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2018.07.13

空想百貨店。<全17回>

第2回| 佐久間宣行さんが考える、80年代リバイバルフロア

様々なECサイトの登場、テクノロジーの進化により、買い物環境は日々変化しています。リテールビジネスの店舗はこれから、どんな場所になったらいいのでしょう。

私たち「未来定番研究所」は、大丸松坂屋百貨店の部署のひとつとして、未来の百貨店のあるべき姿を日夜考えています。この企画では、多様なジャンルで活躍するクリエイターの皆さんの力をお借りして、未来の百貨店を自由に空想してもらおうと思います。

今回お招きしたのは、テレビプロデューサーの佐久間宣行さん。「ゴッドタン」をはじめとし、数多くの人気バラエティ番組を手がけてきた佐久間さんに、「これからの百貨店がどうあったら面白いのか」、アイディアをいただきました。

(イラスト:草野碧)

ネットショッピングが当たり前の世の中なので、百貨店は、買い物の場所としてだけでなく、行くこと自体が楽しいような、アトラクションのような場所になって欲しいと思います。特に、僕が百貨店にあったらいいなと思うのは、昔のテレビや映画などの映像を、当時っぽいの空間で見ることができるスペース。今は、ネット配信サービスも台頭し、あらゆる映像を誰でも簡単に見ることができますよね。でも、例えば「8時だョ!全員集合」みたいな昔の番組をPCの画面で見るのも、映画館のようなどでかいスクリーンで見るのも、どこか味気ない気がするんです。具体的には、フロアの中に、1970年代、80年代、90年代と、それぞれの年代ごとの男の子の部屋、女の子の部屋があって、ブラウン管のテレビや、アイドルポスターなど、当時の空気感や匂いを味わいながら映像を楽しめたらいいですね。今は映像に限らず、音楽やファッションなど、あらゆるジャンルでリバイバルの流れがあると思うので、百貨店に行って、80年代のテレビを見ながら、80年代のファッションを楽しみ……、フロア全体として当時を感じつつ買い物ができたらなお良し。ネットからもVRからも得られない、”匂いのする体験”ができる空間になれば、つい行きたくなってしまう人も多いのではないでしょうか。

あとは、個人的な希望をひとつ。僕は、試着が面倒くさいんです。しかも、ファッション音痴なので、自分が着てみても、それが良いんだか悪いんだか分からない。だから、百貨店に行ったら、いろんな体型の人が「試着マン」としてずらっと並んでいて、自分と似たような体型の人がとして代わりに試着をして見せてくれたらいいな。その人を1時間千円くらいで借りられて、買い物中ずっとくっついてきてくれて、いろいろ着替えてくれて……。イメージしやすいように、できるだけ冴えない奴がいいですね。「試着マン」が新しい職業に加わる日が来るかもしれないですよ(笑)。

Profile

佐久間宣行/テレビ東京番組プロデューサー・演出家

1975年福島県生まれ。早稲田大学商学部卒業後、1999年にテレビ東京に入社。『TVチャンピオン』などで経験を積みながら、入社3年目に異例の早さでプロデューサーとして抜擢される。『ゴッドタン』や『NEO決戦バラエティ キングちゃん』、『おしゃべりオジサンと怒れる女』など数々のバラエティ番組で斬新な企画を展開。著作に『できないことはやりません ~テレ東的開き直り仕事術~』(講談社)。

編集後記

「体験」がこれからは大切と言われて久しいですが、つい目がいくのはデジタルなどを駆使した先を行くものだったりして、昔のものをまるごと肌で体験するのが新しいという発想は見落としがち。佐久間さんのアイディアは、まるでタイムマシン的テーマパークみたいでユニークです。

あと、試着が面倒という方、多いですよね。もともと男性はその傾向が強いのですが、最近は男女問わず若い方も増えているよう。サイズ確認さえできれば試着なしでOKという考えも、単にファンクションを満たすためだけならいいかもしれませんが、実際に身につけたときの服の醸し出す雰囲気やオーラはリアルには感じられないはず。それならば佐久間さんのアイディアの様に、試着自体を面倒くささから解放しつつエンタメ的な体験にし楽しいものにするというのは、実店舗を持つ私たちの大切な使命なのではないか?と今回改めて考えなおすきっかけになりました。

(未来定番研究所 前川)

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