2020.04.14

花を飾ろう!〜捨てられてしまう花を蘇らせる、フラワーサイクリストの挑戦〜

気温の上昇や、大型台風の発生など気候変動が身近なものになり、環境問題に興味を持つ人が増えています。食品の廃棄問題などが社会問題として多くの人に知られるようになった一方、花が大量に廃棄されている現実を知っている人はまだまだ少ないかもしれません。毎日廃棄されてしまう花“ロスフラワー”に新しく命を与える活動をしているのが「フラワーサイクリスト」。フラワーサイクル*アンバサダーとして活動する宇津宮明美さんにお話を聞きました。

(写真提供:宇津宮明美)

ロスフラワーに命を与える、フラワーサイクリスト

宇津宮さんは、フラワーサイクリストの第一人者である河島春佳さんの活動に共感し、昨年からフラワーサイクリストの活動を広めるアンバサダーになりました。小さい頃から花が大好きだったという宇津宮さんですが、花が大量に廃棄される現場を目の当たりにし、心を痛めていました。

 

「普段は、舞台やイベントのPRの仕事をしています。担当するイベントの現場に入ることも多く、イベントが終了したら、会場の祝い花を捨てて片付けをしなければなりません。まだ綺麗に咲いている花を折って、ゴミ袋に詰める。ずっと勿体無いと思っていました。なんとかしたいと自分ができる範囲で持ち帰って家で飾っていましたが、私一人ではとても追いつかず大量に事業ゴミとして廃棄していました」。

そんな宇津宮さんは花に新たな命を吹き込むフラワーサイクリストの活動を知り、すぐに自分も行動を始めます。

「河島春佳さんのことをラジオで知りました。河島さんは結婚式場やイベント会場の花を回収し、ドライフラワーにしてアクセサリーなどのアイテムを作ったり、空間の制作などを手がけたりしています。ロスフラワーの問題について同じことを考えている人がいたことに感動しました」。

宇津宮さんは、河島さんが主催する「仕事旅行」に参加。全国から同じ思いを持った仲間が集まり、7日間フラワーサイクルについて勉強できる機会です。その後、フラワーサイクリストのアンバサダー((フラワーサイクル*アンバサダー)の第一期生に応募しました。現在はアンバサダーのメンバーたちと一緒に、ロスフラワーの存在を広く周知するための活動をしています。自身では、祝い花の回収や販売できない花を購入し、ドライフラワーにしてアクセサリーやブーケ、リースなどの作品を制作販売しています。

生花店に並ぶ花のストーリーを知る

花の廃棄の現状はいったいどれくらいなのでしょうか。

「時期にもよりますが、生花店で仕入れる花の約3割が廃棄されているといわれています。さらに捨てる際に、生花店が事業ゴミとしてお金を払って廃棄しなければならないのです。花は生花店にいけば買えるという認識の人は多いと思います。しかし、その裏側には花を作っている人がいます。フラワーサイクリストアンバサダーの活動をはじめてから、花の農家の方とお話しする機会もたくさんあり、花にも規格外で売れないものがあると知りました。例えばスイートピーは4輪がついていないといけない。茎が曲がっていると売れない。見た目は売れる花と同じでとても綺麗です。でも規格外だと売れなくなってしまうという事実があります。初めて知った時は衝撃を受けました」

宇津宮さんは、規格外になった花を購入してドライフラワーにしています。それは捨てられたら終わってしまう花の命を、違う形で楽しむ方法です。

「花を生産してくれる農家の方がいなければ、私たちの元に花は届きません。彼らが一生懸命花を作っているという事実を、多くの方に知ってもらうこともフラワーサイクリストの仕事です」

花を飾ることで心が豊かに

今年に入ってから、新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るい、外に出かけず家の中で過ごす方が増えています。家の中で少しでも快適に過ごしたい時にも、花は役立つと宇津宮さんは話します。

「花が一輪あるだけでも、ぱっと部屋の中が明るくなります。花は一本250円、300円するので高いと思われる方もいるかもしれません。しかしちょっと節約して花を買ってみると、その良さを実感してもらえると思います。季節ごとに咲く花があるので、部屋の中でも四季を感じることができます。切り花を飾った後はドライフラワーにすれば、また違う形で花を楽しむことができます。実はドライフラワーを作るのは簡単なんです。私も今後はワークショップを開催して、ドライフラワーを家庭で作ってもらえるよう教えていきたいです」。

未来の生活に花はどんな役割を果たすのか。

フラワーサイクル*アンバサダーとして、今後はどのような活動をしていくのでしょうか。

「まずは多くの生花店に、私たちのようにロスフラワーを回収する団体があるということ、そして回収した花を、空間の装飾やディスプレイとして使うという使用方法を周知していきたいです」。

最後に、5年後の私たちの生活に、花はどんな役割を果たしてくれるのか宇津宮さんに尋ねてみました。

「花の存在がもっと身近なものになるのではないでしょうか。美しいという側面だけではなく、花が持つ力がもっと知られるようになることを願っています。人の気持ちを華やかに、穏やかにさせてくれるのが花の力です。花を通して、自然に対して優しい心を持ち、環境問題に関してももっと多くの人たちが目を向けるきっかけになると思います」。

まずは一輪、花を生活に取り入れることをはじめてみれば、自然の大切さや、花を育てている人の思いを感じる人もいる。一輪の花の後ろには、作ってくれる人がいる。そんな想像力を育てることは思いやりにも繋がります。花を飾ることで心を豊かにし、少しでも地球を守ることに貢献できるのです。

Profile

宇津宮明美

愛知県生まれ。母の花好きに影響され、幼少期から花をかかさない生活の中で過ごす。ロスフラワー(廃棄花)の多さに驚き、この状況をどうにかしたいと、昨年からフラワーサイクルアンバサダーの活動を開始。アンバサダーメンバーたちと一緒にロスフラワーの存在をたくさんの人に知っていただけるよう活動をしている。

https://www.instagram.com/kukkapelata

株式会社RIN

http://harukakawashima.com/wp/

編集後記

環境問題に「しなければならない」と向き合うのと、「幸せな気持ちで」向き合うのと、

初心者の私も後者としてなら、自分事として取り組んで行けるのではないか?と感じました。

日本人の繊細な美しいものを愛する心は、花の生け方や作法にまでこだわる手法(華道)として日本の文化に根をはっています。

日本人らしさ、日本人としての価値観を生かし、「ロスフラワー」に新しく命を与える活動を通じて、環境問題への第一歩を踏み出せれば、地球にも優しい心になれると思います。

(未来定番研究所 出井)