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2019.02.17

F.I.N.的新語辞典

第33回| ホラクラシー

毎週ひとつ、F.I.N.編集部が未来の定番になると予想する言葉を取り上げて、その言葉に精通するプロの見解と合わせながら、新しい未来の考え方を紐解いていきます。今回は、従来のヒエラルキーとは相反する、上下関係のないフラットな組織管理体制「ホラクラシー」をご紹介します。

©ダイヤモンドメディア株式会社

ホラクラシー【ほらくらしー/holacracy】

 

階級や上司・部下の関係が存在しない組織の管理体制のこと。

「アメリカで使われているHolacracyという言葉は、ブライアン・ロバートソンとトム・トミソンが作った役割管理手法のことを指します。かたや日本には2014年頃にホラクラシーという言葉が入ってきて、“フラットでオープンな組織”の総称を指す言葉として広がりました。後者は、ヒエラルキーと対比して定義された組織構造の概念だと考えています。ですので、些末な方法論ややり方などは多様であっていいと思いますし、日本語でのホラクラシーは元祖のHolacracyとは別のものとして扱っていいのではないでしょうか」

 

そう教えてくれたのは、ダイヤモンドメディア株式会社の代表取締役・武井浩三さん。日本ではいち早く、2008年の創業時からホラクラシー経営を行っています。武井さんがホラクラシー経営を実践するにあたって、インフラと呼んで大切にしている3つの要素が“透明性”“流動性”“開放性”。「特に、意思決定プロセスの透明性に関しては細心の注意を払い続けていますし、お金まわりの情報をデータベース化して常に全社で共有することを徹底します」とのこと。

 

では、ホラクラシー型組織のメリット、デメリットは何なのでしょうか。

「メリットは、全体性の醸成や自己組織化などの現象を生み出すことができる点です。デメリットは、強いて言うならば経営者が会社をコントロールできなくなることでしょうか。経営者が独断で運営しづらくなるため意思決定までに時間がかかる場合もあるかもしれませんが、この点だけを抽出してデメリットだということはできないと思います」

 

ホラクラシー型組織は、今後の日本で「間違いなく増えていく」と武井さんは続けます。

「20代の起業家から組織作りについて相談に乗ってほしいと言われることが増えてきましたが、彼らの組織に期待する前提がヒエラルキーではないという共通点に面白さを感じています。デジタルネイティブ世代は、多くの場合、情報が非対称であることに嫌悪感を覚えるようです。ヒエラルキーは、情報が非対称であることが前提に作られている一方で、ホラクラシーは、組織内における情報の非対称性を解消することにより自然発生的に形成されます。大企業や省庁などの大組織から相談を受けることも多いのですが、組織に対する彼らの危機感は、ほとんどの場合、優秀な若手ほど辞めてしまうという理由から生まれています。企業が自らの組織形態を変容させていかないと市場において競争優位性を保てない時代に、すでに突入していると感じています」

 

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