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2018.08.06

F.I.N.的新語辞典

第16回| グリーンインフラ

毎週一つ、F.I.N.編集部が未来の定番になると予想する言葉を取り上げて、その言葉に精通するプロの見解と合わせながら、新しい未来の考え方を紐解いていきます。

今回紹介する言葉は環境保全、防災・減災、取り組みをつなぐキーワード、「グリーンインフラ」です。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング撮影

グリーンインフラ【ぐりーんいんふら/Green Infrastructure】

グリーンインフラストラクチャーの略。自然機能やその仕組みを利用した社会資本整備、土地利用を進める手法・考え方のこと。自然環境保全のみでなく、資源・エネルギーの枯渇や地域経済、災害リスクの高まりに起因しています。また、道路や橋、屋上の緑化や遊水機能を持つ公園など、自然の持つ機能を活かした社会基盤設備がグリーンインフラと捉えられており、自然はヒートアイランドの抑制や生き物の生息空間に、人間活動には健康の促進や環境教育、レクリエーションなどの機能があります。

今回は、日本でのグリーンインフラの普及および具体化に向けて研究者や実務者など、多様な関係者の連携の下、活動する三菱UFJリサーチ&コンサルティングの副主任研究員の西田貴明さんにお話を伺いました。

「日本においてはグリーンインフラの概念が入ってきてからの日が浅く、『グリーンインフラ』という位置付けで事業が始まったものはまだ少数です。しかし、レインガーデンを設置し、洪水リスクを下げて景観や生物多様性に配慮した街づくりを進める『世田谷区豪雨対策行動計画』や、静岡市における洪水対策として整備された麻機遊水地において、平常時にレクリエーションや多目的活用する取り組みなど、国内外でも注目される有効活用例がいくつか挙げられるようになってきました。」

西田さんが挙げてくれた上記のような取り組みは、「自然の機能を引き出す」という米国等の最新技術を取り入れられながら進められているそう。その技術は日本に昔からあった考え方であり、近年急速に、グリーンインフラに該当する技術開発が進んでいる、と西田さんは続けます。

「例えば都市型水害リスクを低減する植栽空間『レインスケープ』や、被害が増加している都市型豪雨の対策に都市緑化を活用する方策、自然の機能を適切に評価した土地利用のあり方など、近年グリーンインフラに関する研究プロジェクトが数多く立ち上がっています。その中で、自然の持っている多様な機能の評価が進むことで、その機能が活かされる空間の利用や、インフラ整備が広がると考えられます。

またグリーンインフラは防災・減災のみならず、地域の賑わいの形成や活性化の機会となって、地域経済にもプラスの効果をもたらします。それが結果として地域の環境保全に繋がることを期待していますし、特に空き地や空き家、耕作放棄地など、人口減少に伴う低未利用地の拡大が進む中で、それらの土地の有効活用や、効率的な維持管理の手法にもなっていくのではないでしょうか。」

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