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2018.12.26

未来定番サロンレポート

第5回| 自分の価値基準を見つめ直す「NO PROBLEM」という考え方。

年の瀬も迫る12月1日。東京・谷中にて5回目の「未来定番サロン」が開催されました。未来定番サロンは、未来のくらしのヒントやタネを、ゲストと、参加者の皆さんと一緒に考え、意見交換する取り組みです。今回は、VISION GLASSの輸入・販売をされる小沢朋子さん、國府田典明さんと、バイヤーの山田遊さんをゲストにお招きし、「NO PROBLEM品」についてのお話と、自分の価値基準を知るワークショップを開催しました。

(撮影:河内彩)

今回の未来定番サロンは、「NO PROBLEM」という考え方を軸にお話が進みます。ものをつくる上で避けては通れないB品を、「不良品」ではなく「NO PROBLEM品(=問題なし)」として捉えてみようという考え方です。これは、インドの理化学ガラスメーカー、BOROSIL社の製品「VISION GLASS」を輸入・販売する小沢さんと國府田さんが続けてきた活動のひとつ。サロン直前の3人にお話を伺いました。

F.I.N.編集部

今日は「NO PROBLEM」という考え方についてお話しいただきます。お二人がVISION GLASSと出会ったのはいつ頃ですか?

國府田さん

夫婦でインドに旅行に行った時でした。あるカフェに入って、そこで使われていたこのグラスに感動して、お土産で買って帰りました。帰国後もしばらく使っていて、やはりこのシンプルなデザインと、直火にも使えるという耐熱性が素晴らしく、これからもずっと使い続けたいと思ったんです。色々調べてみたのですが、日本で輸入しているところがない。だったら思い切って自分たちで輸入してみようと思い立ち、仕事として始めたのが2013年でした。

F.I.N.編集部

そんな素晴らしいグラスですが、やはりインドと日本では、製品の基準に差があったということでしょうか?

小沢さん

そうですね。輸入してみて気づいたのは、インドのメーカーからは良品として届いたものでも、日本で売るという視点で検品してみると、ちょっとこれは出せないな……というものが多かったんです。

山田さん

このグラスを通してインドとの文化交流をしているような感じですね。ちなみにB品率ってどれくらいだったんですか?

小沢さん

最初は5割を超えていたと思います。だから倉庫にもB品として弾いたものが大量に……。私たちは、家や事務所でそのB品のグラスを使っていたのですが、何の問題もないんです。メーカーともたくさん交渉して、クオリティーをあげる努力をしてくれているのは感じていたので、こちらとしてもなにかしなければ。持続的に取引するために、私たちにもできることがあるのではないかと考えて出した答えが、NO PROBLEM品(=NP品)という考え方でした。

F.I.N.編集部

A品ではないけれど、使用には問題ないものを定価で販売するという試みですね。山田さん自身も輸入や小売りを経験されていますが、NP品についてはどのように感じられていますか?

山田さん

B品というものは基本的にはなくならないものなんですよね。減らそうと努力はしているけど、なくならない。だから検品の質を下げるのではなく、寛容になるという意味で、お二人の活動には、心の中で拍手しています。一方、日本ではこれまで、傷があるものはアウトレット品として安く出回るというのが一般的でしたので、定価で売るということに多少の難しさはあると思います。だからこそ、NO PROBLEMという考え方が、ポジティブに転換して広まっていけばいいなぁと思いますね。

F.I.N.編集部

山田さんも関わっている〈GOOD DESGIN STORE TOKYO by NOHARA〉にて、NP品の展示と販売をされたんですよね。

國府田さん

2017年の6月、「NO PROBLEM展」という展覧会をGOOD DESIGN marunouchiで行いました。その中の展示のひとつで、NP百貨店というコーナーを設け、連動企画で、実際にNP品をストアで販売したんです。さまざまな日用品のB品とその背景を知ることを通して、日本の今の生活を見直すヒントや、「寛容さ」のある暮らしについて考えるというコンセプトでした。

山田さん

素敵な展覧会でした。僕自身これまでに検品することもたくさんあったのですが、検品が苦手でした。全然傷に気づかないし、見えない(笑)。使っていたら傷はつくし、僕自身の感覚としては「使えるし、いいじゃん」というのが正直な気持ちなんですよ。もちろん使う上で危険が伴うものは完全に不良品だと思いますが、それ以外をどう見るのか。この展覧会はそういうことを深く考えさせられましたね。

