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2020.04.20

F.I.N.的新語辞典

第60回| エコサイコロジー

隔週でひとつ、F.I.N.編集部が未来の定番になると予想する言葉を取り上げて、その言葉に精通するプロの見解と合わせながら、新しい未来の考え方を紐解いていきます。今回は「エコサイコロジー」をご紹介します。

エコサイコロジー【えこさいころじー/Eco Psychology】

エコサイコロジーは1990年代半ばのアメリカで、自然の一部としての人間を考えようというムーブメントのなかで生まれたものです。今回は、南山大学人文学部・心理人間学科の川浦佐知子教授にお話を伺いました。

 

「それまでの環境運動では、“環境”や“自然”という概念の中に“人間”は含まれていませんでした。現代人の消費主義的なライフスタイルが環境破壊を引き起こしているのではないか。自然を“資源”としか見ないものの見方をどのように変えることができるのか。また、深刻さを増す環境破壊は人間の心にどのような作用を及ぼしているのか。そういった問いがエコサイコロジーにおいて提起されました」。エコサイコロジーの背景には、人間中心主義を再考し、人間を自然の一部だと捉える“ディープ・エコロジー”といった環境哲学の台頭や、生命圏を含む地球全体を恒常性維持機能(環境が変化しても体の状態を一定に保とうとする働き)を持つひとつの生き物のように捉える“ガイア理論”の確立、草の根運動としての環境運動の高まりがあったといいます。「エコサイコロジーは、そういったさまざまな要素の融合ともいえるもので、人々の意識改革を求める啓発的なものです」。

 

「近年では“環境正義”という概念が発達し、資源開発国における生活環境の悪化や、先住民の人々からの土地剥奪の問題なども広く議論されるようになっています」と、川浦教授。一般的になりつつある“エシカル”という言葉も、環境正義に関連する言葉だといえるでしょう。「搾取することなく、生産者と消費者をどのように繋ぐことができるのか。エシカルを意識することで消費のあり方はどのように変わりうるのか、あるいは変わらないのか。モノの背景に思いを馳せて我々の日常を見つめ直すならば、問いはつきません」。

 

地球環境の悪化が人間の精神面に悪影響を与え、不安や無力感、恐怖を感じて抑うつなどに繋がる“エコ不安症”という言葉も耳にするようになった最近。人間と自然の関係を見つめ直すエコサイコロジーは、これからの時代にこそ求められ、発展していくのではないでしょうか。

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