2021.03.10

マニアに聞く、ジョイフル・ジャーニーへの道。

自転車編 編集者・青木陽子さんの、移動の自給自足

「ジョイフル・ジャーニー」とは、移動をどこかへ行くための手段として捉えるのではなく、移動という体験自体に喜びを感じるような新しい旅の価値観のこと(*1)。移動が制限されている今、「ジョイフル・ジャーニー」の視点を持つことで、これからの旅はもちろん、日常生活のちょっとした移動にも新鮮さを感じるのではないでしょうか。

 

そこで、これからの旅の定番になりうる「ジョイフル・ジャーニー」を解明すべく、自転車や車、電車といった移動を実際に楽しんでいる方々に、移動の魅力をお聞きしていきます。

 

第1回目にご登場いただくのは、フランス・ニース在住の編集者でジャーナリストの青木陽子さん。青木さんは、東京在住中に自転車と出会い、移住先のロンドンでその魅力に開眼。多い時では、ロンドンからパリまで約500kmも走行するという青木さんに、自転車移動の醍醐味について伺いました。

 

*1 ジョイフル・ジャーニー

ロイヤル・カレッジ・オブ・アート大学インテリジェント・モビリティ学科の教授デール・ハーロゥ氏が提唱した新しい旅の価値観。デール氏によれば、「人々は単に移動をどこかへ行く手段と考えるのではなく、移動そのものの価値を重視するようになっていく」という。(出典:『AXIS』207号)

中世からの集落が点在する田舎を自転車で走るために、フランス南西部のラングドック地方を訪れた時の様子。人口が少ないためクルマが少なく、気持ちよく走れるので自転車には最適だそう。

自転車の一番の魅力は、移動の自給自足ができる、ということだと思います。ガソリンなどの化石燃料を使わないし、二酸化炭素も出しません。たしかにお腹はへりますが、お弁当やマイボトルを持って行けばゴミも出さないので、とってもエコな乗り物です。高校生の頃から環境問題に関心があり、その後編集者として都内の出版社に勤務していた時も、もっとエコな移動手段に切り替えなくては、と常々思っていました。まだ東京に住んでいた1990年代、ほぼ毎日深夜まで働いていたので、しばしば家に帰る方法はタクシーしかありませんでした。そんな折に自転車を購入したのですが、深夜の車通りの少ない道をスイスイ走れるのがとても気持ちよくて、家に帰る頃には疲れも吹き飛んでいました。それからロンドンに移り住んで、今はニースに住んでいますが、自転車に乗り始めてから約20年以上、寝込むような風邪はほとんど引いたことがないんです。

日本ではここ数十年で災害などが多くありましたが、公共交通機関がストップした際でも、自転車さえあればどこにでも行ける、誰にでも会いに行ける、というのは大変心強いのではないでしょうか。私自身、自転車で数百キロと移動した時には、「自分の力でこんな遠くに来られた!」という達成感があり、それが自分の中での自信につながっています。1日における移動距離で一番長かったのは、マンチェスターからロンドンの約360km。朝6時に出て夜9時に着いたのですが、達成感は大きかったですがさすがに疲れました(笑)。

自転車で旅をすると、その街の空気や匂いを全身で感じることができます。それからそこで暮らす人々や地形、歴史にまで触れるのも容易で、旅の楽しみが何重にも増えます。コロナが落ち着いたら、シチリア島を1週間くらいかけて周りたいですね。地中海のおいしいごはんを食べて、大好きな自転車に乗れば、きっとそれだけで幸せです。

Profile

青木陽子さん

編集者/ジャーナリスト。自動車雑誌やファッション誌の編集者を経て、活動拠点をロンドンに移す。女性のためのウェブメディアの先駆けとなる〈Cafeglobe.com〉を起業、編集長に就任。現在はニース在住。所有する自転車台数は10台以上。

http://www.yokoaoki.com/

https://twitter.com/yokoaoki?s=20

編集後記

ここ一年、気軽に外出もできず、狭い家の中ばかりで過ごすことに窮屈さを感じていました。そんなとき耳に飛び込んできた「自転車は移動の自給自足」という青木さんのお話は、「自転車があれば、私も好きなときに好きな場所へ行ける!」という気づきを与えてくれました。

取材後、青木さんにおすすめいただいたブランドのクロスバイクを早速購入。運動はからっきし苦手な私ですが、少しずつ走行距離を伸ばし往復15キロほどを走破することができるように。次の目的地はどこにしようかな?と毎日ワクワクしています。

(未来定番研究所 菊田)

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