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2025.08.01

第42回| 季節にちなんだ落語を聞いて、夏至の新習慣を考える。

梅雨は一体どこへやら、日差しまぶしく暑い陽気の6月22日の午後、42回目の「未来定番サロン」が開催されました。未来定番サロンは未来の暮らしのヒントやタネを、ゲストと参加者の皆さんが一緒に考え、意見交換する取り組みの場です。

 

今回のテーマは「落語と四季暦」。前日は1年の間で昼間の時間が最も長い「夏至」でした。前半は梅雨が舞台の落語を聴き、後半は夏至の新習慣を考えるワークショップを行いました。落語を披露してくださったのは、林家木久彦さんです。

 

(写真:西あかり)

江戸時代の梅雨が舞台。落語「夢の酒」を披露

涼しげな淡いあさぎ色の着物に身を包んだ林家木久彦さんが、大きな拍手に包まれながら登場。開口一番、「空席が満席の状態で、ありがとうございます」と会場を湧かせます。

 

まずは本日のお天気について。「3カ月前に打ち合わせをした時には、今日は雨の予定だったんですよ。梅雨真っ最中にどういう噺がよかろうかってね。まさかこんなピーカンに晴れると思いませんでね」。

 

未来定番研究所の庭に咲いている紫陽花も太陽の光をいっぱいに受けて輝いていますが、「雨の日は雨の日で困るんですよ」と木久彦さん。

 

「天気と人の心のバイオリズムは連動するようなところもありますから、晴れの日の方がいくらか朗らかな気持ちで落語を聴いていただけるのではないでしょうか」。

 

林家木久彦さんは、笑点でおなじみの林家木久扇師匠の最後のお弟子さん。2025年3月に真打に昇進された注目の落語家さんです。

 

さていよいよ、「夢の酒」。江戸時代の梅雨の頃のお話です。

【「夢の酒」あらすじ】

店の奥でうたた寝をしていた大黒屋の若旦那が、女房のお花に起こされるところから始まります。どうやら若旦那、いいところで眠りを妨げられてしまったよう。お花はどんな夢なのか気になって、若旦那に夢の話をしてほしいと頼みます。

 

夢の内容はこうでした。

 

若旦那が、用事があって向島の方へ出かけると、雨がぱらぱら降ってきました。仕方がないので、軒先で雨宿りをしていると、家の中から妙齢の婦人が出てきて「どうぞ、家にあがってください」と声をかけられます。つい誘われるがまま、家にあがってしまった若旦那。お酒をいただき、三味線を聴いているうちに、なんだかあやしげな雰囲気になって……。

 

それを聞いたお花は嫉妬心から大号泣。騒ぎを聞きつけてやってきた義父に、お花は奇妙なお願いをするのでした──。

若旦那、お花、義父と、それぞれの登場人物を表情や声色で演じ分ける木久彦さん。まるで3人が本当にそこにいるかのように思えてきます。

今回の噺を選んだ理由は、梅雨の時期だからと木久彦さん。雨は、話の中でターニングポイントになることが多いといいます。例えば、雨をきっかけに男女がいい仲になったり、怪しいお化けが出てきたり。落語においての雨はスパイスのような役割を果たしているそう。

季節を感じた落語の後は、二十四節気についての時間。

粋で面白い落語を聞いた後は、場を一転。日本の暦「二十四節気」について学び、夏至の新習慣を考える時間の始まりです。

まずは二十四節気の説明から。現在私たちが使っている暦は、グレゴリオ暦(太陽暦)というものですが、明治初期までは太陰太陽暦(旧暦)を使用していて、1年は354日という今より11日少ないものでした。その季節のなかでもっとも重要とされている「春分」「夏至」「秋分」「冬至」を、まとめて二至二分(にしにぶん)と呼びます。これをさらに分けたものが二十四節気。二十四節気は季節の変わり目を表し、日本人にとって気候や自然との関わりを示す大切なものでした。

 

ここで木久彦さんに落語での季節の表現について伺いました。「例えば、暑い日は扇子であおいだり、手ぬぐいで額の汗を拭ったり。寒い日はよりわかりやすいですね。肩をすぼめたり、袖から手をちょこんと出したりするだけで、寒い季節であることを伝えられます」。

五感を研ぎ澄まし、季節の新習慣を考える。

夏至の新習慣を考える前に、五感の準備運動。まずは触覚と嗅覚を刺激します。

バラの花を大胆にほぐして、花びらの感触や香りをかいだり。実はこのバラは廃棄されるはずだったのを、ロスフラワー削減に取り組む〈tamesiteya〉のraiさんが集めたもの。「茎が曲がっているとか、太さが違うとか、花びらに傷があったりなどの理由で通常の販売ルートにはのせられないお花たちです。ただ捨ててしまうのではなく、今日はこのバラを使ってポプリを作っていきます」とraiさん。

 

参加者からは「生き生きしている花をほぐしたことってないかも」「思ったよりしっかりしていて枚数も多い!」「やさしい香りが心地いい」という声が聞こえてきました。

 

続いて楽しむのは味覚。谷中にある老舗の和菓子をいただきました。ちょうどこの季節に実る青梅を模したかわいい姿と、ほんのり感じるしょっぱさと柔らかさに心躍ります。

皆のアイデアを出しあって、夏至の新習慣を考える

触覚と味覚を感じ、いよいよ夏至の新習慣を皆で考えます。冬至にはゆず湯に入ったり、かぼちゃを食べたりという習慣がありますが、夏至にはそれにあたるものが見当たりません。そこで、夏至の新習慣のアイデアを皆で考えてみました。

 

「TEAM夏(げ)」と「TEAM至(し)」に分かれて、アイデアをどんどん出していきます。ふせんに書いたアイデアがたくさん出そろったところで、アイデアを出した人が内容と意図を説明。それぞれのチームで笑いが起きるなど、初めて会ったとは思えないほど盛り上がりました。最後に、各チームの代表が新習慣の案を発表しました。

「TEAM夏」は、1日の流れを提案。

【TEAM夏】

陽が長いので、2時間遅く1日をスタート

日中はあえて電気を使わず日光浴をして暑さを感じる

夕方ミントを使った水風呂で体を冷やす

耳のマッサージをして体を整える

でもやっぱり暑いので、冷たいハイボールを2杯飲む

ミョウガを肴にする

日が暮れたら電気を消しろうそくを灯す

怪談話で自然冷却

夕飯に夏至カレーを食べる

最後は紫陽花踊りを踊る

踊り疲れたら氷まくらに紫陽花の花びらを入れて就寝する

続いて「TEAM至」の発表です。陽が長いことや夏を楽しむという文脈でアイデアを考えたようです。

【TEAM至】

・夏を楽しむために屋外で熱いそばを食べて汗をかく

・うちわを毎年新調する

・暑いと寝付きが悪くなるので、枕も夏至に変える

・夜が短いので、『夏至寝』というお昼寝を推奨する

・夕方に目覚めたら、花火をしながらクラシック音楽を聴く

・体を冷やす『夏至茶』を飲む

・今後は『夏至辛グルメ』というキャッチフレーズが登場する

・デパ地下の夏至のプロモーションになる?

どれもユニークな夏至の新習慣のアイデアに、両チームともお互い、笑顔と大きな拍手で称えます。

 

落語で始まり、二十四節気・夏至の新習慣を考える未来定番サロンはこれにてお開き。

日本の気候や四季の移り変わりが少しずつ変化しているなか、日本の暦を知ることで、

折々の気候を感じて日々を大切に過ごしていくきっかけとなる時間になりました。

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