2021.10.12

借りて、遊んでみた。キャンピングカーレンタルの旅で見えた“景色”とは?

アウトドアブームを受けて、昨今では「バンライフ」も注目を集めています。バンライフとは「バン(van)」と「ライフ(life)」を掛け合わせた造語で、クルマを中心としたライフスタイルのこと。クルマですべての生活を送っている人、自宅と車中泊の生活を両立する人、休日旅の移動や宿泊手段として活用している人など、その定義はさまざまです。そしてバンライフをもっと気軽に楽しめるような、キャンピングカーをレンタルして旅をするというスタイルも普及してきています。

 

その人気に一役かっているのが、Carstay株式会社が2018年から提供する、車中泊スポットのシェアサービス「カーステイ」です。Carstayはその他にも、キャンピングカーを含む車中泊仕様の車に特化したレンタカーとカーシェアのサービス「バンシェア」も提供。現在、登録しているキャンピングカーは200台以上という国内最大級の規模となり、車中泊スポットは日本全国で300箇所を有しています。自身もプライベートでバンライフを送っているというCarstayの広報、中川生馬さんにお話を伺いました。

 

「車中泊が可能なクルマがあれば、公共交通機関や宿泊施設が乏しい地方でも旅は十分に可能です。だからこそ車中泊スポットの取り組みは、地方活性化にもつながると自治体からの問い合わせも増えています。その一例として、現在、広島県三原市でバンライフを通して、「カーステイ」のプラットフォームを利活用し、三原市を活性化するプロジェクト「車内寝泊計画」が進行中です。さらに言うと、人間だけでなく、ペットとの旅も気兼ねなく叶えることができるのも人気が高まっている理由の一つだと思います。インフラが豊かな時代だからこそ、うまく活用すればクルマで暮らすということも充分に実現できるんです。バンライフという新しいライフスタイルは、今後より豊かに広がってくると思います」

 

そこでF.I.N.編集部では、バンライフがいかなるものかを体験すべく、実際にキャンピングカーのレンタルを1泊2日で試してみました。ここからは、目的地を決めるという旅の準備から宿泊するまでの中で、これまでとは異なる旅行体験の気づきについて、つづっていきます。

「車中泊できる場所を探す」という、旅の入り口が新鮮。

今回の旅を構想するにあたって、はじめは「星がきれいに見える」「湖畔」と旅の目的から探していましたが、「カーステイ」の「車中泊スポットを探す」を覗いてみると、僻地やニッチな場所があることに気づきました。もちろん目的があってキャンピングカーをレンタルするという流れが基本かもしれませんが、車中泊が可能なスポットからの逆引きリサーチをしてみると、それだけでいつもの旅とは違う新鮮さが味わえます。

 

そうしてF.I.N.編集部が旅先に決めたのは、静岡県沼津市の「The Old Bus」です。伊豆半島の付け根に位置しており、駿河湾に浮かぶように佇む富士山とノスタルジックなバスがある風景に一目惚れ。とはいえ、地図をチェックしてみると海岸線沿いの道路しかなく、ここで車中泊が本当にできるのだろうかと、ほんの少し疑問も……。

※「The Old Bus」の敷地に宿泊する際には予約が必要です。

パーキングで味わう、いつもと違う「マイカー」体験。

出発日、まずはキャンピングカーのレンタルです。今回借りるのは、1965年創立のアドリア社のキャンピングカー。アドリア社はスロベニアに最先端の設備を誇る専門工場を構え、スマートなデザインと機能美で人気が高いブランドです。

 

キャンピングカーのオーナーとは、とあるサービスエリア内で合流。具体的な待ち合わせ場所は決めておらずでしたが、駐車場にはいると一目瞭然。一般的な乗用車の大きさや外観とは明らかに異なる存在感に、すでに興奮&若干の優越感を感じました。

 

これは道中で立ち寄ったコンビニの駐車場でも同じこと。周囲の人たちがキャンピングカーに視線を送っていることがはっきりと感じられて、厳密にいうとマイカーではないのですが誇らしさや優雅な気分を味わえました。この高揚感も、キャンピングカーの良さの一つかもしれません。

キャンピングカーのオーナーに聞く、その魅力とは?

