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2020.07.20

空想百貨店。<全17回>

第10回| マール・コウサカさんが考える、お客様と一緒に歳を重ねる百貨店

様々なECサイトの登場、テクノロジーの進化により、買い物環境は日々変化しています。リテールビジネスの店舗はこれから、どんな場所になったらいいのでしょう。

私たち「未来定番研究所」は、大丸松坂屋百貨店の部署のひとつとして、未来の百貨店のあるべき姿を日夜考えています。この企画では、多様なジャンルで活躍するクリエイターの皆さんの力をお借りして、未来の百貨店を自由に空想してもらおうと思います。〉

 

今回お招きしたのは、〈foufou〉(フーフー)デザイナーのマール・コウサカさん。「健康的な消費のために」というテーマのもと、ウェブサイトやSNSを通してお客様に直接販売を行っています。新しいファッションビジネスを実践するコウサカさんに、「これからの百貨店がどうあったら面白いか」、アイディアをいただきました。

(イラスト:ソラノ カサネ)

私のブランド〈foufou〉は、インスタグラムやLINEなどで新作を発表し、予約をいただいて生産・販売するDtoC(Direct to Consumer)という形態で商品をお届けしています。私たちの顧客の方々は、ネットショッピングが当たり前。情報も雑誌ではなく、YouTubeやSNSから得ています。この傾向がこれからはスタンダードになっていくと思います。そう考えると、百貨店は現在の顧客であるお客様のミセス層向けに、完全に振り切ってみてはいかがでしょうか。百貨店の良さは、上質な商品を知識の豊富な販売員が勧めてくれて、“買い物”という楽しみが体験できるところ。だから顧客の方々は、百貨店を信頼しているんですよね。そして、私なら、ミセス層が全幅の信頼を置いている、総合病院や介護施設を百貨店に入れます。病院の診察帰りや、介護施設に入居する方も買い物を楽しめます。

この百貨店のメインフロアは化粧品です。キーワードは「いつまでも健康で美しく」。レストラン街もヘルシーなメニューを揃えます。ただし、あくまで「全世代向け」として間口は広く、品揃えや販売員さんの意識、MDなどで自然とミセス層の方に集まっていただくことが理想です。

私は、自分のブランドを始めるまで、アパレル企業で生産管理に携わっていました。売上が落ちてきたミセス向けのブランドは、ターゲットを若い世代にシフトすることがあるのですが、それまで顧客からいただいた売上を、若い世代に投資することに疑問を持っていました。小売業で世界一成功している〈アマゾン〉の「顧客至上主義」とは真逆ですよね。お客様に併走し、一緒に歳を重ねたほうが美しいと思いますし、若い世代からしても、顧客に寄り添う百貨店を見て、自分がミセスになって百貨店を利用する姿をイメージするのではないでしょうか。長い目で見れば、ミセス層向けに振り切ることは、次の世代にとって魅力なのではないかと思います。

Profile

マール・コウサカ

文化服装学院二部服装科卒業。

2016年、在学中に〈foufou〉(フーフー)を設立。

ECでの直販と展示会のみで製品を販売。ブランドコンセプトは「健康な消費のために」。

編集後記

 

「百貨店は不健康ですか?」という質問に、「そうですね」と笑って答えてくれたコウサカさんに感謝です。今回の取材では「今支えてくれているファンに寄り添った店作りとは何だと思いますか?」「あなたは思考を停止していませんか?」そんな問いかけをされた感覚でした。昔、自称 “歌って踊れる係長” の上司がいましたが、診察してかつ販売もできる店員さんがいたら、無双だなと思いました。 (未来定番研究所 富田)

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