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2018.10.24

F.I.N.的新語辞典

第25回| グローサラント

毎週一つ、F.I.N.編集部が未来の定番になると予想する言葉を取り上げて、その言葉に精通するプロの見解と合わせながら、新しい未来の考え方を紐解いていきます。

今回紹介するのは、小売店が手がける新しい飲食サービス「グローサラント」です。

グローサラント【ぐろーさらんと/grocerant

小売業者(特に、食品スーパーマーケット)が手掛けるレストラン業態のことで、”グローサリー”と”レストラン”を掛け合わせた造語。店内で販売されている食材を使った料理をその場で調理し、提供。レストラン並みのクオリティの料理を、店内で気軽に楽しむことができるこの業態は、近年、成城石井やイオン、ヤオコーなど、国内で広がりを見せています。今回は、グローサラントが登場した背景やメリット、今後について、学習院大学 経済経営研究所の中見真也先生にお話を伺いました。

「グローサラントは、1970年代頃にアメリカで発祥しました。小売業者が、自分たちの強みである生鮮などの食材を使い、料理として店内でお客様に提供し、食材そのものの良さを味わってもらったり、その料理のレシピを紹介したりすることで、併設する食品スーパーマーケットでの食材の売上に繋げようとする循環型の取組みです」

アメリカでは40年以上も前に始まったこの業態が、近年になって急速に日本で広まっていることには、ある理由があるのだそう。

「もともと日本では、店舗面積の狭さ故にグローサラントの導入が難しく、広まっていきませんでした。しかし近年は、Amazonを始めとするネット小売企業が、消費者の食の分野にまで参入し始め、スマートフォンのアプリを通じ、良質で安価な食材が安定的、かつ簡単に手に入る環境が普及しつつあります。そこで、リアル小売業者たちは、ネット小売業に対し、実店舗の付加価値をどのように上げていくかを各社が試行錯誤し、その結果、グローサラントを導入し始めたのです。単に食材を販売する場でなく、お客さまに食を通じた感動体験を提供し、お客様同士、及びお客様と店員とのコミュニケーションの場として、リアル小売業者にとって、グローサラントは重要な役割を果たしつつあります」

グローサラントの今後の展望について、中見先生はこう続けます。

「日本では今後、顧客視点での店舗におけるサービスクオリティを高めるべく、商圏ごとの特性を踏まえたグローサラントが増えていくのではないでしょうか。リアル小売業において、グローサラント、イートインを絡めたミールソリューション型の店舗が、今後益々消費者の支持を集めていくのでないかと推察されます」

グローサラントの浸透によって、私たちの食卓もより幅広く、いろどり豊かに変わっていくかもしれません。

 

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