このキャンピングカーの持ち主、小暮哲也さんにもお話を伺いました。

「僕が最初にキャンピングカーの旅を経験したのはカナダでした。5日間レンタルして妻と一緒に旅をしたのですが、これがとても良かったんです。

 

元々キャンプも好きでしたが、やはり雨の時など、しんどいこともあるじゃないですか。その点キャンピングカーはアウトドアを満喫しながらも、天候に左右されず、さらにテントにはない安心感があります。またいつかキャンピングカーで旅をしたいと、妻とは話していたんです。

 

きっかけになったのは、子供が生まれたこと。さらに愛犬もいるので、家族みんなで自由に旅を楽しむにはキャンピングカーがいいのでは?と、購入に至りました。

 

キャンピングカーは、高速道路の料金も乗用車と同じですからね。いつか日本各地を、家族みんなで巡りたいです」

 

背の高いキャンピングカーが、高速料金は普通車と同じ扱いとは驚きです。さらにガソリン代が一番安価なディーゼル車(車種によって異なる)というのも魅力です。

キャンピングカーだから、人気のない僻地でも宿泊が可能に。

さて、旅の続きです。乗用車よりも車高のあるキャンピングカーなので、いつも走る道も視点が変わり、とても新鮮。道中もワイワイとおしゃべりを楽しみました。

 

海沿いにキャンピングカーを走らせていると、ふいに現地に到着。思わず「えっ、ここ?」とつぶやいてしまったのですが、Webで見たノスタルジックなバスが我々を出迎えてくれました。「The Old Bus」は、まさに目の前が駿河湾。真のオーシャンビューが広がっています。

 

しかしながら、ここはともすれば、さびれた県道沿いなどでよく見るデッドスペース的な場所。普通であれば通過してしまう道沿いの風景であり、ましてや宿泊ができるなんて想像もできない場所です。一般的な旅の規制概念では見落としていた場所すらも、宿へと変えることができるのが、キャンピングカーの大きな魅力。「カーステイ」の広報、中川さんがおっしゃっていた「好きな場所を宿にできる醍醐味」をビシビシと感じます。

街灯も少ない穴場の宿では、独特の時の流れが体感できる。

到着時には厚い雲に覆われていた富士山が、日が暮れるのと同時に少しずつその姿を見せてくれました。とはいえ、街灯も少ない場所ゆえに、街中よりも辺りが暗くなるのが早く、富士山はあっという間に闇の中へ。気づくと、夏の終わりを必死に訴えるかのように鳴いていたセミの声が消え、静かに響くのは虫の声とおだやかな波の音だけ。

 

対岸の街の灯りが輝きはじめると、キャンピングカーの周囲もしっとりとした闇に包まれました。一般的な宿泊施設に泊まると、外の風景の変化というのは、意識的にしっかりと眺めないと気づきにくいもの。しかし日中から闇夜へ、夏から秋へと、時間や季節が大きく巡る雄大な流れを感じられるのは、屋外で過ごすからこそといえます。

キャンピングカーの旅だからこそ巡り合った、ノスタルジックな夜。

この場所の主である“バス”は、じつは第3の人生をここで送っています。「The Old Bus」という名の通り、1979(昭和54)年に、浜松市を中心に運行する「遠鉄バス」として始動。現役生活を終えた後に車両は改造され、横浜で30年ほど「バスバー」の愛称で、バーとして営業していました。そのオーナーから譲り受け、現在の地で新たな人生をスタートしたのが2019年1月のこと。

 

車内はカウンター席とラウンジ席があり、バスの天井にはこれまで訪れた人々の名刺が隙間なく貼られています。斜めのデザインが愛らしい車窓から静かに聞こえる波音に耳を澄まして、グラスを傾ける……。キャンピングカーの旅だからこそ巡り合った「The Old Bus」のオーナー夫妻とも語り合いながら、夜は更けていきます。

山の上に行かずとも拝める、満天の夜空。

夕暮れとともにスタートした夕食&語り合いのひとときもそろそろ終わりです。片付けをしながらふと空を見上げると、そこには満天の星が……。周囲に建物などが少ない僻地だからこその、まるでプラネタリウムのような夜空が広がっていました。

 

非日常の旅と夜空の美しさに興奮した一行ですが、早朝の富士山を眺めるために23時頃には就寝。

 

