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2018.06.18

空想百貨店。<全17回>

第1回| 龍崎翔子さんが考える、美容・健康サービスフロア

様々なECサイトの登場、テクノロジーの進化により、買い物環境は日々変化しています。リテールビジネスの店舗はこれから、どんな場所になったらいいのでしょう。

私たち「未来定番研究所」は、大丸松坂屋百貨店の部署のひとつとして、未来の百貨店のあるべき姿を日夜考えています。この企画では、多様なジャンルで活躍するクリエイターの皆さんの力をお借りして、未来の百貨店を自由に空想してもらおうと思います。

今回お招きしたのは、現役東大生のホテルプロデューサー・龍崎翔子さん。既存の枠に捉われない自由な発想で、ホテル業界の常識を塗りかえてきた龍崎さんに、「これからの百貨店がどうあったら面白いのか」、アイディアをいただきました。

(イラスト:黒猫まな子)

百貨店はこれから、「ものを買う場所」ではなく、「サービスを享受する場所」という立ち位置で、いかに空間に滞在してもらうかを追求すべきではないでしょうか。やってみたいのは、美容、健康サービスの“平場化”。美や健康にまつわるサービスをトータルで提供してくれる空間があったらいいなと思います。エステやケミカルピーリングのような施術を受けられたり、“街の保健室”的な健康相談窓口があったり、ジムでトレーニングができたり、一方、そのすぐ横では新作の化粧品が買えたり……。今は、医療モールが流行っていますが、それぞれの医療機関が独立していて、営業時間や休診日もバラバラ。それぞれ調べて、別の医院に行くのは、正直面倒くさいですよね。それは、ヘアやネイル、エステなどの美容の分野でも同じ。館の統一ルールに則ったテナントが、オープンな空間で境界なくフラットに混在できたら、すべてのサービスをひとつの空間で完結させられるので、ECサイトが定番となった今の時代に、わざわざお店に足を運ぶ理由になると思うんです。さらに広げれば、出産を終えたお母さんが赤ちゃんと一緒に泊まれるような、産後ケア施設をやるのも面白いかも。出産は病気ではないので、特段病人扱いをされる必要もありませんよね。お母さんは健康面でのサポートを受けつつ、食事や館内着など、心地良く過ごせるようなサービスが提供され、空き時間にはエステやネイル、子育て講座なども受けることができたらいい。いずれは親子で百貨店に愛着を持ち、ライフイベントに合わせて訪れてくれるような、生涯顧客ともなってくれるかもしれません。単なる通過点となってしまう買い物空間だけではなく、サードプレイス的な要素を百貨店の中に盛り込むことで、空間を持つ意義がより強くなると思います。

Profile

龍崎翔子/ホテルプロデューサー

1996年生まれ。2015年にL&G GLOBAL BUSINESS Inc.を立ち上げる。「ソーシャルホテル」をコンセプトに掲げ北海道・富良野の「petit-hotel #MELON 富良野」や京都・東九条「HOTEL SHE, KYOTO」をプロデュース。2017年9月には大阪・弁天町でアナログカルチャーをモチーフにした「HOTEL SHE, OSAKA」を、2017年12月には北海道・層雲峡でCHILLな温泉旅館「ホテルクモイ」をオープン。

https://www.hotelshekyoto.com/

 

編集後記

ブランドごとの垣根を取っ払って回遊性を上げる、いわゆる「平場化」は、どちらかといえば、百貨店ではファッションや雑貨などの売場を作る手法です。でもそれを医療など今までにないジャンルに持ち込み、一見脈絡のないモノや売場とも合わせて組みなおし、新しいサービス空間にするというアイディアは、今どきの医療のエンタメ化や予防医療という時流も捉えていて、思わず唸っちゃいました。

この考え方で既存のサービスを見直して再構築してみると、ひょっとしたら他にも色々あるのかもしれません。龍崎さんのアイディアをヒントに、新しい価値を持つ場の創造についての未来、あれこれ空想してみたいと思います。

(未来定番研究所 前川)

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