もくじ

2019.09.20

F.I.N.的新語辞典

第47回| バイオプラスチック

隔週でひとつ、F.I.N.編集部が未来の定番になると予想する言葉を取り上げて、その言葉に精通するプロの見解と合わせながら、新しい未来の考え方を紐解いていきます。今回は、昨今の海洋プラスチックごみ問題改善の一助になるのではと期待される「バイオプラスチック」をご紹介します。

バイオプラスチックのうち、バイオマスプラスチックは主にトウモロコシの澱粉を原料に作られている。

バイオプラスチック【ばいおぷらすちっく/Bioplastic】

微生物によって生分解される“生分解性プラスチック”と、生物資源(バイオマス)を原料に製造された“バイオマスプラスチック”の総称。

 

「その特性を上手に生かし、利用することで資源循環利用率の向上、枯渇性資源の節約、石油由来CO2削減による地球温暖化緩和、海洋プラスチックごみ問題改善などへの貢献が期待されています」と教えてくれたのは、元・株式会社カネカ常務取締役の高橋里美さん。研究開発本部長兼GP事業開発部長として長年、バイオプラスチックの開発に携わってきた高橋さんは、日本におけるバイオプラスチックの開発・使用の現状についてこう続けます。「しかし、バイオプラスチックは石油由来のプラスチックに比べ製造コストが高く、開発も滞りがちで使用量は全体の0.4%に留まっているのが現状です。今後、普及に向け、優先的な市場導入を進める制度整備や技術開発・用途開発・生産体制整備に向けた支援制度の創設などが望まれます。また、“地球に優しい”というイメージが先行しがちですが、生産規模が小さいことや、生産技術・設備の最適化は十分とは言えず、既存の石油系プラスチックに比較しLCA(ライフサイクルアセスメント)やエネルギー面で、真に“地球への優しさを発揮できるプラスチック”と言い難いものも。今後、真価を発揮できるよう育てていくことが課題といえます」

 

バイオプラスチック先進地であるヨーロッパでは、最近、再生・再利用の強化を主眼とした方針が示され、“使い捨て(one-way)”を最小限にし、物性(生分解性または非生分解性)に応じて使用することが強調されているそうです。

 

「原油価格の低下を背景に石油系プレスチック価格が低位にあることも影響して、バイオプラスチックの伸びは鈍化傾向にありますが、プラスチック類による海洋汚染、マイクロプラスチック汚染の現実が報告され始め、ここにきて再び生分解性、なかでも海洋分解性のバイオプラスチックに注目が集まっています。特に、カネカが30年の歳月をかけて開発してきた良好な海洋分解性を有する『PHBH』は、製造能力を年間5,000トンまで大幅に向上させ、開発が加速。存在感を示してきています」

 

PHBHは自然界に存在する多くの微生物により分解され、最終的には炭酸ガスと水になるそう。高橋さんが話してくれた通り、バイオプラスチックが“地球に優しい”という真価を発揮できるように、PHBHを含め今後のバイオプラスチックの開発・普及に期待が高まります。

もくじ

関連する記事を見る