キャンピングカーのベッドに横になると、そこはもうマイハウス。やはりキャンプでのテントよりも守られている感じがしっかりあるため、すぐに眠りにつくことができました。

キャンピングカーだからこそ叶う、真のオーシャンビュー。

目覚まし時計がなる直前に、自然と目が覚めました。シュラフから飛び出し、キャンピングカーの後方ドアを開いた途端に目に飛び込んできたのは、雲一つかぶっていない富士山。寝起きの目を凝らしてよく見てみると、山頂がうっすら白くなっています。スマホで調べてみると、なんと、この日は初冠雪を観測したというニュースが。(後日、この「初冠雪」は、山頂付近での気温が基準に満たされなかったということで見直されることに。けれど、山頂に積雪した富士山を見たことには変わりないので、非常に神々しい富士山を眺めることができたF.I.N.編集部は幸運に恵まれていました)

 

それにしても、眼前どころか一歩先は海です。これこそ真のオーシャンビューといえるのではないでしょうか。波音を静かに聞きながら、深呼吸をすれば冷たく清らかな空気が身体中に満ちていきました。先ほどまでホテルに泊まっているかのように安心して熟睡していましたが、扉を開けたらそこは海。車中泊のフリーダムさに、改めて新しい旅の可能性を感じました。

時を忘れて富士山を眺めていると、少しずつ辺りが朝焼けに染まっていきます。富士山の山肌もうっすら赤く照らされ、対岸の街にそびえ立つ建物群の窓は日の光を反射して煌めいていました。刻一刻と変化する朝の風景を、キャンピングカーのなかでシュラフにくるまりながら観察。夕暮れとはまた趣が異なる風景とその変化が、キャンピングカー旅の思い出として刻まれました。

キャンピングカー併設のキッチンで朝食作りを楽しむ。

日が登るにつれ、少しずつ雲がでてきて富士山にかかるように。空気の冷たい早朝だからこそ見ることができた美景を堪能したら、キャンピングカーのひさしを広げて、朝食の準備にとりかかります。この日のメニューは、ホットサンドとコーヒー。車内に併設されたキッチンが大活躍です。朝の冷気で少し冷えた体に、温かい料理がしみます。

朝食を食べていると、「The Old Bus」のオーナー夫妻の愛犬「うしいろ」が登場。7時頃を過ぎると通勤のクルマやバスの走行が増えてきました。道路脇のため、交通量が増えると多少の慌ただしさはありましたが、キャンピングカーのひさしを広げたことでまるでカフェのテラス席のようなゾーニングが完成。ゆっくりと落ち着いた朝の時間を味わうことができました。

日常の延長にありながら、非日常も味わえるキャンピングカー旅の奥深さ。

朝食を終えたら片付けをして、いよいよ旅も終わりです。朝の静かな時間から一転、昨日現地に到着したときと同様にセミの声が響いていますが、よく見るとトンボが飛んでいました。季節はにじみ合い、混ざり合いながら移行していくことを改めて感じた旅。

 

今回のキャンピングカーの旅を通して感じたのは、旅そのものが日常の延長で楽しめるということ。例えばお気に入りの寝具で、好きな場所で眠れたり、いつもの朝食をいつもとは違う場所で味わえたりするのは、キャンピングカーならではといえます。

 

その一方、旅ならではの非日常感も満載です。もちろん車中泊が可能な場所でないと難しいですが、いつもなら、通り過ぎていた道沿いや原っぱが自分だけの宿になるのは、通常の旅では体験できない楽しさを教えてくれました。

 

キャンピングカーを購入するのは難しくても、借りることでこんなに遊ぶことができるのは大きな発見でもあります。旅に出たいと思った時、新しい選択肢としてキャンピングカーは大きな可能性を秘めている。そして、バンライフという新しい暮らし方も未来にはさらに定着しているかもしれない。そう感じることができた、一泊二日の旅でした。

【編集後記】

キャンピングカーは無敵でした。

車を停めた場所がアジトになり、秘密基地になり、その周りの風景や空気、匂いや音まで我が物になりました。

やはりテントと違い、ガッシリしているのが良い。まさに砦といえます。

自由極まりない、今までの範疇、常識をふっとばす爽快感がこの旅で感じた景色でした。

取材後キャンピングカーを持ちたいと、強く感じましたが、まずは気楽にレンタルから始めたい!

(未来定番研究所 出井)