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2018.10.01

空想百貨店。<全17回>

第4回| アフロマンスさんが考える、試着パーティー

様々なECサイトの登場、テクノロジーの進化により、買い物環境は日々変化しています。リテールビジネスの店舗はこれから、どんな場所になったらいいのでしょう。

私たち「未来定番研究所」は、大丸松坂屋百貨店の部署のひとつとして、未来の百貨店のあるべき姿を日夜考えています。この企画では、多様なジャンルで活躍するクリエイターの皆さんの力をお借りして、未来の百貨店を自由に空想してもらおうと思います。

今回お招きしたのは、パーティークリエイターのアフロマンスさん。「泡パ®」や「Slide the City」など、数多くの体験イベントを手がけ、世の中に驚きと熱狂を提供してきたアフロマンスさんに、「これからの百貨店がどうあったら面白いか」、アイディアをいただきました。

(イラスト:黒田愛里)

売り物の洋服を試着したまま参加できるパーティーを開催するのはどうでしょう。売り場の横に、実際に使うシチュエーションを作るという考え方です。洋服売り場で試着をすると、出口がパーティー会場になっているんです。試着した人がそのままランウェイを歩いたり、お酒を楽しんだり、DJブースで音楽を楽しんだり……。グラスや器、食品など、百貨店内で売っているあらゆる商品をトライアルできたらいいですね。もちろん試着なので、そこで着た洋服は買っても買わなくてもOK。パーティーに参加した後に自由に決めることができるんです。百貨店はものを売り買いする空間なので、試飲会や実演販売など、どうしても”ものを売ること”をメインに考えた企画が多くなると思います。ですが、参加費をとってでも、楽しい体験をメインにイベントを作っていけば、自ずと売り上げもついてくると思うんです。ディスプレイされている洋服から選んだり、狭い試着室で着てみて悩んだりするよりも、ずっとイメージも湧くと思いますし、パーティーの思い出も相まってより欲しくなるのではないでしょうか。もしかしたら、試着パーティーに参加することを言い訳に、普段は手が伸びないデザインやカラー、ブランドの洋服にも積極的になる人も増えるかもしれませんよね。純粋にパーティーを楽しんでもらうことは、お客さんの興味の間口を広げることにも繋がると思います。

また、そこから派生して「試着ランチ」なんていうサービスも面白いかも。OLさんがお昼休みの1時間にちょっと百貨店に寄る。気になる洋服を選んで、料理を注文して、着替えている間に料理が出来ているみたいな。素敵なお洋服を試着した状態で、美味しいランチを味わい、友達と写真を撮ってSNSにアップ。お昼のたった1時間でも、気分がガラッと変わってリフレッシュできると思います。百貨店は、食から洋服、日用品まで、あらゆる要素がひとつの建物の中に共存している珍しい空間。この試着ランチで、今まで独立していたレストランとアパレルを結びつけて考えたように、各要素ミックスすることで、いろいろな境界が曖昧になっている今の時代に合った、新しい体験が提供できるのではないでしょうか。

Profile

アフロマンス/パーティークリエイター

ソーシャル時代のインサイトを捉えた体験の設計、メディアやSNSの情報の設計、新感覚の空間プロデュースなど、世の中に新しいワクワクを提供するべく活動中。実績としては、2012年以降、「泡パ®」の名称で泡パーティーを全国に展開。他にも、街中を巨大ウォータースライダーに変える「Slide the City」やハウスミュージックに合わせてマグロをさばく「マグロハウス」など、プロジェクトは多岐に渡る。

http://afromance.net/

編集後記

棚に陳列していても、売れるまでは効果を生まない商品在庫。それなら有効活用してみては?と、モノ売りの概念に固執していては、生まれないアイデアをいただきました。

購入に至る前の「試着」の部分にフォーカスして発想を広げると、こんなにもユニークなことが考えられるのですね。まだまだ他の部分にもチャンスを感じます。

また、旅行などを筆頭に、後払いビジネスも広がってきているそうです。まずはお客様に楽しんでいただくことを最優先することで、企業やサービスへの満足度が高まるのかも知れません。

(未来定番研究所 佐々木)

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