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2026.03.20

第46回| 編み物と素材の可能性。やまだななはさんと「ふれあむ」時間。

冬の終わりを告げるような清々しい晴天で、穏やかな行楽日和となった2月の3連休。築100年の古民家で、46回目の「未来定番サロン」が開催されました。未来定番サロンは、未来の暮らしのヒントやタネを、ゲストや参加者の皆さんと一緒に考え、意見交換する取り組みの場です。

 

2026年2月21日(土)・22日(日)・23日(月・祝)の3日間、やまだななはさんを迎え、編み物を通して素材の可能性、資源循環やサステナブルについて考える「ふれあむ」を開催しました。2025年4月に開催した「とくとあむ」では、やまださんの作品とワークショップで、羊毛の問題、素材の大切さや羊の未来について考えました。(記事はこちら)。2回目となる今回は、「織みみ(おりみみ)」と呼ばれる素材を使って小さなバッグを作るワークショップや、編み物のお悩みをゆるっと解決する相談会、アップサイクルファッションの展示などを開催。谷中の古民家を舞台に、編み物をしながら、資源循環やサステナブルについて考える機会となりました。

 

(文:花島亜未/写真:西あかり)

Profile

やまだななはさん

アーティスト。2002年愛知県生まれ。愛知文化服装専門学校アパレル科出身。羊毛を使った作品制作を行い、数々の賞を受賞。主に第59回「全国ファッションデザインコンテスト」で日本綿業振興会賞受賞、「FASHION FRONTIER PROGRAM2022」ではニット作品にてグランプリ受賞など。

Instagram:@moamochiii

手仕事の余韻が残る「織みみ」との出会い

会場の円卓に並べられた、ふわふわ、もこもこ、キラキラした色とりどりの素材たち。今回のワークショップで使う素材は織り物から生まれる「織みみ」です。

 

「織物のみみ」通称「織みみ」は、主に織物生地の両端部分のこと。伝統的な織機の場合、張られた経糸(たていと)に緯糸(よこいと)を通して左右往復するシャトルを用いているので、両端の折り返しには、着物地の縫製に近い「みみ」ができます。しかし時代が進み、近年はスピードを重視したシャトルレス機が主流に。緯糸を一段ごとに切断するため、フリンジのように生地端から経糸がはみ出し、その部分のほとんどは製品として使われずに、裁断・廃棄されてしまうことから「捨てみみ」とも呼ばれています。

やまださんが織みみの存在を知ったのは、とある織物工場の見学がきっかけだったと語ります。

 

「素敵な生地の一部を処分しているという事実を知った時は衝撃でした。織みみで何か編めないかと考えていて、改めて情報収集をしてみると、絹織物の産地の人が織みみについてSNSで発信していたり、ワークショップを通して価値あるものにしようと工夫を凝らしているのを知りました」

 

その後、1,000年以上の歴史を持つ織物の産地、山梨県富士吉田市で開催されていた布の芸術祭「FUJI TEXTILE WEEK(フジテキスタイルウィーク)2025」で運命的な出会いがありました。

 

「掛軸の表装に使われる裂地や、御朱印や御守りに使われている生地などを製造している〈光織物〉と出会いました。織みみを使ったクリスマスツリーやリースを作るワークショップなど、積極的に活動を行っていることにも共感しましたし、何より金糸や銀糸を使った煌びやかな和の生地を織っている工房なので、織みみも素敵だったんです」

問い合わせに快諾していただき、〈光織物〉から譲り受けた織みみに触れてみると、発見と驚きの連続だったそう。

 

「糸の太さや色の重ね方、素材。織みみを見るだけで、生地の背景がわかるものもあれば、しっかりとした生地からは想像できない、ふわふわとした質感だったり。個性があって面白いなと感じました。実際に編んでみると色も奇麗に出て、そして意外と編みやすい!初心者でうまく編めなくても、それが逆にいい味になりそうで。つい夢中になって、届いた2〜3日後には帽子を編んで完成させました(笑)」

会場には、やまださんが作ったマフラーやショール、織みみで作ったバッグなどを展示、販売も。

「端っこ」から始まる、自分だけの織みみバッグ作りに挑戦!

