2020.11.19

空想百貨店

Vol.13 佐藤幸二さんが考える、お店がシャッフルする百貨店

様々なECサイトの登場、テクノロジーの進化により、買い物環境は日々変化しています。リテールビジネスの店舗はこれから、どんな場所になったらいいのでしょう。

私たち「未来定番研究所」は、大丸松坂屋百貨店の部署のひとつとして、未来の百貨店のあるべき姿を日夜考えています。この企画では、多様なジャンルで活躍するクリエイターの皆さんの力をお借りして、未来の百貨店を自由に空想してもらおうと思います。

 

今回お招きしたのは、東京・富ヶ谷にポルトガル料理&ワインバー〈クリスチアノ〉や〈おそうざいと煎餅もんじゃさとう〉、ポークビンダルー専門店〈副大統領〉など6店舗を経営する佐藤幸二さん。次々と個性的な人気店を生み出している佐藤さんに、「これからの百貨店がどうあったら面白いか」、アイディアをいただきました。

(イラスト:こたに千絵)

 

流行るお店や場所には「動くものがある」とよく言われます。クラブにミラーボールがあるように、人は動くものがあると飽きないという心理があるようです。だから、百貨店の1つのフロアや空間でも移り変わりがあるといいですよね。そこで考えたことが2つ。1つ目の現実的な方法だと、ポップアップやイベントですね。すでにありますが、大切だなと感じるのはその空間全体のディレクション。新しい店舗が入ったりポップアップをしたりすることで、そのお店は盛り上がりますが、同じフロアのすべてのお店に光が当たるよう、しっかりと練られたディレクションが必要ではないかと感じます。私なら、外部のディレクターにお願いして、新しい企画を打ち出したり、効果的に宣伝したりしながら、全体を盛り上げて底上げされるよう促します。もう1つは、非現実的かもしれませんが、せっかくたくさんのテナントがあるので、それらが定期的に入れ替えられたらどうなるだろうと考えました。季節ごとに店舗内のディスプレイを変えるように、場所が変わるんです。先日まで7階にあった店舗が、急に1階にあったら、お客さんもびっくりして新鮮な気持ちになれそうですよね。あまり訪れないフロアにあって知らなかった店舗を知るきっかけになるかもしれない。店舗側も、フロアや場所によって、客層や売上も変わってくると思うので、おもしろいデータが取れる可能性がありますよね。店舗同士が協力しあって、こんな斬新なことができれば、百貨店全体が盛り上がりそう。活気溢れる場所で、働く人もお客さんもワクワクできる場所になって欲しいですね。それこそ、僕たちのような路面店ではできない、百貨店ならではのおもしろさを生かした取り組みのような気がします。

Profile

佐藤幸二さん

調理師専門学校を卒業後、(株)ANAホテル&リゾーツ(現IHG・ANA・ホテルズグループジャパン合同会社)に入社。3年後にイタリアへ渡る。その後、フランス、イギリス、タイなどで料理を学び、星付き店のスーシェフ、ホテルの総料理長などを経験。帰国後、2010年にポルトガル料理店〈クリスチアノ〉をオープン。現在は、他6店舗を経営。

編集後記

確かに「動き」は重要な要素です。さすが人気の代々木八幡エリアを牽引されている佐藤さんならではの納得のご指摘です。またその動きは、お客様だけでなく、そこで働く人のワクワクを引き出す重要な要素である事にも、気づかせてもらいました。今回の取材は、大きな施設から小さなスペースにも活かせる視点でした。(未来定番研究所 富田)

 

記事には書ききれなかったのですが、個人的に面白いなと思ったのが「遊べる百貨店」という佐藤さんのアイディア。店内に小川を流したり、通路にプールを作ったり、植物がたくさんあったり。昔の百貨店によくあった「屋上遊園地」みたい!とお話を伺いながら、ワクワクしました。小川もプールも植物も、ある意味すべて「動くもの」。人が行きたくなる空間のヒントが、そこにありそうです。(未来定番研究所 菊田)