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2020.03.06

F.I.N.的新語辞典

第57回| コミュニティ通貨

隔週でひとつ、F.I.N.編集部が未来の定番になると予想する言葉を取り上げて、その言葉に精通するプロの見解と合わせながら、新しい未来の考え方を紐解いていきます。今回は「コミュニティ通貨」をご紹介します。

“まちのコイン”は、スマートフォンアプリをインストールすることで使用することができる。アプリ内では自分の“通帳”を確認できたり、コインの使い方やもらい方のリストを見ることができたり、参加したいものを見つけたら、その店舗やプロジェクトの人にQRコードを読み取ってもらうと、コインのやりとりをすることもできる。画像提供:カヤック

コミュニティ通貨【こみゅにてぃつうか・community currency】

特定の地域内やメンバー間だけで利用できる通貨のことで、地域通貨、エコマネーともいう。1980年代初頭にカナダで登場したとされ、日本でもスマートフォンなどの普及を受けてデジタル技術を活用し、使い勝手を高めたコミュニティ通貨が注目されています。今回は、2019年11月〜12月に神奈川県鎌倉市で行われた神奈川県の“SDGsつながりポイント事業”の実証実験に使われたコミュニティ通貨“まちのコイン”の開発元である、面白法人カヤックの広報担当・梶 陽子さんにお話を伺いました。

 

「“まちのコイン”は使えば使うほど、人と人が仲良くなるコミュニティ通貨サービスです。コインをもらうのも使うのも、地域の仲間と繋がる必要があります。そして使えば使うほど、まちと人、お店と人、人と人が仲良くなり、関係人口の創出に繋がったり、お店のファンが増えたり、仲間づくりができるお金です」。

 

鎌倉市での実証実験は、神奈川県のSDGsを自分ごと化するための事業の一環で実施されました。鎌倉市での通貨単位であるクルッポは、ビーチクリーンや商店街のゴミ拾い、店舗の手伝いなどSDGsや地域に貢献することでもらえ、使う際もSDGsに関連するようなフードロスになるパンをもらう時などに利用することができます(円への換金は不可)。“まちのコイン”の企画開発が始まったのは2018年8月。この背景には、カヤックが提唱する“地域資本主義”という考え方があったのだそう。「これは地域の持続可能な成長のために、地域ごとに魅力的な文化や自然(地域環境資本)、人と人の繋がり(地域社会資本)、お店や企業(地域経済資本)など、地域固有の魅力を価値と捉え、資本と考えるものです。“まちのコイン”はこの考えのもと、地域社会資本である“人と人との繋がり”を可視化させる指標として生まれました。流通量を増やすことで、地域環境資本や地域経済資本も増やしていこうという取り組みなんです」。

 

「一般的な地域通貨は、地域を閉じて囲いこむ方向で使われがちです。内需拡大を目的にするなら、これまで同様、地域ポイントやプレミアム振興券、もしくは決済系の地域通貨や決済アプリを通じて、キャッシュレスのツールとして使う方法もあると思います。しかし、閉じる方向だと、人口の多い地域でないとうまく機能しないのではないでしょうか。日本の国土の半分以上は1万人以下の中・小規模都市です。今後はむしろ地域を開いていく方向で、経済発展やまちづくりを考えていったほうがいいのではないかと私たちは考えています。例えば、今回の神奈川県のように、ちょっとハードルが高く感じるSDGsに関わる地域活動も、“まちのコイン”を使うと、ゲーム感覚で参加していくうちに、地域課題を身近に感じることができます。また、“まちのコイン”の活動履歴を見ることで、自分の行動がどのSDGsのゴールに繋がっているのかを振り返ることもでき、SDGsの“自分ごと化”にも繋がります」。地域を閉じるのではなく開いてたくさんの人々に参加してもらえるよう、“集めて、使う”というゲーム性を持たせているのも、ゲームやエンタメ事業が主軸事業のカヤックが開発したコミュニティ通貨ならではの特徴といえそうです。

 

“まちのコイン”を使った神奈川県の“SDGsつながりポイント事業”は、鎌倉市のほか小田原市でもこの2月にプレサービスが開始されました。「“まちのコイン”が、コミュニティづくりのツールとなったり、地域の課題解決をするためのインセンティブとなったり。その地域で必要な繋がりを後押しし、それぞれの地域の多様化が進み、日本に個性溢れるまちが増えるといいなと思っています」。今後の展望について、梶さんはそう話してくれました。

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