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2021.03.05
空想百貨店。<全17回>
様々なECサイトの登場、テクノロジーの進化により、買い物環境は日々変化しています。リテールビジネスの店舗はこれから、どんな場所になったらいいのでしょう。
私たち「未来定番研究所」は、大丸松坂屋百貨店の部署のひとつとして、未来の百貨店のあるべき姿を日夜考えています。この企画では、多様なジャンルで活躍するクリエイターの皆さんの力をお借りして、未来の百貨店を自由に空想してもらおうと思います。
今回お招きしたのは、エネルギー溢れるペインティングで多くの人を魅了している、ファインアーティストのShohei Takasakiさん。2019年までポートランドに在住し、国内外でエキシビションを開催してきたShohei Takasakiさんに、これからの百貨店がどうあったら面白いか、アイディアをいただきました。
(イラスト:北田正太郎)
オンラインでできることが増えて、人と人との“フィジカルな繋がり”が少なくなりました。でも、だからこそ、「同じ空間に存在する」ということ自体も、相対的により重要になってくると思います。オンラインでもフィジカルでも、皆が自由にチョイスできるオプションが増えることはとてもいいこと。そこで、百貨店というフィジカルな空間を生かし、人と人とが出会える場所を作るのはどうでしょう? 僕が考えたのは、同じ属性を持つ人たちと出会える、コミュニティスペースのある百貨店です。出会いのためのユニークなきっかけになるでしょう。例えば、洋服がほしいひとりの女性がいたとします。彼女が気になっている洋服を手に持ち、頭上に挙げると、その洋服に対してモニタリングしている人々が絵文字のみで反応します。店内の天井や壁などにも超巨大なモニターを設置し、その場で人々が反応した絵文字を確認できる仕組みです。ハートや泣いている顔、○×など、さまざまな絵文字が表示されます。買うものに悩んでいる人にとっては、手を挙げるだけで第3者の意見が聞ける、便利なシステム。対話の手段としてただ遊ぶだけでもいいでしょう。でも、この百貨店の面白いポイントは、モニター側にもオーディエンスがいるということ。「EMOJI ROOM」と名付けたこのモニタリングルームには、50名ほどから成るグループが日替わりで同じ部屋に集まります。そこは秘密のサロンのようになっていて、バーがあってお酒が飲めたり、音楽が聴けたり、ボードゲームができたり……。年齢や性別、職種、主張など、それぞれの属性によって集まるとおもしろいと思います。例えば、主婦や、工事現場で働く男性、女性のヴィデオ・ゲーム・デザイナー、20代のゲイの子、年配者、スポーツ選手、6才以下の子供、活動家、ドラアグクイーンなど。あえて属性を狭めることで、濃いコミュニティが生まれるのではないでしょうか。また、デパートの外に「〜〜〜の日」と、大きくサインが出ていると集まりやすいですし、意見が欲しい人にとっても好都合ですね。ここには友人や家族と一緒ではなく、ぜひひとりで参加してほしいです。最近は、Amazonなどのレコメンド機能に代表されるように、自分の好きなものや、すでに知っているものにしか、出会いにくくなっています。百貨店自体が、不特定多数の人と出会えて、さらにコミュニケーションも図れる場になったらいいのではないでしょうか。
Shohei Takasaki
埼玉県出身のコンテンポラリー・アーティスト。ポートランド、ロサンジェルス、クウェート、メルボルン、香港、東京など、様々な都市でペインティングを主体に作品を発表してきた。
2019年夏、アメリカ・ポートランドから東京に拠点を移し、サイト・スペシフィックなショウを制作している。キュレーターのEri Takaneとともに、アーティストによるアーティストへのインタビューマガジン「dddyyyhhh.com」もプロデュースしている。
イラスト/北田正太郎
編集後記
自分にその服が似合っているのか、一人の売ろうとしている販売員の意見だけでなく、その他大勢の人に気楽にアドバイスを
貰えたらとても参考になります。百貨店は集まったアドバイザー達が楽しめるための場所(サロン)を提供する。斬新です!
(未来定番研究所 出井)
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第16回| Shohei Takasakiさんが考える、知らない誰かと出会える百貨店。
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