2022.02.25

つながり

子ども向けSNS開発者・本山勝寛さんに聞く、「子ども達がつながると何が生まれる?」。

今や、誰もが使っているSNS。日本では2000年代初期に登場し、細分化、進化をとげながら、コミュニケーションの場やツールとして欠かせないものになっています。家族や友人間はもちろん、コロナ渦ではビジネスでの利用も拡がり、ますます生活の一部となってきています。

 

そんな中、2022年夏に向けて、教育イノベーター・本山勝寛さんが、子ども向けSNSサービス〈4kiz(フォーキッズ)〉の開発を進めています。一般的なSNSの多くは、13歳以上という利用者の年齢制限がありますが、デジタルネイティブの時代に生まれた子どもたちにとって、もはやSNSはごく身近な存在に。それを避けるのではなく、どう向き合うかが重要になってきます。その適正なツールとして生まれようとしているのが、〈4kiz〉です。本記事では、開発のためのクラウドファンディングが達成された2022年1月、本山さんに、〈4kiz〉によって変わる子どもたちの未来像についてお話を伺いました。SNSでつながることによって、未来ではどんな子どもたちが「定番」となるのでしょうか?

 

(イラスト:yamamori)

「これ見て!」と創造力を発揮する子どもたちが増える。

現在開発中の〈4kiz〉は、子どもたちが作った絵やブロック、写真、自由研究、プログラミングなど“作品”を投稿していくことができるSNSです。この仕組みで子どもたちの創造力が育まれると思うんです。

 

私はこれまで日本財団で「子ども第三の居場所」づくりに携わったり、子どもたちと一緒に絵本を作るワークショップを開催したりなど、教育や支援事業に関わってきました。そのなかで感じていたのは、やはり日本の教育は、インプットに留まっているということ。例えば、先生から知識を教わる、インターネットの活用方法も「YouTubeを視聴する」といった受動的なものが多いですよね。発表といえば、夏休みの自由研究のような機会しかないわけです。これからの時代は自分で考えてものごとを作り出す、つまりアウトプットの力が求められます。ですが、そもそもその力を育む“機会”が与えられていないのが問題です。

 

そこで、〈4kiz〉は子どもたちにとって、アウトプットをする場所にもなってほしいと思っています。SNSは投稿した人、それを見る人が相互に発信しますよね。投稿した作品に対して「よくできたね」「ここが面白いね」「工夫したね」というコメントやフィードバックがもらえると、子どもにとって成功体験になります。そこから、「また作りたい」「次はもっと工夫しよう」など次のアクションにもつながり、子どもたちのアウトプットの力や創造力が蓄えられていく。〈4kiz〉を通して、受動的に教わるだけでなく、ものごとを自由に考え、道を切りひらいていく子どもたちが増えるといいなと思っています。

小学生の「研究チーム」や「クリエイティブユニット」が誕生する?

子ども用のSNSでは、好きなものを共有できるコミュニティが生まれることも期待しています。

子どもが日常生活でコミュニケーションを取る相手は、基本的に家族と学校や習い事の先生、クラスメイトと限られている。時に子どもたちの好奇心が、大人も知らないほど深く、そしてニッチな世界へ飛躍していくこともありますが、そうした時に、その好奇心を共有できる相手がその中にいるとは限りません。

 

しかしSNSで作品を発表していくことで、自ずと子どもたちの「好きなもの」「感性」が見えてきて、共通の趣味をきっかけに友だちになることもあると思うんです。子どもたちは行動範囲が限られているため、リアルな場で出会い集合することが難しい。でもオンラインであれば、地域を超え、全国の子どもたち、さらには国境を超えて世界の子どもたちとつながれますしね。

 

例えば、SNSを通じて、同じ感性を持った友人と出会い、一緒に音楽やミュージックビデオを作ってみるとか。いまなら場所が離れていても、各々の映像や演奏を組み合わせて、1つの作品をつくることができますしね。さらには、ひとりで昆虫の研究に勤しんでいた小学生が、SNSを通じて同じく昆虫好きの子どもと出会い、その輪が広がり全員小学生の昆虫研究チームが生まれる、なんてことも、あるかもしれませんね。

好奇心を育む、いろいろな大人たちに出会える。

〈4kiz〉では、出会う友だちの幅が広がるだけでなく、出会える「大人」の幅も広がる仕組みを考えています。公式アカウントとして、その道のプロの大人に入ってもらおうと計画しているんです。

基本〈4kiz〉のユーザーは子どもだけです。ですが、『香川照之の昆虫すごいぜ!』のカマキリ先生や魚類学者のさかなクンのような、子どもが話を聞いてみたい大人に公式アカウントとして入ってもらいたいと思っています。

 

好奇心に貪欲な時期に、好きなことや将来やりたいことが見つかったのなら、その道のプロの人とつながることで、可能性が広がると思うんです。憧れの先生たちに直接ギモンを投げかけ交流するためにも、SNSは有効だなと思っています。

親は、子育てが楽しくなる。

もうひとつ期待しているのは、子どもがアップした投稿を、親も楽しめるのではないかということ。日々育児に追われる親たちは、せっかく子どもに「見て見て!」と言われても、忙しさから楽しむ余裕が持てないこともありますよね。そのような時に、他者からの反応は、親の背中を押してくれるのではないかと思っています。子どもが投稿した作品に対する反応は、子どもはもちろんですが、親にとっても嬉しいもの。私自身も子育てをしていて、大変なことも、嬉しかったことも、子どものことを親同士で共有し合うと、気持ちが楽になることがあります。そういうやりとりを、子どものアカウントを通じてオンライン上で行っていくという感覚でもあるのかなと。親の気持ちに余裕が生まれることで、親子のコミュニケーションの活性化につながるといいですよね。

 

それから、毎日子どもに接していたとしても、「うちの子って何が得意なのかな」「どんな個性があるのかな」と、意外にわからないこともあるかと思います。もしかすると、外部からコメントをもらうことで、親が気づいていなかった子どもの秘めた才能を、見つけるきっかけにもなるかもしれません。

Profile

本山勝寛さん

株式会社4kiz 代表取締役 CEO。東京大学工学部システム創成学科知能社会システムコース卒業、ハーバード教育大学院国際教育政策修士課程修了。日本財団で、教育や人権、国際協力、障害者支援、パラリンピック支援、子ども支援事業を手がけ、パラリンピックサポートセンターのディレクター、子どもサポートチーム、人材開発チームのチームリーダーを歴任。2021年11月に退職し、独立起業。著書には、『そうゾウくんとえほんづくり』(KADOKAWA)、『好奇心を伸ばす子育て』『最強の独学術』(大和書房)、『16倍速勉強法』(光文社)など多数あり、韓国、台湾、中国、タイなどでも翻訳出版されベストセラーに。5児の父親でもある。

【編集後記】

振り返ると、私も小学3年生の時に親友2人と「きのこ探偵団」というチームを作り、きのこ図鑑を手に持ち、ひたすら山の中で珍しいきのこを探しに行くという事をしていました。きのこ好きの子どもと繋がり、その道のプロにもお話が聞ける場があれば今も続けていたかもしれません(笑)

子どもたちは接する相手、行動範囲が限られているからこそ、垣根を超えた”好き”で繋がる場が必要であると、本山さんのお話をお伺いして感じました。

(未来定番研究所 小林)