小沢さん

ありがとうございます。日本のメーカーさんが、自分たちのブランドがどういうブランドなのか、それにふさわしいものはどういうものなのかという基準で、厳しくチェックされているところもあるし、ゆらぎを本質的なものとして受け入れているメーカーもある。本当に多様なんだな、ということに気づきました。まだまだ活動は初めて3年くらい。価値観を変えることなので、すぐに全てが変わるとは思っていません。5年後、10年後には広く受け入れられるようになっているといいなぁと思っています。

F.I.N.編集部

今日は、参加者の方と一緒に検品のワークショップも行われると聞きました。

小沢さん

インドから届いたばかりの、私たちもまだ検品していないVISION GLASSの検品を皆さんにもしていただきます。このワークショップ、いろんなところで開催していますが、結構好評をいただいていて。自分を見つめ直す時間だったという感想をもらうこともあります。

山田さん

自分を見つめ直す……、たしかにそうかもしれませんね。

國府田さん

どうしても厳しくなってしまう、見えすぎるタイプの人もいれば、山田さんのように「傷が見えない」という人もいます(笑)。どちらがいい、悪いということではなくて、それぞれの価値基準があるということに気づいてもらいたいと思っています。

小沢さん

自分のお店で出す商品だったら、または、自分が買う側だったら、それぞれの立場によっても基準は変わってきますよね。みなさんがどんな検品をされるか、楽しみです。

山田さん

僕も久しぶりに検品するので楽しみです。

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お客さんが集まり、この日の未来定番サロンがスタート。VISION GLASSを輸入するに至ったきっかけや、NP品とはどういうものなのか、今後のNPプロジェクトの活動目標などが語られます。

今後は、「NPマーク」を普及させ、NPプロジェクトに賛同している人たちの輪を広げていきたいと語る小沢さん。小沢さんは実際に毎年インドへ赴いています。日本とインドの文化の違いを理解し、受け入れながら目標を共有しているといいます。

小売側の立場から、NP品を定価で売ることの大切さと難しさを語る山田さん。「クオリティーを下げるわけではなく、寛容になること」と語ります。

 

そしていよいよ、検品のワークショップが行われました。

未来定番研究所の2階に、ずらりと並べられたVISION GLASSの箱。1つの箱に6個のグラスが入っています。これは検品前のもの。この日は参加者の皆さんと一緒に、検品していきます。傷も汚れもなく美しいA品、傷やズレはあるけれど、使用には問題ないNP品、使用にあたって危険が伴う不良品なのか、チェックしていきます。

初めての検品作業に戸惑っていた方も、真剣な表情でグラスと向き合います。

ライトに当てて、縁や底に傷がないか、細かい汚れもチェックする皆さん。

検品の際、よくある傷につけられた名前も面白い。斜めの傷は「サムライ」。一刀両断された傷の形に似ているからなんだとか。

検品は苦手だという山田さんも、参加者の皆さんと一緒に真剣な表情です。

一箱検品を終えたら、場所を移動し、別の箱の検品をします。他の人と自分は、同じグラスをA品ととるか、NP品ととるか、違いがわかります。

検品作業を終えた参加者の方に感想を聞いてみると、「ほとんどがA品だった」という方も、「すべてが気になってしまう」という厳しい方もいて、それぞれの価値基準が明らかになっていきます。デザインの仕事をやっている方からは「かっこいいデザインとダサいデザイン、そしてグレーゾーンというデザインがあるところは、同じだと思いました。そこにストーリーを乗せるかどうかでクライアントの納得度が違うこともあるので、とても勉強になった」という自身のお仕事につなげた意見も聞くことができました

NPという考え方が広く浸透していくと、私たちが自分たちの価値基準でものを見ることにつながります。傷がないA品を求めているのか、日常で使う生活道具にNP品を求めているのか、自分で選択する自由がそこにはあります。販売側がNP品を勧めるだけではなく、使う側が「NP品でもいいのかも」と立ち止まって考えてみることも大切なのかもしれません。

最後に山田さんは「いろんなお仕事をされている方が、それぞれの立場に置き換えてNP品を考えることができる、いい機会でした。検品という作業をきっかけに、きっと自分のものの見方が変わると思います。寛容になれることもあるだろうし、もっと厳しく見えることもあるかもしれない。たくさんの気づきをもらった会になりました」とコメントし、会を締めくくりました。

 

イベント後、國府田さんは「現場で働く方達も、同じように違和感を持っていらっしゃるということを実感できました。扱う分野や立場で、解決の方法も変わるだろうと思いますが、おそらくずっと続く課題だと思いますので、あきらめずに考え続け、息切れしないように向き合っていこうと思います。これから寛容さが必要な時代になるというのが、お客様からの反応でも感じました。貴重な機会をありがとうございます。次に繋げられるよう、思考や活動を進めていきます」と感想を寄せてくれました。

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