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2020.12.02

空想百貨店。<全17回>

第14回| 佐々木康裕さんが考える、作り手をもっと知れる百貨店。

様々なECサイトの登場、テクノロジーの進化により、買い物環境は日々変化しています。リテールビジネスの店舗はこれから、どんな場所になったらいいのでしょう。

 

私たち「未来定番研究所」は、大丸松坂屋百貨店の部署のひとつとして、未来の百貨店のあるべき姿を日夜考えています。この企画では、多様なジャンルで活躍するクリエイターの皆さんの力をお借りして、未来の百貨店を自由に空想してもらおうと思います。

今回お招きしたのは、「Takram」ディレクターで、ビジネスデザイナーの佐々木康裕さん。D2Cを含むリテール、家電、自動車、食品、医療など幅広い業界で、コンサルティングプロジェクトを手掛ける佐々木さんに、「これからの百貨店がどうあったら面白いか」、アイディアをいただきました。

イラスト:黒田愛里

百貨店では、デパ地下で食料品を購入したり、食器などの生活雑貨を選ぶことが多いのですが、買い物をしていていつも感じるのは、売り場の向こう側にいる作り手の情報をもっと知りたいということ。食料品なら生産者、食器なら職人さんなど、その方の情報は売り場のポップに2 ~3行くらいしか書いてないことも多く、もっとパーソナルな情報があったらなと思うんです。百貨店は厳選された質の高い商品を扱っていますが、「いいもの」というだけじゃなくて、その先の生産者への興味を満たしたら、買うという行動がもっと豊かになりますよね。いっそのこと館内のBGMをやめて、作り手の声を流してみたらどうでしょうか。もともと百貨店は、家族や恋人など同行者や、セールススタッフとの会話の中で消費行動が生まれる場所です。会話じゃないけれど、商品を選ぶときに作り手の声が聞こえて、購入してからもっと詳しい話が聴けるような、ポッドキャストなどのコンテンツもいいですよね。少し極端なことを言うと、声を聞いて信頼できると感じたら、より購入意欲が湧くなんてこともあると思うんです。「この人が作ったものなら、きっといいものに違いない」というように。声のほかにも、読んでいる本、聴いている音楽など生産者のセンスを感じられるものがあったらより身近に感じられます。例えば、友人の家に遊びに行って、本棚に並ぶ本や冷蔵庫の中をみて、その人の感性や興味を知ることがありますが、それと同じことが売り場で提案できたら面白いと思うんです。寝具メーカーだったら、アロマなど睡眠にまつわる商品をセレクトして、体験全体を提案する。セレクトするものから、ブランドの方向性やパーソナリティが滲み出てきます。そんなふうに、パーソナルな情報を含めた商品の提案があったら、百貨店の売り場がもっと多様化して楽しい場所になるんじゃないかと思います。

Profile

佐々木康裕

Takram ディレクター / ビジネスデザイナー

早稲田大学政治経済学部卒業。イリノイ工科大学Institute of Design修士課程(Master of Design Method)修了。クリエイティブとビジネスを越境するビジネスデザイナー。デザイン思考のみならず、認知心理学や、システム思考を組み合わせた領域横断的なアプローチを展開。2019年3月、ビジネス×カルチャーのメディア「Lobsterr」をローンチ。 Takram参画以前は、総合商社でベンチャー企業との事業立ち上げ等に従事。経済産業省では、Big DataやIoT等に関するイノベーション政策の立案を担当。

編集後記

視覚と聴覚、そして嗅覚と、あらゆる感覚をクロスオーバーしながら、楽しめる空間は面白い買い物体験になると思います。そして、オフラインとオンライン、すなわちリアルとweb の世界もクロスオーバーしていると、お客様に伝わる、情報量はより充実して、そこから「共感」「応援」「好き」などの感情が芽生えるのかもしれません。 (未来定番研究所 窪)

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