2021.04.19

未来の住まい定番を発見!5年先のインテリアカタログ。<全3回>

第2回| 大島淳一郎さんが考える、第2の人生がある家具。

遠隔で働けるようになり、家で過ごす時間がより一層増えました。今後、住まいを考える上で、アクセスの良い土地よりも、部屋で快適に過ごせる家具の方が重要なポイントになるかもしれません。そこでF.I.N.では、理想の住まい環境を追求するクリエイターに「5年先も使いたい家具」についてお話を伺い、未来の心地よい暮らしについて考えました。

 

第2回目にお呼びしたのは、モダンでカラフルな作品を多く手がける、プロダクトデザイナーの大島淳一郎さん。留学先のドイツで、色彩感覚に影響を受けたという大島さんに、未来に定番になりそうな家具について伺いました。

(イラスト:ケント・マエダヴィッチ)

僕が持っている中で、一番長く使っている家具は、〈カリモクニュースタンダード〉の「トリイ エス」というスツールです。その名の通り、日本の「鳥居」をモチーフに作られていて、一般的なスツールよりも奥行きが狭いのが特徴です。椅子としてはもちろん、棚のようにしても使えて、本を置いたり、植木鉢を置いたり、重宝しています。また、コンパクトなので、引っ越しの際にも邪魔になりません。映画『レオン』でジャン・レノ演じる殺し屋が植木鉢を片手に居場所を転々とするシーンがありますが、このスツールもそんな相棒のような存在で、どこへ引っ越すにも一緒です。

 

長く使える、という点で考えると、作りの丈夫さや造形の美しさ、コンパクトさなど、普遍的な価値のあるものに惹かれます。歴史あるブランドの家具などは、しっかりとした作りで長く使えるものが多いですが、価格もそれなりにしてしまいます。

 

高い家具を買わずとも、家具を楽しむ方法として、「手作り家具」はいかがでしょうか。僕が今、作業用デスクとして使用している木でできた大きなテーブルは、展示会で捨てられそうだった合板を引き取って、自分で脚をつけたものです。

 

一人暮らし → 同棲、結婚など、2つのテーブルが集まり、サイズが合わないため両方とも廃棄する、なんて状況も多いかと思います。廃棄にはコストも掛かりますし、なんだか寂しい気分になります。そんな時にはテーブルとしてではなく、天板に色を塗って壁に立て掛けて、自由に穴を開けられるボードとしてミラーや絵画を掛けたり、別の家具の材料として切り出したりと、いろいろな使い方ができるかもしれません。

 

安い家具もいいのですが、この消費社会の中で、心地よい家具との付き合い方として、「自分で作る」→「別の形で再利用」の可能性を考えてみても面白いのではないでしょうか。自分で作る楽しみは、家具への愛着を生みます。長く一緒にいられる“相棒”になれたら素敵です。

Profile

大島淳一郎さん

1992年、宝塚市生まれ。プロダクトデザイナー。2015年、神戸芸術工科大学 プロダクトデザイン学科卒業。ドイツ・ベルリンの芸術学校〈Weißensee Kunsthochschule Berlin〉への留学を経て、安積伸氏の事務所に勤務。2019年より個人での活動を開始。

https://www.junichirooshima.com/

 

編集後記

この一年で働き方がかわり、それに伴い暮らし方が大きくかわったなかで、家具に対する視線も大きくかわりました。

そのなかで大島さんの価格基準ではなく、自分に必要な家具を「相棒」と捉える感覚や、使い捨てではなくライフステージに併せて家具をその時に必要な形にかえて、次の家具人生(価値)を与える考え方が、当たり前になっていく印象を受けました。

(未来定番研究所 織田)

未来の住まい定番を発見!5年先のインテリアカタログ。<全3回>

第2回| 大島淳一郎さんが考える、第2の人生がある家具。