初日と2日目に編み物の可能性、そして資源の循環を考える時間として、織みみを使ったミニバッグ作りのワークショップを開催。取材に訪れたこの日は、まったくの編み物初心者を含めた3名が参加していました。

好きな織みみを選び、バッグの底部分を作るところからスタート。

やまださんがお手本を見せながら、かぎ針を使って鎖編み、細編みを織り交ぜ、編んでいきます。

「編む時のポイントは、目を大きくゆるく作ること。慣れていない人ほど編み目をきつくしてしまって、その後やりにくくなってしまうんです」と、やまださんの丁寧なアドバイスも。

本体部分を編み終えたら、ハンドル部分を編んでいく工程へ。

「編み図の見方が難しいんですよね」「気になる毛糸をすぐ買ってしまうけど、編むのは遅いので溜まっていく一方なんです……」と、編み手ならではのあるある話に花が咲きます。

1時間半ほどで完成!「見る場所によって、織みみの色合いが変化するのもいいですね」と皆さん大満足。

編み物ワークショップに参加された皆さんに感想を聞きました。

 

「やまださんが、編み方以外にもどういう完成形にしたいか?どういうハンドルをつけたいか?などを詳しくヒヤリング&提案してくれたので、だんだん作りたいバッグのイメージが湧いて、形になっていくのが楽しかったです。さっそくこのバッグで帰ろうと思います!」

 

「今年はいろんなことを吸収する1年にしたかったので、未経験の編み物イベントに参加しました。よく見ると、編み目がきついところ、ゆるいところとバラツキが(笑)。でも、従来の細い毛糸は編み目も細かくて、うまく編めてない部分が気になってしまうけど、織みみはいい意味で見えないので、初心者にもやさしい。これをきっかけに、もう少し編み物をやってみようと思います。」

編み物のお困りごとを解決。悩める編みたい人もゆるっと集合!

午後からは「ゆるっと編み物相談会」が開催されました。参加者は制作途中の編み物を持ってきて来場されました。見てみると、レース編み、棒針編み、かぎ針編みなど多種多様。掘りごたつを囲みながら、初対面同士にもかかわらず自然と会話がはじまり、団らんのひとときを過ごしました。

春から大学生という参加者。編み物を溺愛するあまり、家庭用の卓上織り機、さらには自分で糸を紡ぐのにビンテージの糸車も購入したそう。

「妊娠中はセレモニードレスを編んだんです」と、生後2カ月の赤ちゃんをあやしながら参加してくれたママさんも。

現在は、レース編みでエリザベスカラーを制作中。「はじめて使う糸や、編み方がわからない時はYouTubeを見ながら独学で黙々とやっています。編み会だとたわいないお話をしながら、わからないとことはプロの人にすぐ聞けて心強いですね」

前半に続いて参加した方も。「近所の手芸屋でニット帽を編むイベントに参加してみたら、わからないところがわからないくらい難しくて(笑)。直接編みながら、やまださんに相談してみようかと」

やまださんも、参加者の相談に乗りながらフラワーベースカバーを制作。

「編み物を通して織みみを知ってもらい、糸のようにまた誰かに紡いでいくサイクルが生まれてくれたらうれしい」。そんな、やまださんの願いがカタチとなった3日間。編み物を通じ、捨てられるはずだった織みみなどの素材のことや、その価値について、参加者が自然と話し合い、未来を考える素敵な時間となりました。

土間では、やまださんの作品もレンタルができる、大丸松坂屋百貨店発のファッションサブスク「AnotherADdress」の衣類循環アップサイクルプロジェクト「roop」の洋服の展示も。

「AnotherADdress」は、月額制で好きな服をレンタルでき、購入も可能。土間は「roopAward 2025-2026」の映像と、実際にレンタルできるやまださんが手掛けた作品やグランプリ受賞作を実際に手に取ったり試着ができる空間に。

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