覧状況、お気に入りのラインナップ、または来店やアクセスのタイミング、天気など様々な情報を学習させていくことで、企業側は、次にその人がいつどんな服を買うか、予測を立てることができるようになり、”one to oneマーケティング”が可能になるんです。
贈り物選びへの活用としては、今、コンシェルジュが贈り物選びをサポートするサービスを提供している企業と組んで、検討を進めているところです。贈り物選びに頭を悩ませる人は多いので、この企業が提供するサービスは多くの方に支持されているのですが、人手が必要なため、どうしてもコストがかかる。そのコスト低減をAIによってサポートができないかというのがこのプロジェクトなんです。具体的には、担当コンシェルジュのセンスと、贈る相手の情報を学習したAIが、商品を提案するというもの。コンシェルジュのセンスをデジタル化することで、多くのお客さんがセンス良く、また相手にあった贈り物選びができるということなんです。これを応用すれば、センスが良い著名人の分身をたくさん作ることもできるかもしれません。
これから私たちが目指しているのは、一人が一台、SENSYを持つ社会を作ること。SENSYを世の中のインフラ化することで、AIがその人のライフスタイル周り全般をサポートするような未来を築くことを目標にしています。いずれは、贈る相手のAIと自分のAIを会話させて、より精緻な贈り物のチョイスができるようになるかもしれません。自分では気づかないような、意外なものと出会える場面が増えて、私たちの暮らしはもっと豊かになるんじゃないでしょうか。
とはいえ、AIが出した答えを最終的にどう使うかは、その人次第。AIが選んだものの中から、最後は相手のことを考えて自らチョイスするとか、AIが選んだものなんだけれど、そこにメッセージを添えるとか、アナログな心遣いも大切だと思います。人とAIの掛け算によって、良い世の中を作っていくということが、私たちの考えていること。AIの知恵を借りつつ、思いの伝え方は人それぞれ工夫することによって、贈り物はお互いの仲を、一歩も二歩も深めてくれるより豊かなものになるのではないでしょうか」
編集後記
百貨店が得意とする「贈りもの」の世界。いまどきの贈りもの上手な人たちは、どんな風にその世界を楽しんでいるのかを探りたいということでこの企画は始まりました。
インタビューにうかがったのは、本当のギフトのコンシェルジュから、感性豊かなクリエイター、そしてAIによる未来のギフト選びを創り出しているといった方々。どの方も、その選び方は自分らしさとその選択眼が光りながら、心が感じられるものでした。
中でも印象的だったのは、若き才能溢れるアーティストの清水文太さんの「ギフトは贈る側のエゴでもある」というコメント。ギフト迷子になりかけた私に光明を差してくれました。ギフトは贈られる相手だけでなく、贈る側もしあわせになるための行為。もしかしたら贈る側のほうが断然楽しいのかも。それならば、改まった場のもの以外はあまり悩みすぎずにどんどん楽しんだものが勝ち。プチプライスのギフトが人気というのも、そんないまの気分を察知した人たちが負担を増やさず楽しみたいということで先鞭を切っているようにも思えました。
贈り手側が幸せに、そしてお互いのコミュニケーションがより豊かになる気軽なギフトの提案、今後もどんどん増やしていきたいと思います。
(未来定番研究所 前川)
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