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2020.04.27

空想百貨店

Vol.8 齋藤精一さんが考える、ニーズに合わせてフォーメーションを自在に変える売り場

様々なECサイトの登場、テクノロジーの進化により、買い物環境は日々変化しています。リテールビジネスの店舗はこれから、どんな場所になったらいいのでしょう。

私たち「未来定番研究所」は、大丸松坂屋百貨店の部署のひとつとして、未来の百貨店のあるべき姿を日夜考えています。この企画では、多様なジャンルで活躍するクリエイターの皆さんの力をお借りして、未来の百貨店を自由に空想してもらおうと思います。

 

今回お招きしたのは、ライゾマティクス・アーキテクチャーの齋藤精一さん。建築で培ったロジカルな思考を基に、アート・コマーシャルの領域で立体・インタラクティブの作品を多数作り続けている斎藤さんに、「これからの百貨店がどうあったら面白いのか」、アイディアをいただきました。

(イラスト:Kohei Takemoto)

私はものを買う時、“物語先行型”なんです。そのため一番モノを買いたいと思う場所は、ミュージアムショップやギャラリーストアが多いです。「実は環境に優しい素材を使っている」とか、「生地は日本にひとつしかない織り機で編んでいる」とか、商品を見るだけでは知り得ない作り手のこだわりや作る過程などを知ると、「なるほど! こういうことを考えて作られているんだ」と、欲しい気持ちが高まりますよね。今はこんな風に“物語を買う”時代だと感じています。きちんとした想いを持って作られた、いいものを長く大切に使う。大量生産時代を経て、これからは、もっと哲学的な時代に移り変ろうとしているのではないかなと。しっかりと商品や作品について伝えることができる展示と販売の間のような、もっと物語を前面に打ち出した場所を作ってみたいとずっと考えていました。物語のあるものはニッチな物も多いですが、あえてそのニッチなニーズに対してアプローチしたいですね。百貨店ならではの、ものを集める力やキュレーションする力、目利きの力を最大限に生かし、マーケティング主導ではなく、ニーズ主導で考える売り場があってもおもしろいと思います。例えば、300坪のスペースがあったとして、ある時は広いひとつの店鋪になったり、ある時は2坪のお店がたくさん並んだり。フォーメーションが自在に変わる売り場で、時勢やニーズに合わせて毎回扱う商品も変わるんです。扱うものは、指輪から飛行機までなんでもいい。今月は海外からのお客さんが多いからこういう売り場にしようとか、今月は子ども連れが多いからこういう売り場にしようとか、百貨店の采配で自在に素早く姿を変えられると、よりタイムリーなニーズをキャッチできます。売り場では、作り手やそれを伝える人と直接会って話を聞けたり、店内の一部にファクトリーを作ってものづくりの過程を見ることができたりすると、モノの価値はもっと上がるはずです。とはいえ、それはなかなか再現するのは難しいので、デジタルの力を借りるのもいいかもしれません。場所と時間を超えられることがデジタルのメリットなので、それを最大限利用した売り場づくりも可能です。例えば、テキスタイルを編むジャガードマシンなどを持ってくることは難しいけれど、現場にあたかも自分がいるかのような映像や空間作りなりができると、商品と消費者の距離もぐっと縮まるし、価値をきちんと理解して、そこにお金を払いたいという人も増えるのではないでしょうか。また、私はバイクや車、家電など、なんでも修理するのが好きなのですが、今はテクノロジーが進化したことによって、古いものを修理できるようになっています。自分に合ったいいものを選んで、大切に使い続けることに価値を見出す時代が始まるとするなら、モノを長く使うためになんでも修理してくれる売り場があってもいいですよね。

Profile

齋藤精一/ライゾマティクス・アーキテクチャー主宰

1975年神奈川生まれ。建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学び、2000年からNYで活動を開始。その後ArnellGroupにてクリエイティブ職に携わり、2003年の越後妻有アートトリエンナーレでアーティストに選出されたのをきっかけに帰国。フリーランスのクリエイターとして活躍後、2006年株式会社ライゾマティクス設立、2016年よりRhizomatiks Architectureを主宰。建築で培ったロジカルな思考を基に、アート・コマーシャルの領域で立体・インタラクティブの作品を多数作り続けている。2015年ミラノエキスポ日本館シアターコンテンツディレクター。現在、2020年グッドデザイン賞審査委員副委員長、2020年ドバイ万博クリエイティブアドバイザー。2025年大阪・関西万博People’s Living Lab促進会議有識者。

編集後記

「必要のないところにデジタルはいらない。」

「見れるものは生で見たい。触れるならば触りたい。」

「無人コンビニなんてありえない。人は人から物を買えた方が良い。」

 

先鋭的なメディアアーティストとして注目される齋藤社長から出てくる言葉が、意外にも「人間らしさ」に溢れていて驚きました。

 

時代は今、

・「考え」を求めている。

・「物語り」を求めている。

・「作り手の声」を求めている。

・「作られる所を」見たがっている。と捉えていらっしゃいました。

 

『物語』を表現するステージを創る為に、

什器自体が変わる、フォーメーションを変える、自動で変更できる。

そんなお客様の期待を超えて、ロジスティックに七変化する百貨店のイメージは、決して空想のアイデアではない、と感じました。

(未来定番研究所 出井)

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