もくじ

2019.07.05

空想百貨店。<全17回>

第7回| オークラさんが考える、“今の心情にぴったりの選曲”サービス

様々なECサイトの登場、テクノロジーの進化により、買い物環境は日々変化しています。リテールビジネスの店舗はこれから、どんな場所になったらいいのでしょう。

私たち「未来定番研究所」は、大丸松坂屋百貨店の部署のひとつとして、未来の百貨店のあるべき姿を日夜考えています。この企画では、多様なジャンルで活躍するクリエイターの皆さんの力をお借りして、未来の百貨店を自由に空想してもらおうと思います。

今回お招きしたのは、放送作家のオークラさん。ラジオ番組『バナナマンのバナナムーンGOLD』やテレビ番組『ゴッドタン』をはじめ、テレビやラジオ、映画、舞台などで幅広く活躍するオークラさんに、「これからの百貨店がどうあったら面白いのか」、アイディアをいただきました。

イラスト:KAZMOIS

今まさに僕が求めているのは、「今の心情にぴったりの曲を選んでくれる人」。凹むことがあったら、よく音楽を聴きながら散歩をするんですが、いつもコレ!という“ちょうどいい”曲がないんですよ。自分でも探して聴いてみるんだけれど、「歌詞がちょっと違うな」とか「自分の体験とずれてるな」ってことないですか? 歌詞がはっきりわかりすぎるのも嫌だし、詩的表現が多すぎても感情移入しづらい。じゃあいっそ、歌詞がない方がいいんじゃないかとか。仕方なく昔好きで聴いていた曲を選んでも、歌詞に「いや、でも……」と思ってしまう時もある。最終的にヒーリング音楽を聴いてみても、そこまで自分に浸りたいわけでもない。とことん落ち込ませてくれたり、凹んだ自分の背中押してくれたりする、“ちょうどいい”曲をカウンセリングしながらセレクトしてくれるサービスがあるといいですね。

僕は洋服をネットでは買いません。百貨店に行って店員さんと話をして意見をめちゃくちゃ聞いてから買うんです。わざわざ足を運ぶなら、人とコミュニケーションが取れる方がいい。今はとにかく選択肢だけが膨大に増えていて、その中からぴったりなものを選べないんです。ネットでも「おすすめ」をされるけど、たいてい的を射ていない。ネットで何でも調べられるからこそ、もっと個人と向き合う場所が必要なんじゃないかな。あと、基礎知識がないと行きづらいカルチャーショップやバーとは違って、百貨店なら誰でも温かく受け入れてくれて、落ち込んだ自分に寄り添ってくれそうじゃないですか。音楽だけじゃなく、エッセイや名言も選んで欲しいですね。ウディ・アレンのような饒舌なコンシェルジュが、僕の話を聞きながらプレイリストの中から、さっとぴったりの曲を差し出してくれる、みたいな。そんなフロア、今僕が一番必要としています(笑)。

 

Profile

オークラ/放送作家・脚本家

1973年12月10日生まれ。元お笑い芸人。テレビ番組の構成や、ドラマの脚本、お笑い芸人のライブネタを手掛ける。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげでした』『ゴッドタン』などのバラエティ番組や、ラジオ『おぎやはぎのメガネびいき』『バナナマンのバナナムーンGOLD』を担当。連ドラ『素敵な選TAXI』『住住』などの脚本も手掛けている。ドラマ『漫画みたいにいかない。』では脚本・監督を務めた。

編集後記

「今の心情にぴったりの選曲サービス」。こんなサービスがあったら、わたしも絶対利用したい!とワクワクしながらオークラさんのお話を伺っていました。余談ですが、映画を見たいと思い立ちTSUTAYAに行ってみるものの、圧倒的な品揃えを目の前にして作品を選びきれずに結局何も借りずに帰る、という経験を何度も繰り返しているわたしとしては、「今の心情にぴったりの映画を選んでもらえるサービス」もあったら嬉しい……

(未来定番研究所 菊田)

もくじ

関連する記事を見る

空想百貨店。<全17回>

第7回| オークラさんが考える、“今の心情にぴったりの選曲”サービス