もくじ

2019.05.08

谷中日記

第13回| 欧米人が集う町、谷中

インバウンドでごった返す東京。

銀座や渋谷、新宿にはアジア系を中心に外国人が溢れている。

巨大な商業施設を求めているのか、目新しいショップを求めているのか、ラーメンや居酒屋など日本の食を求めているのか。

しかし、ここ谷中におけるインバウンド事情はちょっと異なる。カメラを抱えたバックパックの欧米人が圧倒的に多い。未来定番研究所の前を通る外国人から聞こえてくる言語は、なぜかフランス語が多いのだ。フランス人にとって谷中の何が魅力的なのだろう。

オランダから来た人を案内するガイドさんに聞いてみた。なぜここに?

「日本の観光地は見たくない。買い物もしたくない。日本人が暮らす町を見たい。」のだという。

これがヨーロッパの人が谷中に来る理由のようだ。文化の成熟した欧米人にとって、日本でありきたりの観光や買い物には興味が無い。欧米人から見た日本はミステリアスであり、そんな日本人の暮らしを知りたいのだ。

とりわけフランス人が多いのは、アニメやコスプレといったヲタク文化が入り口で日本に興味を持つ事もあるかもしれないが、一部だと思う。そもそもフランス人はヨーロッパの中でも日本文化に憧れていると言われている。日本人がフランスに憧れているように。華美な文化のフランスと侘び寂びの地味な日本は対照的であるが故に自分とは正反対のものに憧れるのかもしれない。そして、こんなに谷中が人気なのは、きっとフランスのガイドブックか雑誌に谷中が紹介されているのではないかと思う。

 

たまたま先日、パリに住む友人から日本にルームメイトが行くから東京を案内して欲しいと依頼された。フランス語はおろか英語も怪しいのにそのフランス人を連れて浅草からかっぱ橋、谷中を案内した。彼女が興味を示したものは、古いお寺と現代建築の対比、達磨、招き猫、包丁、塗のお箸、日本茶。全て普通のお土産物ではなく、本物でセンスの良いものばかり。中でも日本茶が大好きなので買って帰りたいと言う。谷中銀座の日本茶のお店に連れて行くと、お店の人をしっかりつかまえ、お茶の種類とそれぞれの淹れ方について熱心に聞き、メモをした。そして友達へのお土産も含めて大量に買って帰ったのだ。本人は、なぜか麦茶が好物だったようだが・・・

つまり、こちらが思う以上に日本の文化について興味を持っているし、来る前から学んでいる。フランス人には日本マニアと呼べる人も多い。そんなフランス人はじめとする欧米人にとって、日本文化がコンパクトに凝縮された場所が谷中なのだろうと思うのだ。

お茶屋さんで日本茶をたしなむ。

たこ焼きに興味津々。

自分の名前のハンコを探す集団。

夕焼けだんだんは記念写真のメッカ。

(未来定番研究所 今谷)

もくじ

関連する記事を見る