2021.05.26

未来の住まい定番を発見!5年先のインテリアカタログ。<全3回>

第3回| 作原文子さんが教えてくれた、長く使いたくなる家具の見つけ方。

遠隔で働けるようになり、家で過ごす時間がより一層増えました。今後、住まいを考える上で、アクセスの良い土地よりも、部屋で快適に過ごせる家具の方が重要なポイントになるかもしれません。そこでF.I.N.では、理想の住まい環境を追求するクリエイターに「5年先も使いたい家具」についてお話を伺い、未来の心地よい暮らしについて考えました。

 

第3回目にお招きしたのは、枠にとらわれないミックススタイルで、生活感のある心地よい空間を作り出す、インテリアスタイリストの作原文子さん。雑誌や映画美術、広告など幅広い媒体でスタイリングを手がける作原さんに、未来の定番になりそうな家具選びについて伺いました。
(イラスト:糸井みさ)

最近、「私たちはこれから先も、新しくものを買い続けるのだろうか」と、よく考えます。ものを廃棄したくない気持ちが以前に増して高まってきたし、何より今持っているものをどうアレンジしていくかを楽しんで考えることがとても大切な気がするからです。例えば、ちょっと寸足らずなカーテンも、遊び心のあるアイテムをレールにプラスして丈を調整してみるとか。ラグにするにはサイズが小さすぎる布は、2枚重ねたり繋げたりして、自分だけのオリジナルラグにしてみようとか。そうやって、今あるものの組み合わせをあれこれ考えることでも、部屋を充実させることに繋がると思うんです。

 

だから、この先、新たな家具を迎え入れることがあるなら、周りに置くアイテムを柔軟に受け入れてくれるような家具を選びたいですね。例えば、たくさんの人に長く愛されている〈PACIFIC FURNITURE SERVICE〉の家具は、撮影で部屋をスタイリングする時によく使わせていただくのですが、どんなテイストの空間であっても、他のプロダクトと合わせて置くだけで、全体のバランスをとってくれます。それはなぜかと考えると、その家具自身にちゃんとオリジナリティがあり、なおかつ、他のプロダクトを受け入れる余裕がある。だから、私が作りたい空間にもマッチしてくれるのかなと。もちろん、憧れのブランドやデザイナーさんのプロダクトを手に入れたくて、それを目標に時間をかけて購入する、そんな出会い方も素敵です。どちらにしても、今の自分の生活にフィットしなかったら、お気に入りのものが置いてあっても、居心地の良い空間にはなりませんよね。部屋に住まわされるのではなく、家具や小物と「共に暮らす」感覚を持つことが大切だと思います。

 

さらに、「とりあえず」という感覚をなくして、「好きだから」で選んでいくこと。「誰かがおすすめしていたから」ではなく、自分の「好き」を軸に決めていけば、自ずと空間に統一感が出ます。そして、一つひとつのアイテムにも愛着が湧いて長く使いたくなる。ここで重要なのは、値段が安いとか高いとかはあまり関係ないということ。値段に左右されてモノを購入してしまうよりも、空間全体が自分らしく調和できているかのほうが大切だと思うんです。例えば、同じ空間に1,000円と100,000円のものが混在していても、好みとか考え方が活かされていれば、とびきりその人らしい素敵な部屋になるはず。

 

住まいに限らず、あらゆる局面で選択肢の幅が広がったことで、自分で決める意思の持ち方がより重要になってきていると思います。インテリアへの興味や好きという気持ちを掘り下げていくと、部屋の空間、そして暮らし全体の居心地が良くなっていくのではないでしょうか。

Profile

作原文子さん

インテリアスタイリスト。岩立通子氏のもとでアシスタントを経験した後、1996年に独立。雑誌、カタログ、TV-CM、エキシビション、ショップディスプレイ、舞台や映画美術などのスタイリングを中心に活動。手掛ける雑誌は、インテリア誌、女性誌、男性誌と幅広く、日本のインテリアスタイリストとして第一線で活躍。「Found MUJI青山」、「INTERSECT BY LEXUS – TOKYO」のウィンドウディスプレや、企業の展示会の空間ディレクションなども行う。

編集後記

家で過ごす時間が増え、居心地の良さを求めて「とりあえず」「間に合わせ」で家具を選んでしまうことが減っていき、ブランド・価格や周りの評価ではなく、自分の生活に対する想いや価値観に沿った家具選びのために、自分のことをより一層知る思考の時間が今後求められるのだと思いました。

(未来定番研究所 織田)

未来の住まい定番を発見!5年先のインテリアカタログ。<全3回>

第3回| 作原文子さんが教えてくれた、長く使いたくなる家具の見つけ方。