2019.05.14

F.I.N.的新語辞典

第39回 フードテック

隔週でひとつ、F.I.N.編集部が未来の定番になると予想する言葉を取り上げて、その言葉に精通するプロの見解と合わせながら、新しい未来の考え方を紐解いていきます。今回は、テクノロジーやサイエンスを食品や飲食業界に適用することで生まれる新しい産業分野、フードテックをご紹介します。

 

『Smart Kitchen Summit Japan 2018』の様子

写真提供/シグマクシス

フードテック【ふーどてっく/food tech】

 

食品関連サービスにテクノロジーやサイエンスを掛け合わせた新しい分野のこと。食材の生産から流通、調理のほか、代替食や食関連サービスなど、その取り組みは多岐にわたります。

 

今回は“食&料理×テクノロジー”をテーマに、フードテック企業、キッチンメーカー、サービスプロバイダー、料理家、起業家、投資家、デザイナー、ビジネスクリエイターといった幅広い分野のプロフェッショナルが集まってキッチンの未来を考えるイベント『Smart Kitchen Summit Japan』を主催する株式会社シグマクシスの田中宏隆さんに、フードテックについて教えていただきました。

 

「欧米を中心に海外では、テクノロジーやサイエンスを活用した非常に多岐にわたる製品・サービスが続々と登場しています。これに呼応する形で、2015年頃からさまざま食の未来を考えるカンファレンスも開催されるほか、フードテック領域への投資も、2014~2015年頃から急激に増加。そうした欧米の動きと比べると、日本はまだ遅れていると言わざるを得ない状況ですが、少しずつフードテックに関わる投資が増え、新しい製品・サービスが登場しつつあります。『Smart Kitchen Summit Japan』は2017年にスタートし、2018年の開催では家電系、食材系、食品サービス系から50を超える展示・発表がありました。また欧米では、フードテックを活用したフードロスや食料供給問題の解決、健康課題の解決など、社会課題を如何に解いていくかという議論が多いですが、日本ではそれらに加えて、食や料理の価値を多様化するサービスが出てきていることも特徴です」

 

田中さんが今、特に注目しているのは、パーソナライズド・レシピサービスとフードロボットの領域なのだそう。

「前者は単なるレシピではなく、好き嫌い、アレルギー、ビーガンなどの個食主義、コスト、健康状態といったユーザーの情報を得ることで、より個人に最適化した食を提案してくれるサービスに進化していることが面白いですね。さらにはそのレシピが家電や調理器具と繋がり、温度や時間をコントロールすることで、調理実績なども獲得することが可能に。調理実績からは、摂取栄養素も読み解くことができます。今後はそのレシピサービスがプラットフォームに進化することで、小売店や食品メーカーとタイアップすることで、今までにない食の体験を実現できるようになるでしょう。この領域で今世界一進んでいるのは『Innit』(※1)というサービスだと、個人的には捉えています」

 

「後者のフードロボットは、最近急速に盛り上がってきている領域です。これまでフードロボットというと、外食の厨房作業の代替で効率化を図ることに活用されてきました。もちろんそのニーズはなくなりませんが、最近は新たな価値創造に使われ始めています。調理の工程をあえてフロントで見える化させることで、“楽しさ”や“安全性”をアピールし、さらにはロボットの各工程にプロの技をインストールすることで、“美味しさ”を追求することもできます。これにより顧客がお店に来たくなるという状況を創り出すことができるのです。また、ロボットへの指示をタブレットなどでユーザーが直接行うことで、よりきめ細やかなユーザーニーズを得ることも可能」。この領域では、『Creator』というサンフランシスコにあるハンバーガーロボットのレストランに注目しているそうです。

 

『Smart Kitchen Summit Japan』は、今年も日比谷ミッドタウンのBase Q で8月8日〜9日に開催が決定。イベントを通じて目指すのは「生活者視点の食や料理に関わるサービスが次々と世の中に出てくる状態を創り出すこと」だと田中さんは話します。「まずは企業同士を繋げ(大企業とベンチャー、異業種同志)、地域を繋げ(日本と世界、東京と地域)、そしていずれは需給(生活者と新製品・サービス)を媒介する活動に育てていきたい」とのこと。その背景には、「現状のフードシステムは、世界的に限界に達している」という田中さんの見解があります。

 

「日本では戦後、非常に効率的なバリューチェーンが構築されてきました。しかしながら、その完璧さゆえに新しいコンセプトの製品や生活者が本当に求めているものが届きにくくなってきている状態でもあります。我々は、『Smart Kitchen Summit Japan』を通じ、こういった課題を解決できる新しいエコシステムを構築していきたいのです。食や料理の世界で、新しいことに取り組みたいという気持ちを少しでもお持ちの方は、是非『Smart Kitchen Summit Japan 2019』にご参加いただきたいと思います。そこに集うたくさんのイノベーターの皆さんと繋がることで、新たな取り組みの発射台としていただければと思います」

 

※1)食事の計画から買い物、ビデオ映像を使った準備から、スマート家電を活用した調理に至る、一連のユーザーの行動に寄り添うサービス